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天使からの贈り物 ~クリストファー~
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俺には話を聞いてくれという、メルローズが理解出来なかった。
俺達3人(妹を含む)は子供の頃、年に1度夏の10日間程を
遊んでいただけだ。
初対面からいきなり
『メルメルって呼んでね、クリリン!』なんて、ぐいぐい来られて。
ちょっとの間だから、どうでもいいか、なんて。
(ちなみに妹は『カリリン』で、我慢しろと、俺がなだめた)
それも3、4年続いただけで。
初等部の高学年に進む頃には、
両親と妹はこのホテルで夏を過ごして居たけれど、
俺は王都のタウンハウスで、留守番していた。
王太子殿下の遊び仲間として、王宮に呼ばれることが
増えたからだ。
いつ何時だろうと、その呼び出しには応じなければならないと、
父から命じられたから。
それに、さっきメルローズ本人が言っていた。
今日からウチの両親が来ると間違えていたと。
別に、俺だから相談したかった訳じゃない。
カリーナから前に聞いていた、アレだ。
『かまってちゃん』だ。
何でそんなかまってちゃんに、俺が構わなくてはいけない?
俺は早く天使を迎えに行きたいのに?
俺は扱いに困る『ヤバい本物の困ったちゃん』の王太子殿下の側近で
新婚休暇により、困ったちゃん殿下と離れていることで
心は平和を取り戻した。
それなのに、自分中心のかまってちゃん如きに構っている暇はない。
「幼馴染みに対して冷たいのね。」
ちょっと待ってくれ?
俺達の薄い関係性を幼馴染みと言うのなら、
初等部から留学まで、ずっと一緒だった同級生100人強と
幼馴染みになる。
幼馴染み100人出来るかな?
出来ました、だ。
「結婚した先輩として、
アドバイスが欲しかったのよ。」
知らんがな。
嫁としてのアドバイスなんて、男の俺に出来る訳がない。
結婚についても。
人にアドバイス出来る位なら、こんな俺ではない筈だ。
食べることが大好きな天使にランチを抜かせた。
海が大好きな天使に『寝かせて』と言わせた。
こんな俺に結婚について語る資格はない。
「結婚自体に文句がないのなら、婚約者と話せよ。」
それだけ言って、俺はホテルを出た。
下手な事を言って、その言葉尻から相談にもつれ込まれるのを
避けたかったからだ。
こういうタイプは関係ない話からでも自分の話に持っていく。
グレイスに会ったら、今夜一晩だけ泊まって帰ろうと
聞いてみるつもりの俺だった。
◇◇◇
夏になりかけた今ごろの午後は長い。
グレイスは直ぐに見つかった。
水平線を見渡せる小高い丘の展望台で海を眺めていたのだ。
俺が彼女に近づくと、離れた場所に座っていたフロントの男が
立ち上がった。
すれ違いざま頭を下げた男に、俺は黙礼をした。
メルローズは多分、何とかブルーと言うやつだ。
かまって女がややこしい事を言うだろうけど頑張ってね、の黙礼と
グレイスを見守っていてくれてありがとう、の黙礼だ。
寄せては返す白波をぼんやり見ている彼女は買物をしたらしい。
リボンをかけられた箱を抱えていた。
「グレイス、海を見ているの?」
陳腐なことしか言えない俺。
この場で海を見ているのかなんて、アホ過ぎる。
「あんまり気持ち良さそうに寝ていらっしゃるから、
黙って出かけてごめんなさい。」
リビングの長椅子で眠っていた俺にグレイスが掛けてくれた上掛けは
寝室の物だった。
眠ると言った彼女に俺が掛けたので、その上掛けには
彼女の香りがついていた。
それで俺は慌てて寝室を覗いたのだった。
「クリストファー、お誕生日おめでとうございます。」
彼女は箱を持ち上げて、俺に差し出した。
どういう事かな?
今日は俺の誕生日じゃないんだけど?
俺達3人(妹を含む)は子供の頃、年に1度夏の10日間程を
遊んでいただけだ。
初対面からいきなり
『メルメルって呼んでね、クリリン!』なんて、ぐいぐい来られて。
ちょっとの間だから、どうでもいいか、なんて。
(ちなみに妹は『カリリン』で、我慢しろと、俺がなだめた)
それも3、4年続いただけで。
初等部の高学年に進む頃には、
両親と妹はこのホテルで夏を過ごして居たけれど、
俺は王都のタウンハウスで、留守番していた。
王太子殿下の遊び仲間として、王宮に呼ばれることが
増えたからだ。
いつ何時だろうと、その呼び出しには応じなければならないと、
父から命じられたから。
それに、さっきメルローズ本人が言っていた。
今日からウチの両親が来ると間違えていたと。
別に、俺だから相談したかった訳じゃない。
カリーナから前に聞いていた、アレだ。
『かまってちゃん』だ。
何でそんなかまってちゃんに、俺が構わなくてはいけない?
俺は早く天使を迎えに行きたいのに?
俺は扱いに困る『ヤバい本物の困ったちゃん』の王太子殿下の側近で
新婚休暇により、困ったちゃん殿下と離れていることで
心は平和を取り戻した。
それなのに、自分中心のかまってちゃん如きに構っている暇はない。
「幼馴染みに対して冷たいのね。」
ちょっと待ってくれ?
俺達の薄い関係性を幼馴染みと言うのなら、
初等部から留学まで、ずっと一緒だった同級生100人強と
幼馴染みになる。
幼馴染み100人出来るかな?
出来ました、だ。
「結婚した先輩として、
アドバイスが欲しかったのよ。」
知らんがな。
嫁としてのアドバイスなんて、男の俺に出来る訳がない。
結婚についても。
人にアドバイス出来る位なら、こんな俺ではない筈だ。
食べることが大好きな天使にランチを抜かせた。
海が大好きな天使に『寝かせて』と言わせた。
こんな俺に結婚について語る資格はない。
「結婚自体に文句がないのなら、婚約者と話せよ。」
それだけ言って、俺はホテルを出た。
下手な事を言って、その言葉尻から相談にもつれ込まれるのを
避けたかったからだ。
こういうタイプは関係ない話からでも自分の話に持っていく。
グレイスに会ったら、今夜一晩だけ泊まって帰ろうと
聞いてみるつもりの俺だった。
◇◇◇
夏になりかけた今ごろの午後は長い。
グレイスは直ぐに見つかった。
水平線を見渡せる小高い丘の展望台で海を眺めていたのだ。
俺が彼女に近づくと、離れた場所に座っていたフロントの男が
立ち上がった。
すれ違いざま頭を下げた男に、俺は黙礼をした。
メルローズは多分、何とかブルーと言うやつだ。
かまって女がややこしい事を言うだろうけど頑張ってね、の黙礼と
グレイスを見守っていてくれてありがとう、の黙礼だ。
寄せては返す白波をぼんやり見ている彼女は買物をしたらしい。
リボンをかけられた箱を抱えていた。
「グレイス、海を見ているの?」
陳腐なことしか言えない俺。
この場で海を見ているのかなんて、アホ過ぎる。
「あんまり気持ち良さそうに寝ていらっしゃるから、
黙って出かけてごめんなさい。」
リビングの長椅子で眠っていた俺にグレイスが掛けてくれた上掛けは
寝室の物だった。
眠ると言った彼女に俺が掛けたので、その上掛けには
彼女の香りがついていた。
それで俺は慌てて寝室を覗いたのだった。
「クリストファー、お誕生日おめでとうございます。」
彼女は箱を持ち上げて、俺に差し出した。
どういう事かな?
今日は俺の誕生日じゃないんだけど?
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