16 / 39
世界で一人きり
しおりを挟む
王宮でがっつりと呪いの話になって、お家で何も起きないわけがなく、母親に呼び出された。
「また、面倒を増やしてくれたわね、まぁいいわ、護衛はいずれ付けないといけなかったもの。そこにいるジェインが護衛よ」
護衛らしき人にがっつり肩を抑えられてんですが、これ、絶対護衛とは言わない。
「周りが優しくしてくれるからって、調子に乗られると困るのよ、定期的に体に叩き込んであげないと。とはいえ、以前みたいに傷がしっかり残るのはまずいかもしれないわね。まわりの態度が寛容になっているもの、まぁ、やり方はいくらでもあるわ」
杖が視界にうつると、鈍器で殴られたような衝撃がお腹に来る。思わずむせて倒れこみたくなるが、肩を掴まれてるせいで倒れこむことが出来ない。いくら風圧でも痣ぐらいはできるぞ、証拠残さないんじゃなかったのか。
「知っている? 一応治癒もできるのよ、こうしたらわからないと思わない?」
にこやかな笑顔で、これまでの傷がきれいに塞がれていく。痛みも嘘のように消えた。まさか、治癒魔法をこの人使うことが出来たのか、呪いと言い、治癒魔法と言い、実はやたらとハイスペックらしい、非常に迷惑だ。直されては魔法を叩きこまれ、直されては魔法を叩きこまれを繰り返す。潤む瞳に、護衛の口元が楽しげに歪んでいるのが見えた。この母の周り、加虐趣味の人が多いな。肩を掴む手に力が入っていく、折れそうなほどに痛い。自然と、肩に手を伸ばして外そうとすると、背中から思いっきり蹴られた。床に勢いよく倒れこむ。
「あとで傷はふさいであげるから、あなたのやりやすいように叩き込んであげなさい」
うん、護衛の顔が実に楽しそうだ、剣の鞘で容赦なく叩き込まれる。体に限界が来ると、気を失う前に治癒がされる。治癒が解禁されると、際限なくいたぶられるのか。治癒で絶望度を上げてくるのはほんとにご勘弁願いたい。これ、どうにか自分で意識を飛ばしたい。
魔法の中に、意識を奪うものがあったはず、洗脳と同じで精神系の魔法だっただろうか。やったことないけど、自分にかけるならできるんじゃないだろうか。そう思った瞬間杖に手が伸びる、護衛の手が伸びてくるが取り上げられる前に魔法が完成する。意識がスッとフェードアウトした。
目が覚めると、きちんとベッドの上にいた、フラメウが涙目でこちらを見ている。
何だか景色がぐらぐら揺れていて、とても気持ち悪い、吐き気がする。
「お嬢様、精神系の魔法をいきなり自分に使うとは何事ですか、とても危ないことなのですよ!!」
怒鳴られて頭に響いて、とても痛い。声を抑えてほしい。というかフラメウが感情的に起こるのは珍しい、そんなに危なかったんだろうか。手で頭を押さえている様子を見ると、フラメウは声を抑えて話し始めた。
「精神系の魔法は調整が非常に難しいのです、加減を間違えると、精神が壊れて廃人化してしまうこともあるのですよ。なので、普通精神系の魔法は対処法は勉強しても、使い方を勉強することはあまりないのです」
相当やばい魔法だったらしい、気分が悪い所を考えると、魔力の加減を間違ったのだろう。だからなんだというのだろうか、意識を飛ばせないなら、ずっと痛みに耐えるしかない。大人しく耐えていろというのだろうか、妙にむしゃくしゃして、口から攻撃的な言葉がついて出そうになる。
「ほかに良い方法があるなら教えてよ、痛いのは嫌いなの」
どうにも抑えきることが出来ずに、一言だけ零れ落ちた。フラメウは、口をつぐむと苦しそうに眉を寄せる。苦しいのは私であって、フラメウじゃないでしょ?
