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【サイドストーリー】 攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
第22話
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王族専用室に軟禁されて、全く状況が分からずイライラしていたオスカーは、いきなり現れたグレンジャーに腰を抜かした。
予告もなく現れた友人に、クールなオスカーが腰を抜かすなんて。
非常時だとわかっているが、グレンジャーはつい笑ってしまった。
「グレンジャー・オルコット、参上!」
「おま、お前、何で!」
「これが魔法です!」
目の前に、オスカーのペンを差し出した。
以前、オスカーから借りパクしたペンを利用して、転移魔法で彼の元に現れたのだ。
「それでこの場所が分かったのか……
あのさ、何で俺は閉じ込められてる?」
軟禁された事情が全くわかっていない彼に、グレンジャーが手短に。
アランから聞いた事実と憶測を交えながら語った。
「ロージーが誘拐?」
「そんなことを叫んでたらしいよ?」
「くそっ、くそっ、あいつら、俺を騙したのか!」
途端に怒りを隠さずに、オスカーが部屋の中を歩き回った。
「いや、待て。
落ち着け……チカ先生はそんなひとじゃない……」
3周ほど回って、気持ちを落ち着けると、自分に言い聞かせるように、独り言を呟いている。
5年以上の付き合いで、いつも冷静なオスカー・オブライエンのこんな姿は見たことがない。
チカ先生とは、漫画家の佐々木千歌?
立ち止まったオスカーの目が、いつもとは違う感じに見える。
「お前のその魔法でロージーのところへ連れていけ」
「悪いな、俺は自分1人しか転移出来ないから親父殿のところへ助けを頼みに行く」
「これを取りに来たのか?」
オスカーが手首に巻かれたリボンを見せた。
これが噂の『義妹からリボン強奪事件』のヤツだな、とグレンジャーは手を伸ばそうとしたが、オスカーはその手を背後に隠した。
「親父殿をここへ連れてきてくれ。
これを渡したら、俺を置いてお前達だけで飛ぶ気だろ?」
「うーん……」
言い当てられて、仕方なくグレンジャーは自宅へ飛んだ。
登校する時、徹夜明けで入れ違いに帰宅した親父殿には、まだ侯爵令嬢誘拐の一報は入っていないだろう。
王城からの知らせを受け取ればそちらを優先しなくてはならず、自由に動けなくなる。
多分まだベッドの中で熟睡中の親父殿を起こすのは至難の業だが、思い切りたたき起こすのも面白い。
カーネルの寝室は、昼間でもぐっすり眠れる様に、遮光シールドが掛けられていて、その上、外部の音もシャットアウトして防音も完備している。
明るい学苑から転移してきたグレンジャーは、暗闇状態の養父の部屋に現れた途端に、足元に散らばった洋服に足を取られて。
寝台の上で寝付いたばかりのカーネルの腹の上に倒れこんだ。
養父のみぞおちに、養子のエルボーが入った。
「おっ、おっ、ぐえっ」
グレンジャーは身長173センチ、体重62キロと。
どちらかと言えば小柄だが、それでも18歳の高校3年生男子だ。
それにのしかかってこられて、身長191センチ体重85キロのカーネルは『すわ、敵襲か!』と、咄嗟に攻撃体勢に入れたことは、さすが魔法省トップの長官だけある。
慣れてきた夜目と、魔力の動きで。
カーネルから攻撃を受けるかも、と。
グレンジャーの方は防御体勢を取りながら、大声で叫んだ。
「俺、俺!グレン!
オスカーが、大変だっ!」
わずか15分足らずでグレンジャーは親父殿を連れてきた。
オルコット長官の髪は乱れ、服装のボタンはかけ違っていて、睡眠不足の目は血走っていた。
「殿下はこの場で、お待ちください。
私と息子で行って参ります」
「この腕を切り落としてから、ですか?
