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部長と間違いのキス
看病した結果
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吊っている腕の三角巾を外してからパジャマのボタンを外して脱がすと、夢にまで見たあの胸が目の前に現れる。触りたい衝動を隠してパジャマのズボンに手をかけて、それも脱がす。
下着も、と思ったのだが、さすがにそれをすると理性をぶっ飛ばして彼女を抱いてしまいそうだったため、理性を総動員して彼女の身体を拭いた。
背中に手を充てれば、予想以上に滑らかな肌が掌を擽る。好きな女の裸を前に何の拷問だ、と思いつつも身体を丁寧に拭いた。
上向きにしたあとも丁寧に拭いたのだが、どうしても胸は最後に拭きたかったから、他の部分を先に拭いて行く。
背中や足や太股に残っている青タンが痛々しくて、そっと目を瞑る。タオルを変えて残った胸を、彼女の反応を見ながらゆっくり丁寧に拭いていく。
「……っ、あ……っ」
わざとタオルで胸の先端をかすめると、あの時と同じように喘いだ。
「乳首、弱いんだな」
「え……? なに? ……っ、あんっ」
「というより、胸全体が弱いのか」
「部長、なんて言ったんですか……? んんっ」
「……何でもない」
俺の小さな呟きは聞こえていなかったのか、彼女は喘ぎながらも聞き返す。
(……胸を愛撫するくらいならいいよな……?)
まだ恋人同士じゃない。だが、夢にまで見た胸が目の前に晒されているせいで、理性が半分飛びつつある。内心溜息をつきながらも、乳首をゆっくり、執拗に擦る。
擦る度に、「あ……っ、やん……っ、あん……」と小さく喘ぐ彼女。
その声に煽られるように、最後はタオルを胸全体にかけ、その上から両手で掴んで揉み、乳首も摘まんで擦りあげた。彼女を見れば、顔を真っ赤にしながら荒い息をついていた。
やり過ぎたかと反省し、ひどいですと言った彼女に悪戯してしまったと言ったら、怒られた。そんな話をしながら、荷物から新しいパジャマを出して着せた。
夕飯にパンとプリンが食べたいと言った彼女のリクエストに答えるべく、マンションの二軒隣にあるコンビニに行くことにした。だが、そう言えばサンドイッチはどの具がいいのか聞いていないと思い出し、扉を少し開けて固まった。
「あん……っ、やん……もう……」
この位置からでもわかるほどに乳首を硬く尖らせてパジャマを押し上げ、彼女が動く度に彼女が喘いでいる。
「あん……うー……部長のバカ」
彼女の呟きで、俺が仕掛けた愛撫が彼女の身体に影響を与えたとわかる。その姿にゴクリと喉を鳴らすも、いつまでも彼女の恥態を見ているわけには行かない。
扉をそっと閉めると息を吐き、コンビニへと向かった。
***
夕食後、彼女に薬を渡して飲ませたあと、湿布を変えるべく足首に巻かれている包帯をほどくと、彼女の赤黒くなっている足首の状態を見て顔をしかめる。
「こんなにひどかったんだな……本当にごめん」
「気にしないでください。足首は元々捻挫癖がついていたし、これでも腫れは引いたほうなんですよ? まあ、まだ内出血の跡はありますけど、明日くらいにはゆっくりとなら歩けると思いますから」
明るくそう言う彼女だが、気分は晴れない。気になるならカルボナーラを作ってくれと言う彼女に材料やら何やらを聞きながら、彼女の足首を拭いたあとで湿布を貼り直し、包帯を巻いた。
「……わかった。明日、会社の帰りに材料を買ってくる。あと、俺がいない間の食事だが……朝はともかく、昼はどうする?」
面倒でなければお粥を作ってくれと言った彼女に頷き、日曜日に出かける約束をして彼女を部屋へと連れて行った。
次の日の朝起きると、彼女はまだ眠っていたので額に手をあてて熱を確かめる。まだ少し高いようだったから、今日も風呂には入れずに拭いてやることにし、お粥を作ってからメモを残すと会社へと向かった。
途中で真沙子から『話があるの。お昼はいつもの定食屋で。私の名前で個室の予約をしておくから』とメールが入った。確かに真沙子とは飯を食いに行くが、個室でというのは今までなかった。
話とはなんだと首を捻りつつ会社の駐車場目前だったので、駐車場に着いてから『わかった』とだけメールを打った。
