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手放せない
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授業を終わらせて、王子との茶会に行く。王子は座って待っていたようで、来たのを見るとニコニコと笑っている。
「よかった、もうすっかり元気そうですね。あ、ネックレスも付けてくれているのですね、ティア嬢を守りたくて作ったのです、できるだけつけてくれたらうれしいです」
普段使いにするのはどうやら正解だったらしい。とてもうれしそうだ。ただこのネックレスの宝石の色、殿下の目の色と同じなのがどうにも気恥ずかしい。とはいえ、着けておいた方がいいのは間違いないだろう。
「ありがとうございます、殿下がいろいろと研究してくださっていると聞きました。ですが、お忘れなきよう殿下、私は最強の魔法使いでしてよ。私を守りたいと仰られる前に、御身を一番に考えてくださいませ」
この人、王子のくせに守られようと行動していない気がするのだ。別に他人事といえばそうなのだけど、王子という立場にいる以上は、あっさりと死んだら国が大混乱になりそうである。王子はほかにいない。王子が死んだら、継承権が一番高いのは王弟になるのだろうか。まぁ、その前に死んだ時点で次をこさえていきそうな気もする。
「では、私のことと、ティア嬢のことを一番に考えます。それなら問題ありませんね」
にこやかにはっきりと言われてしまった。そうですか、私のことも一番に考えますか。かあぁっと顔に熱がたまるのを感じる。あぁもう、ドン引きさせる予定だったのに腹正しいなぁ。手放したくないって思っちゃうんだから。
「殿下、一つだけお願いがあるのです」
手放したくないのならば、手放せないのならば。
「もしも、私が処刑されるようなことになったときには、できるだけ苦しまない方法になるように進言してくださいませ。痛いのは嫌なのです」
ヒロインを守るために、ヒロインを苦しめた制裁をするために、ありとあらゆる苦痛を与えて殺す。あれはゲーム越しだけれどとても恐ろしかった。せめて、それぐらいはお願いしても許されるだろう。
「処刑となると、よほどの罪を犯さない限り処刑されることはありませんよ。ティア嬢、なにかするおつもりなのですか?」
「いいえ、全くございませんわ」
「それなら、気にする必要はないでしょう」
まぁ、記憶の片隅にぐらい置いてくれていたらいいか。あまり言い過ぎても不自然だろう、王子もどことなく不安そうにこちらを見ている気がする。にっこりと笑顔を作っておいた。
「そうですわね、大きな戦いの後で少々不安定なっていたようですわ。呪の力は心さえかき乱してしまうのです」
殿下の目は不安げなままだったが、それ以上追求をする気はないようだ。
「そうですか。あ、そろそろ母との茶会の時間でしたね、また今度話しましょう」
いつの間にかそんな時間になっていたようだ。礼をとり場所を移動する。ちなみに王子との茶会の時に出てきた、紅茶とクッキーの量はかなり控えめだった。王妃が大量に用意しないかぎり、お腹がタポタポになるような事態にはならないだろう。扉を開けられ、部屋に入り礼をとると、あまり間を置かずに座るように言われた。よし、紅茶とケーキの量は控えめ! 思わず一番に机の上を確認してしまって、慌てて王妃に意識を向けなおす。
「ふふっ、大丈夫よ。流石に食べれないような量を用意したりしないわ」
机を真っ先に確認したの、しっかりとばれていたらしい、笑っているから気分は害していないようだ。
「無理を言って悪かったわ。どうしても早くお礼を言いたかったのよ。シャルを守ってくれてありがとう」
「と、とんでもありません」
最近はこんなことばかりで、ほんとにむず痒いような、落ち着かない心地になりつつ返事を返す。
「そういわないで頂戴。あの子の母親としては本当に、いくら感謝してもし足りないぐらいなのだから。陛下からは、雷と呪を纏いし守護者の称号を……」
「げほげほっ」
思わずむせたわ!! 急な中二ワードに紅茶をふきださなかった私を褒めてほしいぐらいだ。
「だ、大丈夫?」
「はい」
「そ、そぅ? あ、続きを言うわね。陛下から称号が与えられ、シャルからはそのネックレスが渡されているけど、私からはまだ何も渡していなかったわね。何か欲しいものはあるかしら」
ゲーム! と前世なら間髪入れずに答えているところである。残念ながらこの世界にゲームなんて物は存在していない。ぱっと思いつくようなものがないのでそう答える。
「あら、そぅ? 何かあればそれを用意しようと思ったのだけれど。あ、じゃあこれをあげるわ」
スッと王妃の頭についていた飾りを一つ取り、私の頭に着けてにっこりと笑った。これもこれでけっこうな値段になりそうだ。金を纏って歩いているような感覚、庶民の私には落ち着かないのだけど、ニコニコしている王妃にそんなこと言えるはずもない。何より今はこれでも侯爵令嬢である。感覚はともかく肩書だけは庶民ではない。
「ありがとうございます。大切に致しますわ」
「えぇ、そうして頂戴。そういえば、ディーダとはうまくいっているかしら」
教育係については、いろいろと王妃が気を揉んでくれているおかげで、ミュリーから変わって平和な授業になった。
「えぇ、ディーダの授業はとても楽しいです。ありがとうございます」
「とても頑張っているようね、授業の様子はディーダから聞いているわ。大変だと思うけれど、シャルの婚約者はあなたであってほしいと思っているの、頑張って頂戴」
