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第一話『遊びたい』
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小さな頃から、一人ぼっちで遊んでいても、何故だかちっとも寂しくなかった。
実家が自営業の飲食店を経営していたから、夏休みになると、いつも父方の祖母がいる叔父夫婦の家に預けられていたのだけど。叔父夫婦も身内経営の建設会社を営んでいたから忙しくて、遊び相手になりそうなのは、従兄弟の兄弟達くらいだった。ただ、その従兄弟達もみんな歳が離れていたし、長男は既に建設会社の手伝いをしていて、次男は大学生で、大学の授業と部活で手一杯の状態にあって、なかなか僕を構ってくれはしなかった。
建設会社という事もあり、何台もの建機が常に置かれていたから、キーを入れていない状態のそれに乗り込んで操作ごっこをして遊んだり、砂利が大量に山積みされている小山に登って、そこから望める景色をぼんやり眺めたり、叔父夫婦が趣味でやっていた畑に麦わら帽子を被って向かっては、昆虫採集に赴いたり。そうやって、自分なりに工夫して時間を使っていたから、それで寂しさを感じないだけなんだと思っていたけれど。
もしかしたら、僕は、本当の意味で一人ぼっちになっていなかっただけなのかもしれない。
家屋の軒下にある蟻地獄に紛れ込んだ微かな命を、ただぼんやりと観察していた時、不意にそう思った。
この蟻地獄に紛れ込んだ可哀想な命を観察している僕の様に、僕は今、まるで同じ目線で、何か他の存在に観察されているのかな、だなんて。誰かに話したら、頭がおかしくなったか、寂しくて嘘をついたかと思われるだけだろうけど。
「誰かいるの」
答えてくれる声があるはずが無いと、願っていたのは、誰でも無い、この僕で。
「遊びたいの」
この妄想を、現実という確信に変えたく無いのは、紛れも無い、この僕で。
だから。
『遊びたい』
左耳に、そっと囁かれた甘い甘いその声を、未だに僕は、無かった事にし続けている。
小さな頃から、一人ぼっちで遊んでいても、何故だかちっとも寂しくなかった。
実家が自営業の飲食店を経営していたから、夏休みになると、いつも父方の祖母がいる叔父夫婦の家に預けられていたのだけど。叔父夫婦も身内経営の建設会社を営んでいたから忙しくて、遊び相手になりそうなのは、従兄弟の兄弟達くらいだった。ただ、その従兄弟達もみんな歳が離れていたし、長男は既に建設会社の手伝いをしていて、次男は大学生で、大学の授業と部活で手一杯の状態にあって、なかなか僕を構ってくれはしなかった。
建設会社という事もあり、何台もの建機が常に置かれていたから、キーを入れていない状態のそれに乗り込んで操作ごっこをして遊んだり、砂利が大量に山積みされている小山に登って、そこから望める景色をぼんやり眺めたり、叔父夫婦が趣味でやっていた畑に麦わら帽子を被って向かっては、昆虫採集に赴いたり。そうやって、自分なりに工夫して時間を使っていたから、それで寂しさを感じないだけなんだと思っていたけれど。
もしかしたら、僕は、本当の意味で一人ぼっちになっていなかっただけなのかもしれない。
家屋の軒下にある蟻地獄に紛れ込んだ微かな命を、ただぼんやりと観察していた時、不意にそう思った。
この蟻地獄に紛れ込んだ可哀想な命を観察している僕の様に、僕は今、まるで同じ目線で、何か他の存在に観察されているのかな、だなんて。誰かに話したら、頭がおかしくなったか、寂しくて嘘をついたかと思われるだけだろうけど。
「誰かいるの」
答えてくれる声があるはずが無いと、願っていたのは、誰でも無い、この僕で。
「遊びたいの」
この妄想を、現実という確信に変えたく無いのは、紛れも無い、この僕で。
だから。
『遊びたい』
左耳に、そっと囁かれた甘い甘いその声を、未だに僕は、無かった事にし続けている。
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