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【サイドストーリー】 攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!

第12話

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 意外だった。
 オスカーからミシェルの名前が出た。


「お前が最近仲がいいミシェル・フライ嬢はどんなひとなんだ?」


 でも、よくよく考えたら意外でもない。
 ミシェルに骨抜きにされてるウェズリーは、オスカーの義妹の婚約者だ。
 気になるのは当然か。

 そうだ、意外なのは俺に聞いてくるからだ、と気付いた。
 オスカーなら、ウェズリー本人に聞いて、あいつの目を覚ましてやればいいのに。
 それ程彼が義妹を大切にしていることは、有名なのだから。



「ミシェルってなぁ、悪い子やないけど……
 思い込みが激しい、ってゆうかな~」


 適当に相槌を打った話だけれど、割りと一方的に思い込みと言うか、決めつけた感じの話をされたのだ。


「やたらと、今まで寂しかったよね?とか、お義父様と一度良く話してみたら?とか、勧めてくるからさぁ。
 なんや、それ、とか結構あるな~」

「グレン、親父殿と良くしゃべってんのにな」


 こうして彼女との会話を思い出すと、ミシェルはなかなか失礼なことを言ってたな、と思う。
 俺は週一だけど、ウェズリーは毎日あれに付き合ってるんだよなぁ。
 『してあげる』なんて言う女の子は、俺は嫌だな。
 恋は盲目だ。


「貴方の赤い瞳も私は気にしてない、ってゆうけど。
 俺も気にしてない、って~ゆわんけど」

 
 今更、この目の色を気にしたりしない。

 今、この赤い瞳は俺の自慢だ。

 適当に話を合わしていたけれど。
 それだけは、はっきりとミシェルに伝えたグレンジャーだった。





 そうやって、会いに来るミシェル・フライを適当に流しながら……
 秋が深まり、冬が訪れ。
 春を迎えて、夏が終われば……皆2年生になって。

 
 とうとう、ウェズリーとミシェルが恋人同士になった、らしい。
『夏休みにがんばってさ!』とウェズリーから報告を受けた。
 お前、それ大丈夫なん? と聞きたくなる浮かれ具合だ。



 これまで皆に愛想良くしていたミシェルも、ステディな彼が出来たことで、魔法科棟に顔を出すことも減って。
 グレンジャー的には喜ばしい限りだったが、オスカーの対応が気になった。


 オスカー・オブライエンは何度も言うが、この学年を仕切っている訳ではないが、皆が彼の動向を気にしていて。
 オスカーの大事な義妹を裏切ったウェズリーは、一体どうなる? と皆が興味津々だったが、意外とふたりの仲は以前と変わりないように見えていた。


 我慢出来ずに、オスカーに『ウェズリーどうよ?』と聞いてみた。


「ウェズリーは真剣でも、あっちの方はそうでもないし……
 いずれは振られるから……」


 あっちの方は、って? ミシェルの方は真剣じゃない?
 こう言うところがオスカーにはあって、どんな根拠があるのか知らないが、言い切ることがあって。

 前回は例の記憶改竄の魔法だった。
 グレンジャー本人も習ったことのない、使ったことのない記憶を書き換える魔法を、オスカーは『お前なら出来る』と言い切ったのだ。

 じゃあ、今回もオスカーは正しいのだろうか?
 今日もお互いしか見えていないように見える、ウェズリーとミシェルだが。
 彼女の方は本気じゃないのか?


「そんなことより、頼みがあるんだ。
 来年の仮面祭りの夜のことなんだけど」


 へ? 再来月の仮面祭りじゃなくて、来年の?
 来年の仮面祭り?

 今年の仮面祭りも2ヶ月先だ。
 それなのに、来年の話かよ、とグレンジャーは思った。


「俺にさ、魔法を掛けて貰いたくて……
 詳しくは追い追いに話すから、当日に会う場所はどこでもいいよ。
 グレンの予定だけは空けといてくれないかな?」

「ん、分かった、何の魔法掛けるかは、早めに言ってくれよ?
 出来ないことを言われても困るし」

「大丈夫、グレンなら出来る」


 随分と先の予定を入れられた。
 オスカーだから、何か考えがあるんだろうけれど……
 また、出来ると言い切られた。



 その後、その年の仮面祭りの前日に。
 来年髪の色を変えて欲しい、と言われて。
 やっぱり、来年なんだ……と思いながら、オスカーの魔法耐性を確認するために『視た』。


 彼には、既に魔法が掛けられていた。
 誰に掛けられたのかも、残っていた魔力の痕跡から分かった。
 

 強力な外部攻撃に対する保護魔法と、髪色を金髪から黒髪に変えていた。
 何故か、内部攻撃には効力を発揮しない、半端な保護魔法。

 
 
 その魔法を掛けたのは、グレンジャーの親父殿だった。

 視えた事実を、彼は。
 親友にも、養父にも、どちらにも伝えなかった。
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