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落ち込む
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※今回は痛い表現があります。苦手な方はご注意ください。
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九月の中ごろだったと思う。
涼しくなって来たからとエアコンを切り、窓を開けて寝ていた。多分冷夏か何かで涼しい残暑だったと思う。
朝の五時ごろ、猫が喧嘩する声で目が覚めた。外には野良猫がいるから、その声だと思っていた。
窓のほうを見ると、龍と野良猫が低い唸り声をあげていた。どっちも尻尾や背中の毛を逆立て、「フーッ!!」と怒っている。龍の縄張りに入ったから、喧嘩になったのかも知れない。
網戸があるから大丈夫だろうけど、一度網戸を外して脱走しているので、野良猫を追い払いつつ窓を閉めようとしたのが間違いだった。
龍は野良猫に襲われたと思ったのか、目の前に突き出した私の左手にしがみつき、親指の柔らかい部分に思いっきり噛み付くと、後ろ足で腕を何度も蹴り上げたのだ。
その激しさから野良猫は逃げたけど、龍は怒り心頭で私に噛み付いたのがわかっていないのか、しばらくそのまま噛み付いて蹴り続けた。
「龍、大丈夫だから。もう行っちゃったよ」
自分が手を出したから怪我をしたというのもあり、怒ったりせずに優しい声で話しかけると、それで誰に噛み付いているのかがわかったのか、手から離してくれた。そこまではいい、龍の口が血だらけだったから、顔を拭いてあげたのだから。
それからが大変だった。
噛みつかれたところは腫れあがって血が出てるし、蹴りを入れたところは無数の傷。そこも蚯蚓腫れになって血が出てるし、龍は怒られると思ったのかすごく怯え、母のベッドの下から出てこない。
痛いしこれでは仕事にならないからと会社を休み、一応手を洗ってから簡単に消毒し、タオルを巻いたあとは朝一番で病院へ。
「派手にやられたねぇ」
「私が手を出した結果なので、自業自得です(笑)」
先生とそんな会話をしながら、先生は何かの注射を打ってくれて、別室で看護師さんに消毒と薬を塗られ、包帯でぐるぐる。
薬をもらって帰ってくると、窓から龍が外を見てた。私に気づくと、すごく申し訳なさそうな、気まずそうな顔をしていた。
「龍ちゃん、ただいま。大丈夫だよ、龍ちゃんが悪いんじゃないんだからね? 私が悪いんだからね?」
キャットタワーのところでじっとしていた龍に近づき、優しく撫でて声をかけた。すっごく気まずい雰囲気を出してるから、多分わかってるんだろうと思った。
だけど、今回のことは龍が悪いのではなく、手を出した私が悪い。いきなり手が目の前に来たら、襲われたって思うのは当たり前。
「怖かったんだよね。もういないからね。痛くないから大丈夫だよ」
本当はすっごく痛かったけど、それは自業自得だから仕方ないし、龍には関係ないことだ。
話しかけて頭と背中を撫でてあげれば、ようやくホッとしたのか、包帯が巻かれている手の甲をペロペロと舐めてくれた。
本当にいいこ! (親バカ)
その日は心配だったのか私から離れず、ずっと一緒にいてくれた。三日くらいそれが続いた。
そして四日目。何事もなかったかのように普通に過ごし始めた龍を見て、トラウマにならなくてよかったなあ、と思った。
その時に受けた腕の傷は、未だに消えていない。
大好きなフリース素材の膝掛けと半纏。どっちも私が使っていたものだった(笑)
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九月の中ごろだったと思う。
涼しくなって来たからとエアコンを切り、窓を開けて寝ていた。多分冷夏か何かで涼しい残暑だったと思う。
朝の五時ごろ、猫が喧嘩する声で目が覚めた。外には野良猫がいるから、その声だと思っていた。
窓のほうを見ると、龍と野良猫が低い唸り声をあげていた。どっちも尻尾や背中の毛を逆立て、「フーッ!!」と怒っている。龍の縄張りに入ったから、喧嘩になったのかも知れない。
網戸があるから大丈夫だろうけど、一度網戸を外して脱走しているので、野良猫を追い払いつつ窓を閉めようとしたのが間違いだった。
龍は野良猫に襲われたと思ったのか、目の前に突き出した私の左手にしがみつき、親指の柔らかい部分に思いっきり噛み付くと、後ろ足で腕を何度も蹴り上げたのだ。
その激しさから野良猫は逃げたけど、龍は怒り心頭で私に噛み付いたのがわかっていないのか、しばらくそのまま噛み付いて蹴り続けた。
「龍、大丈夫だから。もう行っちゃったよ」
自分が手を出したから怪我をしたというのもあり、怒ったりせずに優しい声で話しかけると、それで誰に噛み付いているのかがわかったのか、手から離してくれた。そこまではいい、龍の口が血だらけだったから、顔を拭いてあげたのだから。
それからが大変だった。
噛みつかれたところは腫れあがって血が出てるし、蹴りを入れたところは無数の傷。そこも蚯蚓腫れになって血が出てるし、龍は怒られると思ったのかすごく怯え、母のベッドの下から出てこない。
痛いしこれでは仕事にならないからと会社を休み、一応手を洗ってから簡単に消毒し、タオルを巻いたあとは朝一番で病院へ。
「派手にやられたねぇ」
「私が手を出した結果なので、自業自得です(笑)」
先生とそんな会話をしながら、先生は何かの注射を打ってくれて、別室で看護師さんに消毒と薬を塗られ、包帯でぐるぐる。
薬をもらって帰ってくると、窓から龍が外を見てた。私に気づくと、すごく申し訳なさそうな、気まずそうな顔をしていた。
「龍ちゃん、ただいま。大丈夫だよ、龍ちゃんが悪いんじゃないんだからね? 私が悪いんだからね?」
キャットタワーのところでじっとしていた龍に近づき、優しく撫でて声をかけた。すっごく気まずい雰囲気を出してるから、多分わかってるんだろうと思った。
だけど、今回のことは龍が悪いのではなく、手を出した私が悪い。いきなり手が目の前に来たら、襲われたって思うのは当たり前。
「怖かったんだよね。もういないからね。痛くないから大丈夫だよ」
本当はすっごく痛かったけど、それは自業自得だから仕方ないし、龍には関係ないことだ。
話しかけて頭と背中を撫でてあげれば、ようやくホッとしたのか、包帯が巻かれている手の甲をペロペロと舐めてくれた。
本当にいいこ! (親バカ)
その日は心配だったのか私から離れず、ずっと一緒にいてくれた。三日くらいそれが続いた。
そして四日目。何事もなかったかのように普通に過ごし始めた龍を見て、トラウマにならなくてよかったなあ、と思った。
その時に受けた腕の傷は、未だに消えていない。
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