昼になって定食屋に行き、真沙子の名前を告げると奥にある個室に連れて行かれた。個室の扉を開けると、真沙子がしょんぼりしながら手を振った。
「黄昏てるなんて珍しいじゃないか」
「うん……。仕事が始まる前に社長に呼ばれて行ったら、副社長と羽佐間部長、田代さんがいて。隠しておくわけには行かないからって、羽佐間部長が田嶋さんが怪我したことを言ったみたいなの。『アイツ、辞めるつもりでいたぞ。うちの戦力を辞めさせるつもりであんなことしたのか』って、田代さんと一緒にこってり絞られちゃった。社長と副社長二人からもすっごい怒られた」
「あー……。なら、帰ったら、俺も怒られるかな……」
「それは多分大丈夫だと思う。昨日、羽佐間部長たちと一緒にお見舞いに行ったんだってね。『その時の雅樹の様子を話して社長には咎めないでくれって言っておいたから』って言ってたから、多分大丈夫。で、雅樹、一体何したの?」
「まあ、いろいろ、な」
「ぶー。田代さんも社長も教えてくれないから、雅樹に聞いたのに……」
誰が真沙子になんか言うか! と思って口をつぐんでいると、真沙子は溜息混じりに「わかった、聞かない」と言ってちょうど運ばれて来た定食を食べ始めた。
真沙子は大丈夫と言ったが、俺だけ咎められないのはおかしいよなと思っていたら、やはり副社長から呼ばれた。内容は副社長と一緒にやっている商談のことだったし、そのあと別の商談に行く予定だったから、部下に「副社長と煮詰めたあとでそのまま商談に向かう」と告げて営業部を出る。
資料を持っては行くが、俺は絶対に違うだろうなと思っていたら案の定打ち合わせのあとで彼女のことを聞かれたので、彼女の状態を正直に話した。
「意外とガキっぽいことをするのには驚いたけど、土下座したって聞いた時はもっと驚いたよ」
「いえ……」
「ただ、中里さんや田代さんにも言ったけど、今後はそんな企みに乗らないようにね? 羽佐間部長から恨まれるのは嫌だから」
「……はい。申し訳ありませんでした」
「うん、以後気を付けるように。じゃあ、これ。僕と社長から、田嶋さんにお見舞い。渡してくれる? ちなみに、有志によるカンパだから」
「でしたら、田嶋先生に……」
「僕もそのつもりでさっき病院に行ったら、『芦田部長に渡してくれ』って言われてしまってね。だから、悪いけどお願いできるかな?」
そう言って渡されたのは、紙袋に入ったお菓子だった。横に封筒が入っているのか見えるから、多分見舞金なんだろう。
「……わかりました」
もう一度「申し訳ありませんでした」と言って副社長室を出ると、そのまま駐車場に向かう。商談が入っていてよかったと車内で溜息をつき、商談に向かった。
土曜日の夜。
やっと熱が下がった彼女をお風呂に入れた。
最初は嫌がっていたが、ジャグジーがあると言うとしぶしぶながらも折れ、上半身を脱がせてからギブスが濡れないように彼女の手にビニールを嵌めると下も脱がせ、タオルを持たせてから風呂場に押し込む。自分も全裸になって腰にタオルを巻いて入ると、椅子に座るよう彼女に言った。
胸に吸い付きそうになるのを我慢し、全身を丁寧に洗う。さすがに秘裂に手を這わせるわけには行かなかったから、それは彼女に洗ってもらっているうちに自分の身体を洗って一緒に泡を流した。
先に湯船に浸かってもらってからジャグジーのスイッチを入れると、彼女は「はあ……」と溜息をついた。久しぶりのお風呂で気持ちがいいんだろう。
淵に頭を乗せてもらって頭を洗う。目線を上げれば、ジャグジーのお湯の動きに合わせて胸がゆらゆらと動いているのが見えるが、触りたいのを我慢し、彼女の頭を洗いながらそれを眺めた。
洗い終わったあと、彼女を後ろから抱き締めて湯に浸かる。
「あの……部長……?」
「ほら、ビニールを被せてるとは言えギブスが濡れるぞ? 身体は押さえててやるから、俺に寄りかかって肘まででいいから温まれ」
「あ、はい」
浮き上がりそうになる彼女の足を自分の足で上から押さえつける。が、その際に肉竿が彼女の秘裂に収まったのは偶然だった。それに焦りつつも、バレてなさそうで安堵する。
(……というか、普通ここまでされたら、自分に気があるって気付くもんじゃないのか?)
