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【サイドストーリー】 攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
第14話
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グレンジャーはとにかく早く魔法棟へ戻りたくて、皆を代表するように立ち上がった。
「……あぁ、そうなんだ。
色々と大変だと思うけど、がんばってね。
ミシェル、これからも君の幸せを祈っているよ」
転生、なるものの説明を求めるべきか?
だけど、余り興味ないし。
ミシェルに向けた激励の言葉にしては、あっさりし過ぎてたかな?
元々、長居するつもりはない。
フィリッパはせっかちではないが、余り待たせたくはない。
グレンジャーはそれだけ言うと、教室から出ていった。
後ろから、ローマンとマーク、アランも続いて出てくる。
「言っちゃったねー、とうとう」
ローマンまでが訳の分からないことを言う。
「お前らさぁ、何をさっきから言ってんの?」
「え……グレンは違うの?」
「ミシェルに引っ掛かったの、ウェズリーだけだから。
あいつはそうじゃないとは思っていたけど。
グレンは思い出したんだと……」
「違うなら、いいよ。
変なこと聞かせてごめんな?
気にせずに、な?」
思い出したんだ?
何を?
彼等の言ってることは、さっぱり分からなかったが。
取りあえず、図書室へグレンジャーは急いだ。
ピッパが俺を待っている。
ミシェルはこれから、王太子と知り合って、恋人になるらしい。
王城に居る相手に、一体どんな手管を使うつもりなのか。
知りたいような、知りたくないような……グレンジャーだった。
夏休みが終わり最終学年に進級すると、掌を返すように攻略対象者の全員がミシェルの側に行かなくなった。
ミシェルとの不貞の恋に走った馬鹿者、ウェズリー・ノースはやはりオスカーの義妹に婚約を破棄された。
今までは、基本的にミシェルの隣にはウェズリーが居た。
彼が隣に付けない時は、ウェズリーの友人がミシェルの側に居た。
それで、ミシェルは守られていた。
だが、彼等が居なくなったことで、女生徒達の遠慮がなくなった。
ミシェルとすれ違うと、彼女達は目と目を見合わせて嗤っていたりするらしい。
普通科校舎に居ないグレンジャーには、それを聞いてもどうすることも出来ない。
少し可哀想だと思うが、『もう付き合わない』と宣言してきたのは、ミシェルの方だ。
入学してきたオスカーの義妹に、食堂で文句をつけた、と言う噂も聞いた。
間に入ったウェズリーがふたりを引き離して、ミシェルを食堂から連れ出したらしい。
あのふたりは別れてないの、とまた噂になったが、熱病が治まったウェズリーと、グレンジャーは会って話をしている。
「あれは一体何だったんだろうな……」
自分でも分からない恋の病だった、とウェズリーは笑っていた。
しかし、すっかり冷めたからと言って、ロザリンド嬢との婚約をもう一度、とも思っていないらしい。
「ロージーには、本当に悪いことをしたよ。
有責で婚約破棄されて、ボロカス親にも言われたけどさ。
廃嫡されなくて、助かった。
つくづく俺なんかじゃなくなって、彼女にとったら却って良かった、と思うよ。
今は本当に……ロージーには、幼馴染みとして幸せになって欲しいんだ」
心残りはロージーのデビュタントのエスコートが出来なくなったこと、かな。
ウェズリーは寂しそうに、そう締めくくった。
恋じゃなくても、そんなに大切に婚約者のことを想っていたのなら。
だったら、何でミシェルに行った?
気持ちを抑えられなかった?
そう尋ねたグレンジャーに、ウェズリーは己の胸の辺りを指差した。
「自分でも分からない力が働いたみたいに。
ミシェルを一目見た時、ぐいって、心臓が掴まれた感じだったんだよ」
心臓が掴まれた、か……
男心は、よう分からん。
自分も男なのに、グレンジャーはそうピッパに、嘆いてみせた。
後、よく分からん、と言えばオスカーのことだ。
夏休みが始まる前に、例の『仮面祭りの夜、よろしくな』があったのに。
さっき、また魔法棟へやって来て『仮面祭り、約束忘れてないね?』と言ってくる。
一体この1年間で何回、その約束をさせられた?
俺は忘れてないよ?
忘れかけてるのは、お前だろ?
何度もそう言い掛けて、それでも言わなかったのは。
オスカーの様子が普通じゃない気がしたからだ。
だから、付き合うようになったピッパから、仮面祭りに誘われたけれど、オスカーと約束してるから、と断った。
『いいよ、オブライエンなら仕方ない、分かった』と物わかりの良い彼女に。
さすが、俺の彼女、と惚れ直すが、もうちょっと残念がってよ、とも思う。
そして、それから直ぐに王城でのデビュタントが開催され。
今年行かなかったことを、グレンジャーは少し後悔した。
「……あぁ、そうなんだ。
色々と大変だと思うけど、がんばってね。
ミシェル、これからも君の幸せを祈っているよ」
転生、なるものの説明を求めるべきか?
だけど、余り興味ないし。
ミシェルに向けた激励の言葉にしては、あっさりし過ぎてたかな?
元々、長居するつもりはない。
フィリッパはせっかちではないが、余り待たせたくはない。
グレンジャーはそれだけ言うと、教室から出ていった。
後ろから、ローマンとマーク、アランも続いて出てくる。
「言っちゃったねー、とうとう」
ローマンまでが訳の分からないことを言う。
「お前らさぁ、何をさっきから言ってんの?」
「え……グレンは違うの?」
「ミシェルに引っ掛かったの、ウェズリーだけだから。
あいつはそうじゃないとは思っていたけど。
グレンは思い出したんだと……」
「違うなら、いいよ。
変なこと聞かせてごめんな?
気にせずに、な?」
思い出したんだ?
何を?
彼等の言ってることは、さっぱり分からなかったが。
取りあえず、図書室へグレンジャーは急いだ。
ピッパが俺を待っている。
ミシェルはこれから、王太子と知り合って、恋人になるらしい。
王城に居る相手に、一体どんな手管を使うつもりなのか。
知りたいような、知りたくないような……グレンジャーだった。
夏休みが終わり最終学年に進級すると、掌を返すように攻略対象者の全員がミシェルの側に行かなくなった。
ミシェルとの不貞の恋に走った馬鹿者、ウェズリー・ノースはやはりオスカーの義妹に婚約を破棄された。
今までは、基本的にミシェルの隣にはウェズリーが居た。
彼が隣に付けない時は、ウェズリーの友人がミシェルの側に居た。
それで、ミシェルは守られていた。
だが、彼等が居なくなったことで、女生徒達の遠慮がなくなった。
ミシェルとすれ違うと、彼女達は目と目を見合わせて嗤っていたりするらしい。
普通科校舎に居ないグレンジャーには、それを聞いてもどうすることも出来ない。
少し可哀想だと思うが、『もう付き合わない』と宣言してきたのは、ミシェルの方だ。
入学してきたオスカーの義妹に、食堂で文句をつけた、と言う噂も聞いた。
間に入ったウェズリーがふたりを引き離して、ミシェルを食堂から連れ出したらしい。
あのふたりは別れてないの、とまた噂になったが、熱病が治まったウェズリーと、グレンジャーは会って話をしている。
「あれは一体何だったんだろうな……」
自分でも分からない恋の病だった、とウェズリーは笑っていた。
しかし、すっかり冷めたからと言って、ロザリンド嬢との婚約をもう一度、とも思っていないらしい。
「ロージーには、本当に悪いことをしたよ。
有責で婚約破棄されて、ボロカス親にも言われたけどさ。
廃嫡されなくて、助かった。
つくづく俺なんかじゃなくなって、彼女にとったら却って良かった、と思うよ。
今は本当に……ロージーには、幼馴染みとして幸せになって欲しいんだ」
心残りはロージーのデビュタントのエスコートが出来なくなったこと、かな。
ウェズリーは寂しそうに、そう締めくくった。
恋じゃなくても、そんなに大切に婚約者のことを想っていたのなら。
だったら、何でミシェルに行った?
気持ちを抑えられなかった?
そう尋ねたグレンジャーに、ウェズリーは己の胸の辺りを指差した。
「自分でも分からない力が働いたみたいに。
ミシェルを一目見た時、ぐいって、心臓が掴まれた感じだったんだよ」
心臓が掴まれた、か……
男心は、よう分からん。
自分も男なのに、グレンジャーはそうピッパに、嘆いてみせた。
後、よく分からん、と言えばオスカーのことだ。
夏休みが始まる前に、例の『仮面祭りの夜、よろしくな』があったのに。
さっき、また魔法棟へやって来て『仮面祭り、約束忘れてないね?』と言ってくる。
一体この1年間で何回、その約束をさせられた?
俺は忘れてないよ?
忘れかけてるのは、お前だろ?
何度もそう言い掛けて、それでも言わなかったのは。
オスカーの様子が普通じゃない気がしたからだ。
だから、付き合うようになったピッパから、仮面祭りに誘われたけれど、オスカーと約束してるから、と断った。
『いいよ、オブライエンなら仕方ない、分かった』と物わかりの良い彼女に。
さすが、俺の彼女、と惚れ直すが、もうちょっと残念がってよ、とも思う。
そして、それから直ぐに王城でのデビュタントが開催され。
今年行かなかったことを、グレンジャーは少し後悔した。
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