私はこのリボンは、絶対誰にも渡しません!」
そう言うオスカーの瞳を見てカーネル・オルコットは彼も一緒に飛ぶことにした。
一度決めたら絶対に譲らない、そんな性格の亡き妹の面影が確かに見えたのだ。
後から大きな問題にはなるだろう。
何があるか、敵が誰か、分かっていない現場に王族を連れていくのだ。
だが、全ての責任は自分が負う、とカーネルは即決した。
「畏まりました。
リボンを拝見致します。
失礼致します」
そう言ってオスカーの手首を軽く掴んだカーネルのライトブラウンの瞳が赤く染まった。
オスカーは傍らのグレンジャーの方を見た。
グレンジャーは軽く笑い、自分の赤い瞳を指差した。
この魔力を秘めた赤い目があったから、自分は親父殿に引き取られたのだ。
オスカーは甥だと言っていたが、殿下と呼び掛けていた。
手元で育てられない甥と同い年の自分が養子に選ばれたのは、赤い瞳のせいだけではないのかも知れない。
しかし、それをグダグダ思うのはグレンジャーの性に合わない。
俺は、親父殿もオスカーも、好きなんだ。
そして3人はロザリンドのリボンから感じる彼女の波動を探しながら、飛んだ。
予告もなく現れた友人に、クールなオスカーが腰を抜かすなんて。
非常時だとわかっているが、グレンジャーはつい笑ってしまった。
「グレンジャー・オルコット、参上!」
「おま、お前、何で!」
「これが魔法です!」
目の前に、オスカーのペンを差し出した。
以前、オスカーから借りパクしたペンを利用して、転移魔法で彼の元に現れたのだ。
「それでこの場所が分かったのか……
あのさ、何で俺は閉じ込められてる?」
軟禁された事情が全くわかっていない彼に、グレンジャーが手短に。
アランから聞いた事実と憶測を交えながら語った。
「ロージーが誘拐?」
「そんなことを叫んでたらしいよ?」
「くそっ、くそっ、あいつら、俺を騙したのか!」
途端に怒りを隠さずに、オスカーが部屋の中を歩き回った。
「いや、待て。
落ち着け……チカ先生はそんなひとじゃない……」
3周ほど回って、気持ちを落ち着けると、自分に言い聞かせるように、独り言を呟いている。
5年以上の付き合いで、いつも冷静なオスカー・オブライエンのこんな姿は見たことがない。
チカ先生とは、漫画家の佐々木千歌?
立ち止まったオスカーの目が、いつもとは違う感じに見える。
「お前のその魔法でロージーのところへ連れていけ」
「悪いな、俺は自分1人しか転移出来ないから親父殿のところへ助けを頼みに行く」
「これを取りに来たのか?」
オスカーが手首に巻かれたリボンを見せた。
これが噂の『義妹からリボン強奪事件』のヤツだな、とグレンジャーは手を伸ばそうとしたが、オスカーはその手を背後に隠した。
「親父殿をここへ連れてきてくれ。
これを渡したら、俺を置いてお前達だけで飛ぶ気だろ?」
「うーん……」
言い当てられて、仕方なくグレンジャーは自宅へ飛んだ。
登校する時、徹夜明けで入れ違いに帰宅した親父殿には、まだ侯爵令嬢誘拐の一報は入っていないだろう。
王城からの知らせを受け取ればそちらを優先しなくてはならず、自由に動けなくなる。
多分まだベッドの中で熟睡中の親父殿を起こすのは至難の業だが、思い切りたたき起こすのも面白い。
カーネルの寝室は、昼間でもぐっすり眠れる様に、遮光シールドが掛けられていて、その上、外部の音もシャットアウトして防音も完備している。
明るい学苑から転移してきたグレンジャーは、暗闇状態の養父の部屋に現れた途端に、足元に散らばった洋服に足を取られて。
寝台の上で寝付いたばかりのカーネルの腹の上に倒れこんだ。
養父のみぞおちに、養子のエルボーが入った。
「おっ、おっ、ぐえっ」
グレンジャーは身長173センチ、体重62キロと。
どちらかと言えば小柄だが、それでも18歳の高校3年生男子だ。
それにのしかかってこられて、身長191センチ体重85キロのカーネルは『すわ、敵襲か!』と、咄嗟に攻撃体勢に入れたことは、さすが魔法省トップの長官だけある。
慣れてきた夜目と、魔力の動きで。
カーネルから攻撃を受けるかも、と。
グレンジャーの方は防御体勢を取りながら、大声で叫んだ。
「俺、俺!グレン!
オスカーが、大変だっ!」
わずか15分足らずでグレンジャーは親父殿を連れてきた。
オルコット長官の髪は乱れ、服装のボタンはかけ違っていて、睡眠不足の目は血走っていた。
「殿下はこの場で、お待ちください。
私と息子で行って参ります」
「この腕を切り落としてから、ですか?
私はこのリボンは、絶対誰にも渡しません!」
そう言うオスカーの瞳を見てカーネル・オルコットは彼も一緒に飛ぶことにした。
一度決めたら絶対に譲らない、そんな性格の亡き妹の面影が確かに見えたのだ。
後から大きな問題にはなるだろう。
何があるか、敵が誰か、分かっていない現場に王族を連れていくのだ。
だが、全ての責任は自分が負う、とカーネルは即決した。
「畏まりました。
リボンを拝見致します。
失礼致します」
そう言ってオスカーの手首を軽く掴んだカーネルのライトブラウンの瞳が赤く染まった。
オスカーは傍らのグレンジャーの方を見た。
グレンジャーは軽く笑い、自分の赤い瞳を指差した。
この魔力を秘めた赤い目があったから、自分は親父殿に引き取られたのだ。
オスカーは甥だと言っていたが、殿下と呼び掛けていた。
手元で育てられない甥と同い年の自分が養子に選ばれたのは、赤い瞳のせいだけではないのかも知れない。
しかし、それをグダグダ思うのはグレンジャーの性に合わない。
俺は、親父殿もオスカーも、好きなんだ。
そして3人はロザリンドのリボンから感じる彼女の波動を探しながら、飛んだ。
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