俺に凭れかかり、胸を突き出すような形でジャグジーに揺れる胸を眺めながら、今日までのことを思い出して悩む。
そう言えば昨日のことだが、前日の夜、痛みに魘されていた彼女のことや薬が無くなりそうだからというのもあって先生のところに相談に行ったところ、新しい薬を渡されながら「亜沙子は鈍いから、看病というアプローチだけじゃ気付かないかも」と言われたことや、病院に行く直前に会った羽佐間と田代にも同じようなことを言われたのを思い出した。
(鈍いのか……)
確かにそうかも知れない、と思う。真沙子と喧嘩して巻き込んでしまった時も、他の男にアプローチされていても、意味がわかっていないのかスルーをしているところを何回も見てる。
(まあいい。今更他の男に彼女を渡すつもりないしな)
そんなことを考えながら、揺れる胸に我慢ができなくなり、その胸を掴んでゆっくりと揉む。直に触った彼女の胸は、やはりタオル越しよりも柔らかくて気持ちがいい。
この数日のタオル越しの愛撫を覚えたのか、彼女の胸は少し揉んだだけで乳首を勃たせ始め、身体が微かに震えだす。
「あん……部長……っ、やめ……、あっ」
「さっき乳首を洗うのを忘れた……。今洗ってやるよ」
「ひゃあっ、あっ、やんっ、あんっ」
胸を下から掬い上げ、乳首を引っ張って指で捏ね回しながら、胸を支えている指で胸を揉む。ますます胸を突き上げる彼女の胸を楽しみつつ、お湯とは違うヌメリを感じて時折腰をこっそり動かしながら、喘ぐ彼女の胸を揉み続けた。
***
週明けの月曜日。俺のものだと謂わんばかりに彼女を腕に乗せてエントランスに行くと、彼女にアプローチをしていた男共が悔しそうに顔を歪める。それに気分を良くしつつ、彼女を睨み付けていた女共を逆に睨み付けると、女共は同じように顔を歪めてその場をあとにする。
エントランスにいた田代が彼女の荷物を預かると言うのでそれを渡し、下ろせと言う彼女の言葉を却下しながら、後ろから声をかけて来た羽佐間に自分の荷物を預けた。
羽佐間と田代の関係がバレないのは、多分こういった時間差出勤のせいもあると思う。帰りだって、エントランスまでは一緒に行ってそこで別れ、別の場所で待ち合わせて一緒に帰っているという徹底ぶりだった。
歩き始めてすぐ、いきなり首をすくめた彼女を不思議に思って視線の先を追うと真沙子がいた。にっこり笑って手を振った真沙子に小さく頷くと、そのまま総務課に向かう。
途中で部下に会い、「持っていかれた」とか「狙ってたのに」とか言われたが、ニヤリと笑うだけに止めた。彼女を見れば不思議そうに首を傾げ、彼女に対しては「幸せになれよ」とか「部長は野獣だから」とか声をかけていたが、やはり不思議そうに首を捻っていたから内心で苦笑した。
総務課に着いたら「仕事が終わったら先に病院に行って待ってろ。一緒に帰ろう」と言うと、今度はそれを聞いていた総務課の連中にニヤニヤされ、逆に俺が首を捻る番だった。
***
「あー、疲れた……」
運転しながら愚痴を溢す。以前から決まっていたこととは言え、さすがに五日間の出張はキツい。
尤も、かなり順調に商談やらなにやらが進んだから、残り一日を使うことなく今日帰ることができたのだが。
早く帰って彼女を充電したい。
彼女と暮らし始めて三週間ちょっと。相変わらず毎日一緒に会社に来て帰るし、総務課まで抱いて連れて行っていた。骨折の治癒も順調なのはすごく嬉しいが、今更家に帰す気がない俺は、家に帰ると言った彼女の言葉を受け入れず、そのまま家に留めていた。