「怒鳴ってしまって申し訳ありません、とても心配だったのです。お嬢様が目を覚まさなかったらどうしようかと。これまで、お嬢様が無理やり意識を飛ばすような手段をとるようなこともありませんでしたし。なにかあったのですか?」
「普段の虐待に治癒魔法がセットで無限ループ」
答えるのも嫌で、投げやりに返すと、フラメウの顔が歪んだ。いつものように抱きしめようと伸ばしてきた手を反射的に叩き落してしまった。
「あ……」
流石にそこまでするつもりはなかった、ただ優しくされるのもしんどいと思っただけで。傷ついたようなフラメウの顔に、ズキンと胸が痛んだ。謝ればいいのに、言葉が出てこない。出来たのは顔をそらすことだけだった。
「ほかの方法は何か考えてみます。今日はもうゆっくりと休んでください、精神系の魔法を使われたので、自分で思っているよりも疲れておいでだと思います」
怒ればいいのに、気に入らなきゃ詰ればいいのに。そしたら気兼ねなく怒鳴り散らして、とっとと死んでやるのに。味方が欲しかったはずなのに、今は味方がいなければ、悲しむ人がいなければ、何も気にせず命を捨てれるのになんて思ってしまう。いっそ嫌われを目指してみようか、この世界にいたいと思わないなら、死亡フラグを回避することにも意味はないのかもしれない。だったら何の未練も無くなるぐらいに、周りに嫌われて、疎まれて一人で楽に死ぬことが出来たなら。それが一番いいのかもしれない、そんなことを思った。
「また、面倒を増やしてくれたわね、まぁいいわ、護衛はいずれ付けないといけなかったもの。そこにいるジェインが護衛よ」
護衛らしき人にがっつり肩を抑えられてんですが、これ、絶対護衛とは言わない。
「周りが優しくしてくれるからって、調子に乗られると困るのよ、定期的に体に叩き込んであげないと。とはいえ、以前みたいに傷がしっかり残るのはまずいかもしれないわね。まわりの態度が寛容になっているもの、まぁ、やり方はいくらでもあるわ」
杖が視界にうつると、鈍器で殴られたような衝撃がお腹に来る。思わずむせて倒れこみたくなるが、肩を掴まれてるせいで倒れこむことが出来ない。いくら風圧でも痣ぐらいはできるぞ、証拠残さないんじゃなかったのか。
「知っている? 一応治癒もできるのよ、こうしたらわからないと思わない?」
にこやかな笑顔で、これまでの傷がきれいに塞がれていく。痛みも嘘のように消えた。まさか、治癒魔法をこの人使うことが出来たのか、呪いと言い、治癒魔法と言い、実はやたらとハイスペックらしい、非常に迷惑だ。直されては魔法を叩きこまれ、直されては魔法を叩きこまれを繰り返す。潤む瞳に、護衛の口元が楽しげに歪んでいるのが見えた。この母の周り、加虐趣味の人が多いな。肩を掴む手に力が入っていく、折れそうなほどに痛い。自然と、肩に手を伸ばして外そうとすると、背中から思いっきり蹴られた。床に勢いよく倒れこむ。
「あとで傷はふさいであげるから、あなたのやりやすいように叩き込んであげなさい」
うん、護衛の顔が実に楽しそうだ、剣の鞘で容赦なく叩き込まれる。体に限界が来ると、気を失う前に治癒がされる。治癒が解禁されると、際限なくいたぶられるのか。治癒で絶望度を上げてくるのはほんとにご勘弁願いたい。これ、どうにか自分で意識を飛ばしたい。
魔法の中に、意識を奪うものがあったはず、洗脳と同じで精神系の魔法だっただろうか。やったことないけど、自分にかけるならできるんじゃないだろうか。そう思った瞬間杖に手が伸びる、護衛の手が伸びてくるが取り上げられる前に魔法が完成する。意識がスッとフェードアウトした。
目が覚めると、きちんとベッドの上にいた、フラメウが涙目でこちらを見ている。
何だか景色がぐらぐら揺れていて、とても気持ち悪い、吐き気がする。
「お嬢様、精神系の魔法をいきなり自分に使うとは何事ですか、とても危ないことなのですよ!!」
怒鳴られて頭に響いて、とても痛い。声を抑えてほしい。というかフラメウが感情的に起こるのは珍しい、そんなに危なかったんだろうか。手で頭を押さえている様子を見ると、フラメウは声を抑えて話し始めた。
「精神系の魔法は調整が非常に難しいのです、加減を間違えると、精神が壊れて廃人化してしまうこともあるのですよ。なので、普通精神系の魔法は対処法は勉強しても、使い方を勉強することはあまりないのです」
相当やばい魔法だったらしい、気分が悪い所を考えると、魔力の加減を間違ったのだろう。だからなんだというのだろうか、意識を飛ばせないなら、ずっと痛みに耐えるしかない。大人しく耐えていろというのだろうか、妙にむしゃくしゃして、口から攻撃的な言葉がついて出そうになる。
「ほかに良い方法があるなら教えてよ、痛いのは嫌いなの」
どうにも抑えきることが出来ずに、一言だけ零れ落ちた。フラメウは、口をつぐむと苦しそうに眉を寄せる。苦しいのは私であって、フラメウじゃないでしょ?
「怒鳴ってしまって申し訳ありません、とても心配だったのです。お嬢様が目を覚まさなかったらどうしようかと。これまで、お嬢様が無理やり意識を飛ばすような手段をとるようなこともありませんでしたし。なにかあったのですか?」
「普段の虐待に治癒魔法がセットで無限ループ」
答えるのも嫌で、投げやりに返すと、フラメウの顔が歪んだ。いつものように抱きしめようと伸ばしてきた手を反射的に叩き落してしまった。
「あ……」
流石にそこまでするつもりはなかった、ただ優しくされるのもしんどいと思っただけで。傷ついたようなフラメウの顔に、ズキンと胸が痛んだ。謝ればいいのに、言葉が出てこない。出来たのは顔をそらすことだけだった。
「ほかの方法は何か考えてみます。今日はもうゆっくりと休んでください、精神系の魔法を使われたので、自分で思っているよりも疲れておいでだと思います」
怒ればいいのに、気に入らなきゃ詰ればいいのに。そしたら気兼ねなく怒鳴り散らして、とっとと死んでやるのに。味方が欲しかったはずなのに、今は味方がいなければ、悲しむ人がいなければ、何も気にせず命を捨てれるのになんて思ってしまう。いっそ嫌われを目指してみようか、この世界にいたいと思わないなら、死亡フラグを回避することにも意味はないのかもしれない。だったら何の未練も無くなるぐらいに、周りに嫌われて、疎まれて一人で楽に死ぬことが出来たなら。それが一番いいのかもしれない、そんなことを思った。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。


困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる