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【サイドストーリー】 攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!

第20話

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 翌日の朝、グレンジャーの目覚めはスッキリしたものだった。


 夢に見た神様との邂逅で、前世の記憶が甦り、これまでの話の流れが掴めた。
 それによって、あんなに萎れた姿のオスカーの理由も判明した。


 今夜の仮面祭り……ヒロインとヒーローが恋に落ちる重要ポイントなのに。


 ヒロインと結ばれたくない『乙花』の真のヒーロー、オスカー・オブライエンはこれをどうやり過ごせるか、悩みに悩んでいるのだろう。
 ヒーローがヒロインと結ばれたくないなんて、そんなファンタジーは無いだろ、とファンとしては荒ぶってしまいそうになるが。
 あのミシェルじゃあな、とも理解出来る。
 


 自分以外にも、オスカーがヒーローだろう、と先読みしてた人は結構居るだろうし。
 まさかオスカーが人気が無くて、ジャンケンに負けて仕方なく選ばれた、とも思えなくて。


 ただ、神様も『日本人は面白いね』と言っていた。
 読んでいる分にはいいけれど、じゃあ自分がヒーローやヒロインになりたいか、と聞かれたら、二の足を踏むひとは多かっただろう。

 渦中に居なくていい。
 それを見られたらいい。


 オスカーに転生したひとは、そこのところどう思っていたのかな?
 最初から、ミシェルとは結ばれたくなかったのかな……


 余計な真似はせず、と神様には言われた。

 俺はそういうキャラに、見えるのかな?

 昨夜、親父殿にもそんなことを言われたのだ。
 オスカーの出生について、お前は関わろうとするな、と義父からは釘を刺された。
 時期が来たら、保護者であるコルテス侯爵から話す事になっているからと、言われたのだ。



 へいへい、余計なことは致しません、って。
 今夜18時にはオスカーがやって来る。

 ちょっとは体調ましになっていたらいいな。
 余計な真似はしないけど、魔力を少し注いで、体調不調は整えてやろう。

 多分、今夜は長くなる。


  ◇◇◇

 
 約束の18時になる前に、訪れたオスカーをグレンジャーは歓迎した。

 昨日とはまるで別人のように晴れやかな表情をした親友は、噂の義妹をエスコートして現れたので、なるほどと思ったけれど、自分からは何も聞くまい、と瞬時に判断した。
 友達だから遠慮しない主義のグレンジャーだが、恋愛系に関しては、ずけずけと踏み込みたくなかったからだ。


 それに、本当は親友じゃなくて、敵になるはずだった俺を。
 戸倉さんの記憶が戻ったロザリンドは、どう見てるのか、少し不安ではあった。


 オスカーは兄ダンカンとのあらましを簡単に説明して、先程解決したので夜の仮面祭りには行かないのだ、とグレンジャーに語った。

 あの夜のミシェルとの出会いには、そんな事情があったのか、と驚いたが、そんな思いはおくびにも出さない。


「あ、それと……ミシェル嬢は俺の義姉になるみたいだ」

「え? 何や?」

 この情報には、さすがのグレンジャーも驚いた。
 ヒロインがヒーローの、あね?


「兄貴がプロポーズして、それを彼女が受けた……というか。
 そうなるように上手く仕向けたと、いうか」


 苦笑しながら、オスカーは隣のロザリンドと、視線を絡ませていて。
 その余りの甘さに、見ているグレンジャーこそ、苦笑いだ。


「……王太子殿下云々はもういいって、ことか。
 ミシェルも現実を知ったんだな」

「それと、俺はウェインに戻って……
 ロージーと結婚するから」


 そう言いながら、隣に座るロザリンドをオスカーは引き寄せた。


「コルテス侯爵達には今夜話すけど、お前には先に伝えとこうと、思って。
 俺はロザリンドと結婚する!」


 ……そうかよ、大事なことだから2回言いましたかよ、とオスカーの気合いの入った結婚宣言を、微笑ましく思うグレンジャーだったが。



 義父カーネル・オルコットはオスカーが自分の妹の子供、つまり甥だと認めたが、父親に関しては頑として口を割らなかった。
 どうして今更、父親の名前を隠すのか、そこが気掛かりだったけれど。


 ここから先は俺なんかが口を挟める領分じゃないからな。
 大人の事情でややこしい事になったら、その時は助けるから……
 ひとりで抱え込むなよ。



 俺はオスカーから選ばれた親友だ。
 親友としても、推しのオスカーの初恋を、ただ御祝いしてやりたい。

 恥ずかしそうなロザリンドと微笑み合うオスカーを眺めながら。

 問題なく婚約から結婚と、順調に事が運べばいいのに、とグレンジャーは願わずにはいられなかった。
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