お風呂も最初の一週間だけ一緒に入り、あとは二、三日に一回の割合で彼女と一緒に入っているものの、相変わらず彼女は気付かない。そのことにイラつきながらも一緒に入るたびに胸に愛撫を施した結果、今や身体を洗うだけで喘ぐようになった。
それが嬉しくて、さらに愛撫を施している。
それと同時に抱き締めたり、買い物に行った時は必ず手を繋ぐ――もちろん恋人繋ぎ――などのスキンシップを増やすと同時に、彼女を観察してみた。
それで気付いた。総務課の連中がなぜニヤニヤしていたのかを。
それに気付いた時、「なんてわかりやすいんだ」と頭を抱えたものの、だからこそ彼女にちょっかいをかける女共が許せなかった。そもそも仕事中にちょっかいをかけに行くとかあり得ないし、そんな女共に俺は見向きもしない。
そういう奴らが一番嫌いだったから、書類の提出の際に見かけた時は田代と一緒に追い払った。
「あら、この間提出した書類が間違ってたから、貴女の上司に直接渡して来たわよ。あと、貴女が仕事をサボりに総務課まで来てるって連絡しておいたから、もうじき迎えが来るんじゃないかしら?」
と田代はそんな女共を追い払い、嘘だと思っていたら本当に迎えが来たのにはびっくりしたが。
そんな日々を過ごし、真沙子の愚痴に付き合ってまた彼女を巻き込んでしまったりもしたが、そのたびに悲しげに揺れる彼女の目を見てホッとしていた。
駐車場に着いたので彼女に電話をかけて外食に誘えば、ご飯を食べているという。見栄えの悪いナポリタンでいいならまだあると言うので食べると返事をする。
営業部の連中のための土産物だけを車に残し、それ以外の荷物を持って家に帰る。鍵を開けると仄かに香るケチャップと炒める音がし、彼女が声をかけて来た。
「お帰りなさい。今お風呂のスイッチいれたんで、先にお風呂に入って来てください」
なぜ、食事とお風呂があるのに「私」はないんだと思いつつも腹が減ってるから先に食べると言うと、あれこれ会話しながら荷物を片付け、洗濯物を洗濯機に入れてネクタイを緩めると、手洗いうがいをしてダイニングに戻る。テーブルには、湯気の立っているナポリタンと冷めたナポリタンがあった。
「お、旨そうだ」
「片手だから、材料とか綺麗に切れてないですし、炒め具合も疎らですよ?」
「そんなことはないぞ? いただきます。……うん、旨い!」
「それは良かったです」
ニコニコ笑う彼女を見ながら、ナポリタンを食べる。いつも思うが、彼女はどんなものでも美味しそうに食べる。
洗い物は俺がやるからと言って食器を洗い始めながらこっそり溜息をつく。そろそろ鈍い彼女に俺の気持ちを自覚させたい。だからけしかけることにした。
下着も、と思ったのだが、さすがにそれをすると理性をぶっ飛ばして彼女を抱いてしまいそうだったため、理性を総動員して彼女の身体を拭いた。
背中に手を充てれば、予想以上に滑らかな肌が掌を擽る。好きな女の裸を前に何の拷問だ、と思いつつも身体を丁寧に拭いた。
上向きにしたあとも丁寧に拭いたのだが、どうしても胸は最後に拭きたかったから、他の部分を先に拭いて行く。
背中や足や太股に残っている青タンが痛々しくて、そっと目を瞑る。タオルを変えて残った胸を、彼女の反応を見ながらゆっくり丁寧に拭いていく。
「……っ、あ……っ」
わざとタオルで胸の先端をかすめると、あの時と同じように喘いだ。
「乳首、弱いんだな」
「え……? なに? ……っ、あんっ」
「というより、胸全体が弱いのか」
「部長、なんて言ったんですか……? んんっ」
「……何でもない」
俺の小さな呟きは聞こえていなかったのか、彼女は喘ぎながらも聞き返す。
(……胸を愛撫するくらいならいいよな……?)
まだ恋人同士じゃない。だが、夢にまで見た胸が目の前に晒されているせいで、理性が半分飛びつつある。内心溜息をつきながらも、乳首をゆっくり、執拗に擦る。
擦る度に、「あ……っ、やん……っ、あん……」と小さく喘ぐ彼女。
その声に煽られるように、最後はタオルを胸全体にかけ、その上から両手で掴んで揉み、乳首も摘まんで擦りあげた。彼女を見れば、顔を真っ赤にしながら荒い息をついていた。
やり過ぎたかと反省し、ひどいですと言った彼女に悪戯してしまったと言ったら、怒られた。そんな話をしながら、荷物から新しいパジャマを出して着せた。
夕飯にパンとプリンが食べたいと言った彼女のリクエストに答えるべく、マンションの二軒隣にあるコンビニに行くことにした。だが、そう言えばサンドイッチはどの具がいいのか聞いていないと思い出し、扉を少し開けて固まった。
「あん……っ、やん……もう……」
この位置からでもわかるほどに乳首を硬く尖らせてパジャマを押し上げ、彼女が動く度に彼女が喘いでいる。
「あん……うー……部長のバカ」
彼女の呟きで、俺が仕掛けた愛撫が彼女の身体に影響を与えたとわかる。その姿にゴクリと喉を鳴らすも、いつまでも彼女の恥態を見ているわけには行かない。
扉をそっと閉めると息を吐き、コンビニへと向かった。
***
夕食後、彼女に薬を渡して飲ませたあと、湿布を変えるべく足首に巻かれている包帯をほどくと、彼女の赤黒くなっている足首の状態を見て顔をしかめる。
「こんなにひどかったんだな……本当にごめん」
「気にしないでください。足首は元々捻挫癖がついていたし、これでも腫れは引いたほうなんですよ? まあ、まだ内出血の跡はありますけど、明日くらいにはゆっくりとなら歩けると思いますから」
明るくそう言う彼女だが、気分は晴れない。気になるならカルボナーラを作ってくれと言う彼女に材料やら何やらを聞きながら、彼女の足首を拭いたあとで湿布を貼り直し、包帯を巻いた。
「……わかった。明日、会社の帰りに材料を買ってくる。あと、俺がいない間の食事だが……朝はともかく、昼はどうする?」
面倒でなければお粥を作ってくれと言った彼女に頷き、日曜日に出かける約束をして彼女を部屋へと連れて行った。
次の日の朝起きると、彼女はまだ眠っていたので額に手をあてて熱を確かめる。まだ少し高いようだったから、今日も風呂には入れずに拭いてやることにし、お粥を作ってからメモを残すと会社へと向かった。
途中で真沙子から『話があるの。お昼はいつもの定食屋で。私の名前で個室の予約をしておくから』とメールが入った。確かに真沙子とは飯を食いに行くが、個室でというのは今までなかった。
話とはなんだと首を捻りつつ会社の駐車場目前だったので、駐車場に着いてから『わかった』とだけメールを打った。
昼になって定食屋に行き、真沙子の名前を告げると奥にある個室に連れて行かれた。個室の扉を開けると、真沙子がしょんぼりしながら手を振った。
「黄昏てるなんて珍しいじゃないか」
「うん……。仕事が始まる前に社長に呼ばれて行ったら、副社長と羽佐間部長、田代さんがいて。隠しておくわけには行かないからって、羽佐間部長が田嶋さんが怪我したことを言ったみたいなの。『アイツ、辞めるつもりでいたぞ。うちの戦力を辞めさせるつもりであんなことしたのか』って、田代さんと一緒にこってり絞られちゃった。社長と副社長二人からもすっごい怒られた」
「あー……。なら、帰ったら、俺も怒られるかな……」
「それは多分大丈夫だと思う。昨日、羽佐間部長たちと一緒にお見舞いに行ったんだってね。『その時の雅樹の様子を話して社長には咎めないでくれって言っておいたから』って言ってたから、多分大丈夫。で、雅樹、一体何したの?」
「まあ、いろいろ、な」
「ぶー。田代さんも社長も教えてくれないから、雅樹に聞いたのに……」
誰が真沙子になんか言うか! と思って口をつぐんでいると、真沙子は溜息混じりに「わかった、聞かない」と言ってちょうど運ばれて来た定食を食べ始めた。
真沙子は大丈夫と言ったが、俺だけ咎められないのはおかしいよなと思っていたら、やはり副社長から呼ばれた。内容は副社長と一緒にやっている商談のことだったし、そのあと別の商談に行く予定だったから、部下に「副社長と煮詰めたあとでそのまま商談に向かう」と告げて営業部を出る。
