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【サイドストーリー】 攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
第11話
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「また、魔法棟で何かあったら。
ミシェルのこと、よろしく頼むな?」
ウェズリーが彼女のことをよろしく頼むな、なんて言う。
そんな言い方で牽制しなくても、俺は手は出さないよ。
そりゃ綺麗だけど、肝心なのは相性だから。
ミシェルとは、そんなに相性良くないと思う。
ウェズリー、友情と言う名のミシェル包囲網を早くも張ったな。
騎士科担当はアランで、魔法科担当は俺ですか。
なりふり構ってねぇな。
「ありがとうグレンジャー、またね」
「じゃあな、グレンもこっちへ顔出してくれよ」
「おぉ……」
早くもグレンジャーに懐いたミシェルを追い立てるように、ウェズリーが高等部普通科棟へ戻っていく。
マークが謝罪するように、手刀を切る挨拶をした。
グレンジャーは、ややこしいのに関わってしまった自分を呪った。
そんなグレンジャーの思惑も知らず……
何故か、ミシェルはグレンジャーが気に入ったようで、あれから何度も魔法科棟へやって来た。
ここへ来る普通科の女子生徒は少なくて、躊躇い無しにグレンジャーの教室を訪れるミシェルは、すっかり有名人だ。
数少ない魔法科女子も、彼女が来るとピリピリするのか、不穏な波動が伝わってくる。
そのせいでミシェルが顔を出すと、グレンジャーが慌てて彼女の手を引いて出ていくので、それでまたクラスの女子はイラつく。
知り合った日から1週間に1回はやって来るミシェルに、とうとうグレンジャーは聞いた。
「何でこんなに何度も来る?」
「だってグレンジャーの方からは会いに来てくれないじゃない?
わたしはもっと、貴方に会いたいの」
何で? と思う。
特に楽しい会話なんかしてない。
今だってミシェルが来るまでは、実習で組んでいるフィリッパ・ギャレットと、魔法植物の成長過程について話し合いをしていたのに。
ミシェルが来たから、彼女はグレンジャーを置いて先に温室へ行ってしまった。
「ねぇ、さっき一緒に居た赤毛の女の子、貴方の恋人なの?
凄く仲良さそうだった」
焼いてきたとクッキーを差し出しながら、ミシェルが小首を傾げてプライバシーを暴こうとしてくる。
「魔法実習の相方なんだよ、ギャレットとは魔力の相性が良くてさ。
去年からずっと一緒に組んでるけど……
仲の良さなら、君とウェズリーには負けるよ。
今日はアイツは置いてきたの?」
何でもない風に話しているが、本当にグレンジャーとフィリッパとの魔力の相性は良くて。
彼女と組むと実力以上に力を発揮出来る気がしている。
他の女子と同じ様に名字で呼んでいるが、そろそろピッパ、と愛称で呼びたいグレンジャーだった。
「やだぁ、ウェズリーとはそんなんじゃないの!
一番仲良くしてくれるお友達なの。
他にも友達を紹介して貰ってて、皆といい友情を結べてるの」
ウェズリーからの紹介の友達は、君に手を出さない様に牽制されてるけどね?
本気でいいお友達ばっかりだと思ってるなら、それでいいか?
「グレンジャーって、孤児院出身なんでしょう?
わたし、慰問とか行ってるんだ。
喜んでくれる子供も多くてね、ねぇ、やっぱりグレンジャーも寂しかったよね?
あそこに居る孤児達には、何をしてあげたら喜ぶのかなぁ」
「……別に何も、してあげなくてもいいよ」
「わたしを引き取ったのは、叔父さんなんだけど。
グレンジャーのお義父様は、赤の他人でしょ?
