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プロローグ

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 とある田舎町にある、鬱蒼と茂った森の中。
 そこには神社があり、荘厳で清廉な空気が流れている。
 そんな空気が気に入っているのか、街の人々が数多く訪れ、お参りをしていく。
 もちろん、観光客も訪れる場所だった。

 猫が境内や建物の側でゴロンと横になって毛繕いをしたり、スズメやハト、野鳥が数多く飛んでくる。とても長閑な風景と空気が漂っている町。
 この町の人間に、集まってくる動物たちを苛めるような人はいない。
 観光客も微笑ましく、その様子を眺めている。
 とてもおおらかで、逆に動物たちに餌を与えるような人々ばかり。
 それはなぜか。境内や町の中で動物たちを苛めると、神罰が下るからだ。
 町の人々もこの神社を訪れる観光客も、それを知っているのである。
 それほどに、この神社は霊験あらたかな場所として有名だった――周辺地域にまでその神力が及ぶほどに。

 神社を出て山道を下っていくと、ぽつぽつと土産物屋が現れてくる。
 そこを通り過ぎて途中にある細い脇道に入ると、今度は住宅がぽつぽつと現れてきた。
 その一番奥に不思議な店がある。看板などはなく、知る人ぞ知るといった佇まいの一軒家だ。
 見た目の家屋かおくは木造の平屋ひらやで、L字型になっている。
 奥にも建物があることから、どうやら離れがあるようだ。
 庭もかなり広く、樹木の他にも野菜が栽培され、果物も植えられていた。
 本来ならばそんな大きな家は目立つことこの上ないのだが、なぜか目立たない。そして住民たちは誰も気にしない。
 気にするのはこの店を知っている者や、訳アリな者だけだ。
 そんな場所には、いろんな境遇の人々がくる。主に、自分の人生に不満や不安、絶望を抱えている者が。

 ここは神様夫婦が営むなんでも屋。彼らに認められる、あるいは認識されると入れる場所である。
 ただし、それは一回だけ。気に入られれば何度でも入店できることもあるだろうが、そのほとんどが一回だけである。
 もちろん、人ならざる者たちもくる場所で、彼らが作る料理に舌鼓を打つためでもあった。

 今日も今日とて、ひっそりと佇むその店にたどり着いた者が、その中へ入ろうとしていた。

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