資料を持っては行くが、俺は絶対に違うだろうなと思っていたら案の定打ち合わせのあとで彼女のことを聞かれたので、彼女の状態を正直に話した。
「意外とガキっぽいことをするのには驚いたけど、土下座したって聞いた時はもっと驚いたよ」
「いえ……」
「ただ、中里さんや田代さんにも言ったけど、今後はそんな企みに乗らないようにね? 羽佐間部長から恨まれるのは嫌だから」
「……はい。申し訳ありませんでした」
「うん、以後気を付けるように。じゃあ、これ。僕と社長から、田嶋さんにお見舞い。渡してくれる? ちなみに、有志によるカンパだから」
「でしたら、田嶋先生に……」
「僕もそのつもりでさっき病院に行ったら、『芦田部長に渡してくれ』って言われてしまってね。だから、悪いけどお願いできるかな?」
そう言って渡されたのは、紙袋に入ったお菓子だった。横に封筒が入っているのか見えるから、多分見舞金なんだろう。
「……わかりました」
もう一度「申し訳ありませんでした」と言って副社長室を出ると、そのまま駐車場に向かう。商談が入っていてよかったと車内で溜息をつき、商談に向かった。
土曜日の夜。
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先に湯船に浸かってもらってからジャグジーのスイッチを入れると、彼女は「はあ……」と溜息をついた。久しぶりのお風呂で気持ちがいいんだろう。
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洗い終わったあと、彼女を後ろから抱き締めて湯に浸かる。
「あの……部長……?」
「ほら、ビニールを被せてるとは言えギブスが濡れるぞ? 身体は押さえててやるから、俺に寄りかかって肘まででいいから温まれ」
「あ、はい」
浮き上がりそうになる彼女の足を自分の足で上から押さえつける。が、その際に肉竿が彼女の秘裂に収まったのは偶然だった。それに焦りつつも、バレてなさそうで安堵する。
(……というか、普通ここまでされたら、自分に気があるって気付くもんじゃないのか?)
俺に凭れかかり、胸を突き出すような形でジャグジーに揺れる胸を眺めながら、今日までのことを思い出して悩む。
そう言えば昨日のことだが、前日の夜、痛みに魘されていた彼女のことや薬が無くなりそうだからというのもあって先生のところに相談に行ったところ、新しい薬を渡されながら「亜沙子は鈍いから、看病というアプローチだけじゃ気付かないかも」と言われたことや、病院に行く直前に会った羽佐間と田代にも同じようなことを言われたのを思い出した。
(鈍いのか……)
確かにそうかも知れない、と思う。真沙子と喧嘩して巻き込んでしまった時も、他の男にアプローチされていても、意味がわかっていないのかスルーをしているところを何回も見てる。
(まあいい。今更他の男に彼女を渡すつもりないしな)
そんなことを考えながら、揺れる胸に我慢ができなくなり、その胸を掴んでゆっくりと揉む。直に触った彼女の胸は、やはりタオル越しよりも柔らかくて気持ちがいい。
この数日のタオル越しの愛撫を覚えたのか、彼女の胸は少し揉んだだけで乳首を勃たせ始め、身体が微かに震えだす。
「あん……部長……っ、やめ……、あっ」
「さっき乳首を洗うのを忘れた……。今洗ってやるよ」
「ひゃあっ、あっ、やんっ、あんっ」
胸を下から掬い上げ、乳首を引っ張って指で捏ね回しながら、胸を支えている指で胸を揉む。ますます胸を突き上げる彼女の胸を楽しみつつ、お湯とは違うヌメリを感じて時折腰をこっそり動かしながら、喘ぐ彼女の胸を揉み続けた。
***
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エントランスにいた田代が彼女の荷物を預かると言うのでそれを渡し、下ろせと言う彼女の言葉を却下しながら、後ろから声をかけて来た羽佐間に自分の荷物を預けた。
羽佐間と田代の関係がバレないのは、多分こういった時間差出勤のせいもあると思う。帰りだって、エントランスまでは一緒に行ってそこで別れ、別の場所で待ち合わせて一緒に帰っているという徹底ぶりだった。
