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【サイドストーリー】 攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
最終話②
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「オスカー……お前ってしゃべるタイプなんだ」
「だって俺、元編集者よ?
落ち込んだり逃げ出そうとする作家や漫画家をなだめすかして、その気にさせて、原稿受け取って、なんぼな訳。
口下手じゃやってられない職業だからね?」
「……いつから記憶戻った?」
「12かなぁ、それからオスカーやらせて貰ってます」
「静かなる貴公子オスカーは擬態かよ……
穂波さん的には、ヒーローがそんなおしゃべりでいい、って?」
「今まで無理させてごめんね、って言われたよ。
それで、これからの展望も話したんだ」
「展望……」
「チカ先生が漫画の神様になる野望を持っていてさ、俺も面白いと思うんだ。
ロージーにはコミカライズだけじゃなくて、イケメンだらけの2.5次元ミュージカルの話もした。
あれは夢が拡がるよな、推しのうちわとかさ。
ペンラ、魔法で何とかなる?」
まさか推し本人からうちわの話を聞き、ペンライトの相談をされるとは思わなかったグレンジャーだ。
それは俺に言うよりも、ロザリンドに願って貰えば、あの気まぐれな神様が何とかしてくれるかも。
……とは、決して言わない。
俺だって万能キャラだからね?
依頼されたら、頑張りまっせ。
ペンライトじゃなくて、折るサイリウムなら。
酸化液と蛍光液なら、どうにかなるかも……
いやもう、これから電池発明する?
ただ、これだけは言ってみた。
「2.5もいいけどさ、女性ばかりの歌劇団もいい、と思うよ?」
「そうだな! あの大階段! 絶対に人気出るな!」
「お前さ……卒業後は王太子殿下に誘われてるんでしょ?
文化大臣にして貰えば?」
「……殿下が俺に求めているのは、そう言うんじゃなくてさ。
……国を動かすんじゃなくて、人の心を動かしたいんだよ、俺は。
適材適所で言えば、俺には国政なんて絶対に無理だから」
◇◇◇
「カールのことも誤解してて避けたりしてて、悪かったな、と思ってる」
カールはまだ来ない。
オスカーが魔法科棟の方を眺めながら呟いた。
「……お前の方から避けてたの?」
「……カールとはよく目が合ったんだ。
その目はいつものおとなしそうなあいつの目じゃなくて、俺を観察しているみたいで。
王家の影で、紛れ込んでるのか、と」
あー、それはね神様が乗り移ったカールなんだよ、とは言えなくて。
お気に入りの穂波さんは、神様に対しても。
推しのオスカーを絶賛してたんだろうな。
だから自然と向ける目が厳しくなってたんだ。
グレンジャーは黙って、オスカーの後悔を聞くだけだった。
それであのビルをやる時、人目がない場所を聞いて?
見た目通りのおとなしいやつじゃないと判断した?
「よく考えたら、王家の影なら2組じゃなくて、ランドールやアビゲイル嬢が居る1組に入るはずだもんな。
前世の記憶が戻って、そんなに日も経ってなくて。
オスカーはこれで良いのか、毎日あがいていたんだ。
周囲をちゃんと見る余裕もなくて、あいつには悪いことをした。
今更だけど、カールは友達に戻ってくれるのかな……」
自分の気持ちをさらけ出して、不安を口にするオスカーの肩を、グレンジャーは叩いた。
「昼飯を食おうと言ったら、嬉しそうだった」
それを聞いて安心したのか、オスカーが大きく息を吐いた。
「おー、カール! こっち、こっち!」
目ざとくカールを見つけたオスカーが大きく手を振った。
久し振りだからか、カールもなんとなく恥ずかしげで。
事故当時は登場していなかったから、カールは転生者じゃないけれど。
こいつの推しもお前みたいだわ、とグレンジャーは同類の匂いがした。
目立つ中庭に居るからか、今度は騎士科からアランが来て。
普通科のウェズリーとマークが『俺等も誘えよ』と合流する。
あの、皆が手探り状態だった、ごちゃ混ぜの日々が思い出された。
「じゃあ、来週は皆に声掛けるか、グレン?」
推しが良い声で、親友グレンジャーにお伺いを立ててくれるので。
人の心を動かすもの、に関わりたい、と。
オスカーは、はっきりと言ったけれど。
オスカー自身が人の心を動かしてんの、分かってんの?
自分のことを一番よく分かっていないオスカーの、親友枠に収まったグレンジャーは。
これからも推しを見守らせて貰います! と固く固く。
どこかで見ているかもしれない、多分今日も全身白コーデの神様に誓った。
おわり
*****
最終話まで、お読みいただきまして。
どうも、ありがとうございました!
「だって俺、元編集者よ?
