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圭一郎 可愛いに上限は無いと知る
しおりを挟む昼休みに一年の女子に呼び出された。
勘弁してほしい。昼休みは直樹とくっついて過ごせる貴重な時間なんだよ。
話の内容も想像がつく。指定された場所に行くと、その子はもう待っていた。
「先輩。好きです、付き合ってください。」
「ごめんね。好きな人がいるんだ。」
「でも、彼女はいないって聞きました。」
「うん。彼女はいないよ。(彼氏だから)」
「本当に好きなんです。好きな人の代わりでもいいです。」
「あいつの代わりなんていらない。ごめんね。」
あー早く直樹の隣に行きたいなんて考えていたから油断した。いきなり抱きついてきてキスされた。
咄嗟に突き飛ばし「無理やりするなんて最低だな」と強く言い放つと、その子は泣きながら去って行った。・・・マジで最悪だ。
戻る前に水道でゴシゴシと口を洗った。・・・気持ち悪い。
はぁ~直樹にキスしてほしい。
教室へ戻ると直樹の姿はなかった。
友也が、他のクラスの奴に捕まって話してると教えてくれた。
昼休みに直樹は帰ってこなかった。昼休みどころか、五時間目が始まっても直樹は戻らない。
どうしたんだ?何かあったのか?
授業が終わるまで直樹は戻ってこなかった。でも、荷物は置いたままで机の上も昼休みの前の状態だ。携帯に電話してもカバンの中から音がする。
直樹。どこに行ったんだよ。なにかあったのか?
ホームルームが終わると、焦った様子の友也に呼び止められた。
「圭一郎!・・・単刀直入に言うけど。昼休みに圭一郎が女の子とキスしてるのを直樹も俺も見た。直樹が一人にして欲しいって言ったから、早く戻って来いよって言って別れた。」
・・・え?・・・直樹、あれを見たのか?・・・あの女のせいで直樹を傷つけたのか?
「圭一郎。大丈夫だよ。直樹はちゃんと分かってるから。圭一郎に非が無い事は分かってる。『ただの嫉妬だ。こんな顔を圭一郎には見せられないだろ』って笑ってたから・・・でもまさか戻ってこないとは思わなくて」
「俺探しに行くわ!友也、ありがとう先に帰って!」
「さっき三年棟は探したけどいなかったから!」
「ああ。ありがとう!」
なんだよ直樹。一人になるくらいなら、その感情も全部俺にぶつけてくれればいいのに。全部受け止めるよ。直樹の事なら。直樹。傷つけてごめん。
お願いだから、一人で泣いてないで。
どれくらい探し回っただろうか。もう外は真っ暗だ。
シーンとした廊下に微かにヒックヒックと誰かが泣いている声が聞こえる。
声を頼りに歩いていくと『備品・教材庫』と書かれた部屋に着いた。
耳を当てると確かにこの部屋の中から聞こえる。ドアをガタガタするけど鍵がかかっていて開かない。
「だれ~?だれかいるの?おばけ?」
涙声で弱々しい声が中から聞こえる。この声!絶対に直樹だ。
「直樹!直樹いるの?」
「えっ。けーいちろー?ほんもの?おばけ?・・・おばけはいらないです。」
な、直樹!!こんな時にすご~く不謹慎なんだけども・・・なんか直樹がめちゃくちゃ可愛いことになってる!!・・おばけはいらないですって!おばけに話しかけてる!!可愛すぎる!!
「直樹。おばけじゃないよ。俺だよ。本物だよ。」
「本物のおばけ?え?本物の圭一郎?本当?」
「待ってて!鍵持ってくるから!」
急いで鍵を取りに行ってドアを開けて電気をつけると・・・
ちょこんとソファーに座って、大きな瞳から涙を流しながらモグモグと口を動かしパンを食べている直樹がいた。
「あ・・・本物の圭一郎だった。よかった。・・・へへ」
!!!何なのこの子!可愛すぎる。
何で真っ暗な中でパン食べてるのとか色々聞きたいことはあるけど、とりあえずやっと会えた愛しい人を力いっぱい抱きしめた。
「直樹。ごめんな。友也から全部聞いた。」
「いや、違うんだ。圭一郎は全然悪くない!ただのヤキモチだから、少しだけ気持ちを落ち着かせようと思ってここに来たんだ。」
「うん。」
「そして、クリスマスは圭一郎とケーキが食べたいな。とか楽しみだなって考えてたら寝ちゃったんだよ。鍵かかって出れないし、暗くて怖くてさ。何かあっちこっちからガタガタ音がして。」
「それで怖かったのか?もう大丈夫だからな。」
「うん。探してくれてありがとう。俺、おばけだけは怖いんだよぉ~。」
眉を下げて子供みたいに困ったような顔をする直樹が可愛くて仕方ない。
何なんだよ。可愛すぎるだろ。可愛いに上限は無いのか!
「もし、おばけが来たらパンをあげて帰ってもらおうと思って一つ食べないで残しておいたんだ。いたずらされたらいやだしな。」
っ!おいおい直樹!それはハロウィンだろ!?ごちゃまぜになってるぞ。
何なのその勘違い。・・・超~可愛いんですけど!やっぱり上限が見つからない。
帰りは、あの日のように直樹をおんぶして帰った。
「直樹。もう些細な事でも一人にならないでよ。どんな感情でも受け止めるよ。俺、本当に直樹が大切なんだよ。だから一人で泣かないで。」
「うん。ごめんな。これからはそうする。俺も圭一郎が大切だよ。」
もっともっと直樹を大切にしたいと心から感じた一日だった。
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