歩き始めてすぐ、いきなり首をすくめた彼女を不思議に思って視線の先を追うと真沙子がいた。にっこり笑って手を振った真沙子に小さく頷くと、そのまま総務課に向かう。
途中で部下に会い、「持っていかれた」とか「狙ってたのに」とか言われたが、ニヤリと笑うだけに止めた。彼女を見れば不思議そうに首を傾げ、彼女に対しては「幸せになれよ」とか「部長は野獣だから」とか声をかけていたが、やはり不思議そうに首を捻っていたから内心で苦笑した。
総務課に着いたら「仕事が終わったら先に病院に行って待ってろ。一緒に帰ろう」と言うと、今度はそれを聞いていた総務課の連中にニヤニヤされ、逆に俺が首を捻る番だった。
***
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運転しながら愚痴を溢す。以前から決まっていたこととは言え、さすがに五日間の出張はキツい。
尤も、かなり順調に商談やらなにやらが進んだから、残り一日を使うことなく今日帰ることができたのだが。
早く帰って彼女を充電したい。
彼女と暮らし始めて三週間ちょっと。相変わらず毎日一緒に会社に来て帰るし、総務課まで抱いて連れて行っていた。骨折の治癒も順調なのはすごく嬉しいが、今更家に帰す気がない俺は、家に帰ると言った彼女の言葉を受け入れず、そのまま家に留めていた。
お風呂も最初の一週間だけ一緒に入り、あとは二、三日に一回の割合で彼女と一緒に入っているものの、相変わらず彼女は気付かない。そのことにイラつきながらも一緒に入るたびに胸に愛撫を施した結果、今や身体を洗うだけで喘ぐようになった。
それが嬉しくて、さらに愛撫を施している。
それと同時に抱き締めたり、買い物に行った時は必ず手を繋ぐ――もちろん恋人繋ぎ――などのスキンシップを増やすと同時に、彼女を観察してみた。
それで気付いた。総務課の連中がなぜニヤニヤしていたのかを。
それに気付いた時、「なんてわかりやすいんだ」と頭を抱えたものの、だからこそ彼女にちょっかいをかける女共が許せなかった。そもそも仕事中にちょっかいをかけに行くとかあり得ないし、そんな女共に俺は見向きもしない。
そういう奴らが一番嫌いだったから、書類の提出の際に見かけた時は田代と一緒に追い払った。
「あら、この間提出した書類が間違ってたから、貴女の上司に直接渡して来たわよ。あと、貴女が仕事をサボりに総務課まで来てるって連絡しておいたから、もうじき迎えが来るんじゃないかしら?」
と田代はそんな女共を追い払い、嘘だと思っていたら本当に迎えが来たのにはびっくりしたが。
そんな日々を過ごし、真沙子の愚痴に付き合ってまた彼女を巻き込んでしまったりもしたが、そのたびに悲しげに揺れる彼女の目を見てホッとしていた。
駐車場に着いたので彼女に電話をかけて外食に誘えば、ご飯を食べているという。見栄えの悪いナポリタンでいいならまだあると言うので食べると返事をする。
営業部の連中のための土産物だけを車に残し、それ以外の荷物を持って家に帰る。鍵を開けると仄かに香るケチャップと炒める音がし、彼女が声をかけて来た。
「お帰りなさい。今お風呂のスイッチいれたんで、先にお風呂に入って来てください」
なぜ、食事とお風呂があるのに「私」はないんだと思いつつも腹が減ってるから先に食べると言うと、あれこれ会話しながら荷物を片付け、洗濯物を洗濯機に入れてネクタイを緩めると、手洗いうがいをしてダイニングに戻る。テーブルには、湯気の立っているナポリタンと冷めたナポリタンがあった。
「お、旨そうだ」
「片手だから、材料とか綺麗に切れてないですし、炒め具合も疎らですよ?」
「そんなことはないぞ? いただきます。……うん、旨い!」
「それは良かったです」
ニコニコ笑う彼女を見ながら、ナポリタンを食べる。いつも思うが、彼女はどんなものでも美味しそうに食べる。
洗い物は俺がやるからと言って食器を洗い始めながらこっそり溜息をつく。そろそろ鈍い彼女に俺の気持ちを自覚させたい。だからけしかけることにした。
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