落ち込んだり逃げ出そうとする作家や漫画家をなだめすかして、その気にさせて、原稿受け取って、なんぼな訳。
口下手じゃやってられない職業だからね?」
「……いつから記憶戻った?」
「12かなぁ、それからオスカーやらせて貰ってます」
「静かなる貴公子オスカーは擬態かよ……
穂波さん的には、ヒーローがそんなおしゃべりでいい、って?」
「今まで無理させてごめんね、って言われたよ。
それで、これからの展望も話したんだ」
「展望……」
「チカ先生が漫画の神様になる野望を持っていてさ、俺も面白いと思うんだ。
ロージーにはコミカライズだけじゃなくて、イケメンだらけの2.5次元ミュージカルの話もした。
あれは夢が拡がるよな、推しのうちわとかさ。
ペンラ、魔法で何とかなる?」
まさか推し本人からうちわの話を聞き、ペンライトの相談をされるとは思わなかったグレンジャーだ。
それは俺に言うよりも、ロザリンドに願って貰えば、あの気まぐれな神様が何とかしてくれるかも。
……とは、決して言わない。
俺だって万能キャラだからね?
依頼されたら、頑張りまっせ。
ペンライトじゃなくて、折るサイリウムなら。
酸化液と蛍光液なら、どうにかなるかも……
いやもう、これから電池発明する?
ただ、これだけは言ってみた。
「2.5もいいけどさ、女性ばかりの歌劇団もいい、と思うよ?」
「そうだな! あの大階段! 絶対に人気出るな!」
「お前さ……卒業後は王太子殿下に誘われてるんでしょ?
文化大臣にして貰えば?」
「……殿下が俺に求めているのは、そう言うんじゃなくてさ。
……国を動かすんじゃなくて、人の心を動かしたいんだよ、俺は。
適材適所で言えば、俺には国政なんて絶対に無理だから」
◇◇◇
「カールのことも誤解してて避けたりしてて、悪かったな、と思ってる」
カールはまだ来ない。
オスカーが魔法科棟の方を眺めながら呟いた。
「……お前の方から避けてたの?」
「……カールとはよく目が合ったんだ。
その目はいつものおとなしそうなあいつの目じゃなくて、俺を観察しているみたいで。
王家の影で、紛れ込んでるのか、と」
あー、それはね神様が乗り移ったカールなんだよ、とは言えなくて。
お気に入りの穂波さんは、神様に対しても。
推しのオスカーを絶賛してたんだろうな。
だから自然と向ける目が厳しくなってたんだ。
グレンジャーは黙って、オスカーの後悔を聞くだけだった。
それであのビルをやる時、人目がない場所を聞いて?
見た目通りのおとなしいやつじゃないと判断した?
「よく考えたら、王家の影なら2組じゃなくて、ランドールやアビゲイル嬢が居る1組に入るはずだもんな。
前世の記憶が戻って、そんなに日も経ってなくて。
オスカーはこれで良いのか、毎日あがいていたんだ。
周囲をちゃんと見る余裕もなくて、あいつには悪いことをした。
今更だけど、カールは友達に戻ってくれるのかな……」
自分の気持ちをさらけ出して、不安を口にするオスカーの肩を、グレンジャーは叩いた。
「昼飯を食おうと言ったら、嬉しそうだった」
それを聞いて安心したのか、オスカーが大きく息を吐いた。
「おー、カール! こっち、こっち!」
目ざとくカールを見つけたオスカーが大きく手を振った。
久し振りだからか、カールもなんとなく恥ずかしげで。
事故当時は登場していなかったから、カールは転生者じゃないけれど。
こいつの推しもお前みたいだわ、とグレンジャーは同類の匂いがした。
目立つ中庭に居るからか、今度は騎士科からアランが来て。
普通科のウェズリーとマークが『俺等も誘えよ』と合流する。
あの、皆が手探り状態だった、ごちゃ混ぜの日々が思い出された。
「じゃあ、来週は皆に声掛けるか、グレン?」
推しが良い声で、親友グレンジャーにお伺いを立ててくれるので。
人の心を動かすもの、に関わりたい、と。
オスカーは、はっきりと言ったけれど。
オスカー自身が人の心を動かしてんの、分かってんの?
自分のことを一番よく分かっていないオスカーの、親友枠に収まったグレンジャーは。
これからも推しを見守らせて貰います! と固く固く。
どこかで見ているかもしれない、多分今日も全身白コーデの神様に誓った。
おわり
*****
最終話まで、お読みいただきまして。
どうも、ありがとうございました!
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芹香様
おはようございますっ!
ご感想ありがとうございます!
こちらにもお立ち寄りいただきましたこと&嬉しいご感想を本当に感謝致します✨✨
もし、記憶がある内に転生希望を聞かれたら?
攻略対象者には皆なりたくないわな、と思いまして。
日本人なら腕力じゃなく、じゃんけんで平和的に解決するでしょう、多分。
じゃあ、ヒロインかと言うと。
それも微妙かな、と。
波乱万丈は眺められたら充分ですもんね😅
わたしは転生するなら絶対に魔法使い希望なので、グレンのサイドストーリーも書きました。
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バックグラウンドはそのまま私でした。
今年も夢と魔法の王国で、いっぱい小金とカードを使って、その金額に後で泣く😭予定を立てております笑
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また、そちらにもご感想をいただけましたら、幸いです💕
パクパク様
ご感想ありがとうございます!
完結してずいぶん経ったお話に、こうしてご感想がいただけるのは、とても嬉しいです。
ありがとうございます😆💕✨
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