色々難しいと思うけど、一度ちゃんと話してみたら?」
「……酔っぱらうと、すげー絡んでくるのが、最近ウザいね」
「貴方の赤い瞳は素敵だと思う。
わたしは全然気にならないし、人とは違う辛さも理解してあげられる。
わたしの前では、隠す必要はないからね」
「……この目は、俺の自慢だけどね」
何か、どうでもいいことをミシェルが話していて。
グレンジャーは貰ったクッキーを齧りつつ。
俺の話、ちゃんと聞いてないよな、と思いながらも返事をした。
少しだけでいいから魔法を見せて、と言われたけれど。
それはきちんと断った。
ミシェル・フライは、こちらが何かを許してしまうと、相手に対してどんどん欲求が増えていくタイプなのが分かりやすい。
少しだけ見せて、って何やねん。
ミシェルのこと、よろしく頼むな?」
ウェズリーが彼女のことをよろしく頼むな、なんて言う。
そんな言い方で牽制しなくても、俺は手は出さないよ。
そりゃ綺麗だけど、肝心なのは相性だから。
ミシェルとは、そんなに相性良くないと思う。
ウェズリー、友情と言う名のミシェル包囲網を早くも張ったな。
騎士科担当はアランで、魔法科担当は俺ですか。
なりふり構ってねぇな。
「ありがとうグレンジャー、またね」
「じゃあな、グレンもこっちへ顔出してくれよ」
「おぉ……」
早くもグレンジャーに懐いたミシェルを追い立てるように、ウェズリーが高等部普通科棟へ戻っていく。
マークが謝罪するように、手刀を切る挨拶をした。
グレンジャーは、ややこしいのに関わってしまった自分を呪った。
そんなグレンジャーの思惑も知らず……
何故か、ミシェルはグレンジャーが気に入ったようで、あれから何度も魔法科棟へやって来た。
ここへ来る普通科の女子生徒は少なくて、躊躇い無しにグレンジャーの教室を訪れるミシェルは、すっかり有名人だ。
数少ない魔法科女子も、彼女が来るとピリピリするのか、不穏な波動が伝わってくる。
そのせいでミシェルが顔を出すと、グレンジャーが慌てて彼女の手を引いて出ていくので、それでまたクラスの女子はイラつく。
知り合った日から1週間に1回はやって来るミシェルに、とうとうグレンジャーは聞いた。
「何でこんなに何度も来る?」
「だってグレンジャーの方からは会いに来てくれないじゃない?
わたしはもっと、貴方に会いたいの」
何で? と思う。
特に楽しい会話なんかしてない。
今だってミシェルが来るまでは、実習で組んでいるフィリッパ・ギャレットと、魔法植物の成長過程について話し合いをしていたのに。
ミシェルが来たから、彼女はグレンジャーを置いて先に温室へ行ってしまった。
「ねぇ、さっき一緒に居た赤毛の女の子、貴方の恋人なの?
凄く仲良さそうだった」
焼いてきたとクッキーを差し出しながら、ミシェルが小首を傾げてプライバシーを暴こうとしてくる。
「魔法実習の相方なんだよ、ギャレットとは魔力の相性が良くてさ。
去年からずっと一緒に組んでるけど……
仲の良さなら、君とウェズリーには負けるよ。
今日はアイツは置いてきたの?」
何でもない風に話しているが、本当にグレンジャーとフィリッパとの魔力の相性は良くて。
彼女と組むと実力以上に力を発揮出来る気がしている。
他の女子と同じ様に名字で呼んでいるが、そろそろピッパ、と愛称で呼びたいグレンジャーだった。
「やだぁ、ウェズリーとはそんなんじゃないの!
一番仲良くしてくれるお友達なの。
他にも友達を紹介して貰ってて、皆といい友情を結べてるの」
ウェズリーからの紹介の友達は、君に手を出さない様に牽制されてるけどね?
本気でいいお友達ばっかりだと思ってるなら、それでいいか?
「グレンジャーって、孤児院出身なんでしょう?
わたし、慰問とか行ってるんだ。
喜んでくれる子供も多くてね、ねぇ、やっぱりグレンジャーも寂しかったよね?
あそこに居る孤児達には、何をしてあげたら喜ぶのかなぁ」
「……別に何も、してあげなくてもいいよ」
「わたしを引き取ったのは、叔父さんなんだけど。
グレンジャーのお義父様は、赤の他人でしょ?
色々難しいと思うけど、一度ちゃんと話してみたら?」
「……酔っぱらうと、すげー絡んでくるのが、最近ウザいね」
「貴方の赤い瞳は素敵だと思う。
わたしは全然気にならないし、人とは違う辛さも理解してあげられる。
わたしの前では、隠す必要はないからね」
「……この目は、俺の自慢だけどね」
何か、どうでもいいことをミシェルが話していて。
グレンジャーは貰ったクッキーを齧りつつ。
俺の話、ちゃんと聞いてないよな、と思いながらも返事をした。
少しだけでいいから魔法を見せて、と言われたけれど。
それはきちんと断った。
ミシェル・フライは、こちらが何かを許してしまうと、相手に対してどんどん欲求が増えていくタイプなのが分かりやすい。
少しだけ見せて、って何やねん。
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