どうやら、婚約者の立場は王妃公認のものになったようです。
「よかった、もうすっかり元気そうですね。あ、ネックレスも付けてくれているのですね、ティア嬢を守りたくて作ったのです、できるだけつけてくれたらうれしいです」
普段使いにするのはどうやら正解だったらしい。とてもうれしそうだ。ただこのネックレスの宝石の色、殿下の目の色と同じなのがどうにも気恥ずかしい。とはいえ、着けておいた方がいいのは間違いないだろう。
「ありがとうございます、殿下がいろいろと研究してくださっていると聞きました。ですが、お忘れなきよう殿下、私は最強の魔法使いでしてよ。私を守りたいと仰られる前に、御身を一番に考えてくださいませ」
この人、王子のくせに守られようと行動していない気がするのだ。別に他人事といえばそうなのだけど、王子という立場にいる以上は、あっさりと死んだら国が大混乱になりそうである。王子はほかにいない。王子が死んだら、継承権が一番高いのは王弟になるのだろうか。まぁ、その前に死んだ時点で次をこさえていきそうな気もする。
「では、私のことと、ティア嬢のことを一番に考えます。それなら問題ありませんね」
にこやかにはっきりと言われてしまった。そうですか、私のことも一番に考えますか。かあぁっと顔に熱がたまるのを感じる。あぁもう、ドン引きさせる予定だったのに腹正しいなぁ。手放したくないって思っちゃうんだから。
「殿下、一つだけお願いがあるのです」
手放したくないのならば、手放せないのならば。
「もしも、私が処刑されるようなことになったときには、できるだけ苦しまない方法になるように進言してくださいませ。痛いのは嫌なのです」
ヒロインを守るために、ヒロインを苦しめた制裁をするために、ありとあらゆる苦痛を与えて殺す。あれはゲーム越しだけれどとても恐ろしかった。せめて、それぐらいはお願いしても許されるだろう。
「処刑となると、よほどの罪を犯さない限り処刑されることはありませんよ。ティア嬢、なにかするおつもりなのですか?」
「いいえ、全くございませんわ」
「それなら、気にする必要はないでしょう」
まぁ、記憶の片隅にぐらい置いてくれていたらいいか。あまり言い過ぎても不自然だろう、王子もどことなく不安そうにこちらを見ている気がする。にっこりと笑顔を作っておいた。
「そうですわね、大きな戦いの後で少々不安定なっていたようですわ。呪の力は心さえかき乱してしまうのです」
殿下の目は不安げなままだったが、それ以上追求をする気はないようだ。
「そうですか。あ、そろそろ母との茶会の時間でしたね、また今度話しましょう」
いつの間にかそんな時間になっていたようだ。礼をとり場所を移動する。ちなみに王子との茶会の時に出てきた、紅茶とクッキーの量はかなり控えめだった。王妃が大量に用意しないかぎり、お腹がタポタポになるような事態にはならないだろう。扉を開けられ、部屋に入り礼をとると、あまり間を置かずに座るように言われた。よし、紅茶とケーキの量は控えめ! 思わず一番に机の上を確認してしまって、慌てて王妃に意識を向けなおす。
「ふふっ、大丈夫よ。流石に食べれないような量を用意したりしないわ」
机を真っ先に確認したの、しっかりとばれていたらしい、笑っているから気分は害していないようだ。
「無理を言って悪かったわ。どうしても早くお礼を言いたかったのよ。シャルを守ってくれてありがとう」
「と、とんでもありません」
最近はこんなことばかりで、ほんとにむず痒いような、落ち着かない心地になりつつ返事を返す。
「そういわないで頂戴。あの子の母親としては本当に、いくら感謝してもし足りないぐらいなのだから。陛下からは、雷と呪を纏いし守護者の称号を……」
「げほげほっ」
思わずむせたわ!! 急な中二ワードに紅茶をふきださなかった私を褒めてほしいぐらいだ。
「だ、大丈夫?」
「はい」
「そ、そぅ? あ、続きを言うわね。陛下から称号が与えられ、シャルからはそのネックレスが渡されているけど、私からはまだ何も渡していなかったわね。何か欲しいものはあるかしら」
ゲーム! と前世なら間髪入れずに答えているところである。残念ながらこの世界にゲームなんて物は存在していない。ぱっと思いつくようなものがないのでそう答える。
「あら、そぅ? 何かあればそれを用意しようと思ったのだけれど。あ、じゃあこれをあげるわ」
スッと王妃の頭についていた飾りを一つ取り、私の頭に着けてにっこりと笑った。これもこれでけっこうな値段になりそうだ。金を纏って歩いているような感覚、庶民の私には落ち着かないのだけど、ニコニコしている王妃にそんなこと言えるはずもない。何より今はこれでも侯爵令嬢である。感覚はともかく肩書だけは庶民ではない。
「ありがとうございます。大切に致しますわ」
「えぇ、そうして頂戴。そういえば、ディーダとはうまくいっているかしら」
教育係については、いろいろと王妃が気を揉んでくれているおかげで、ミュリーから変わって平和な授業になった。
「えぇ、ディーダの授業はとても楽しいです。ありがとうございます」
「とても頑張っているようね、授業の様子はディーダから聞いているわ。大変だと思うけれど、シャルの婚約者はあなたであってほしいと思っているの、頑張って頂戴」
どうやら、婚約者の立場は王妃公認のものになったようです。
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