1 / 14
プロローグ
しおりを挟む
とある田舎町にある、鬱蒼と茂った森の中。
そこには神社があり、荘厳で清廉な空気が流れている。
そんな空気が気に入っているのか、街の人々が数多く訪れ、お参りをしていく。
もちろん、観光客も訪れる場所だった。
猫が境内や建物の側でゴロンと横になって毛繕いをしたり、スズメやハト、野鳥が数多く飛んでくる。とても長閑な風景と空気が漂っている町。
この町の人間に、集まってくる動物たちを苛めるような人はいない。
観光客も微笑ましく、その様子を眺めている。
とてもおおらかで、逆に動物たちに餌を与えるような人々ばかり。
それはなぜか。境内や町の中で動物たちを苛めると、神罰が下るからだ。
町の人々もこの神社を訪れる観光客も、それを知っているのである。
それほどに、この神社は霊験あらたかな場所として有名だった――周辺地域にまでその神力が及ぶほどに。
神社を出て山道を下っていくと、ぽつぽつと土産物屋が現れてくる。
そこを通り過ぎて途中にある細い脇道に入ると、今度は住宅がぽつぽつと現れてきた。
その一番奥に不思議な店がある。看板などはなく、知る人ぞ知るといった佇まいの一軒家だ。
見た目の家屋は木造の平屋で、L字型になっている。
奥にも建物があることから、どうやら離れがあるようだ。
庭もかなり広く、樹木の他にも野菜が栽培され、果物も植えられていた。
本来ならばそんな大きな家は目立つことこの上ないのだが、なぜか目立たない。そして住民たちは誰も気にしない。
気にするのはこの店を知っている者や、訳アリな者だけだ。
そんな場所には、いろんな境遇の人々がくる。主に、自分の人生に不満や不安、絶望を抱えている者が。
ここは神様夫婦が営むなんでも屋。彼らに認められる、あるいは認識されると入れる場所である。
ただし、それは一回だけ。気に入られれば何度でも入店できることもあるだろうが、そのほとんどが一回だけである。
もちろん、人ならざる者たちもくる場所で、彼らが作る料理に舌鼓を打つためでもあった。
今日も今日とて、ひっそりと佇むその店にたどり着いた者が、その中へ入ろうとしていた。
そこには神社があり、荘厳で清廉な空気が流れている。
そんな空気が気に入っているのか、街の人々が数多く訪れ、お参りをしていく。
もちろん、観光客も訪れる場所だった。
猫が境内や建物の側でゴロンと横になって毛繕いをしたり、スズメやハト、野鳥が数多く飛んでくる。とても長閑な風景と空気が漂っている町。
この町の人間に、集まってくる動物たちを苛めるような人はいない。
観光客も微笑ましく、その様子を眺めている。
とてもおおらかで、逆に動物たちに餌を与えるような人々ばかり。
それはなぜか。境内や町の中で動物たちを苛めると、神罰が下るからだ。
町の人々もこの神社を訪れる観光客も、それを知っているのである。
それほどに、この神社は霊験あらたかな場所として有名だった――周辺地域にまでその神力が及ぶほどに。
神社を出て山道を下っていくと、ぽつぽつと土産物屋が現れてくる。
そこを通り過ぎて途中にある細い脇道に入ると、今度は住宅がぽつぽつと現れてきた。
その一番奥に不思議な店がある。看板などはなく、知る人ぞ知るといった佇まいの一軒家だ。
見た目の家屋は木造の平屋で、L字型になっている。
奥にも建物があることから、どうやら離れがあるようだ。
庭もかなり広く、樹木の他にも野菜が栽培され、果物も植えられていた。
本来ならばそんな大きな家は目立つことこの上ないのだが、なぜか目立たない。そして住民たちは誰も気にしない。
気にするのはこの店を知っている者や、訳アリな者だけだ。
そんな場所には、いろんな境遇の人々がくる。主に、自分の人生に不満や不安、絶望を抱えている者が。
ここは神様夫婦が営むなんでも屋。彼らに認められる、あるいは認識されると入れる場所である。
ただし、それは一回だけ。気に入られれば何度でも入店できることもあるだろうが、そのほとんどが一回だけである。
もちろん、人ならざる者たちもくる場所で、彼らが作る料理に舌鼓を打つためでもあった。
今日も今日とて、ひっそりと佇むその店にたどり着いた者が、その中へ入ろうとしていた。
10
お気に入りに追加
360
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない
めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」
村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。
戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。
穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。
夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
猫もふあやかしハンガー~爺が空に行かない時は、ハンガーで猫と戯れる~
饕餮
キャラ文芸
タイトル変えました。旧題「猫もふあやかしハンガー~じいちゃんはスクランブルに行けないから、老後は猫と遊ぶ~」
茨城県にある、航空自衛隊百里基地。
そこにはF-4EJ改――通称ファントムと呼ばれる戦闘機が駐機している。
一部では、ファントムおじいちゃんとも呼ばれる戦闘機である。
ある日、ハンガー内から聞こえてきた複数の声は、老齢の男性のもの。
他のパイロットたちからも『俺も聞こえた!』という証言が続出。
「俺たちの基地、大丈夫!? お祓いする!?」
そう願うも、予算の関係で諦めた。
そして聞こえる、老人の声。
どこからだ、まさか幽霊!?と驚いていると、その声を発していたのは、ファントムからだった。
まるで付喪神のように、一方的に喋るのだ。
その声が聞こえるのは、百里基地に所属するパイロットとごく一部の人間。
しかも、飛んでいない時はのんびりまったりと、猫と戯れようとする。
すわ、一大事!
戦闘機に猫はあかん!
そんなファントムおじいちゃんとパイロットたちの、現代ファンタジー。
★一話完結型の話です。
★超不定期更新です。ネタが出来次第の更新となります。
★カクヨムにも掲載しています。
★画像はフリー素材を利用しています。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
迷子のあやかし案内人 〜京都先斗町の猫神様〜
紫音@キャラ文芸大賞参加中!
キャラ文芸
【キャラ文芸大賞に参加中です。投票よろしくお願いします!】
やさしい神様とおいしいごはん。ほっこりご当地ファンタジー。
*あらすじ*
人には見えない『あやかし』の姿が見える女子高生・桜はある日、道端で泣いているあやかしの子どもを見つける。
「”ねこがみさま”のところへ行きたいんだ……」
どうやら迷子らしい。桜は道案内を引き受けたものの、”猫神様”の居場所はわからない。
迷いに迷った末に彼女たちが辿り着いたのは、京都先斗町の奥にある不思議なお店(?)だった。
そこにいたのは、美しい青年の姿をした猫又の神様。
彼は現世(うつしよ)に迷い込んだあやかしを幽世(かくりよ)へ送り帰す案内人である。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる