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【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
第51話
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「親父殿が君のリボンを使ったんだ」
グレンジャーが得意気に教えてくれた。
小屋に現れて助けに来てくれたのは3人。
オスカー、グレンジャー、そしてカーネル・オルコット。
その肩書きは魔法省長官。
グレンジャーの義父であり、オスカーの伯父。
あの日、ルシルはパニックになりながら通行人に助けを求めたそうだ。
何人かが、コルテス侯爵家と警備隊に知らせを走らせてくれた。
それから学苑は身分証を持った人物ではないと中には入れてはくれないので、息も絶え絶えなルシルを校門までおぶってくれたという。
そこで守衛に向かってルシルは、声を限りにオスカーの名前を叫んだのだ。
叫び続ける彼女を職員が取り押さえ、図書室に居たオスカーは学苑長の指示で王族専用室に軟禁された。
王家からの通達が学苑長には届いていて、王弟殿下の身の安全が最優先だからだ。
全く状況が分からず、イライラしたオスカーの元に現れたのがグレンジャーだった。
今日1日で、あちこちでコルテス兄妹の名前が口にされていた。
それは昼休みが始まる前には、別棟の魔法科校舎にまで届くほどだった。
そして、放課後。
義妹付きの侍女が校門でわめき散らして、オスカーは何処かに押し込められたと聞いた。
それで以前、オスカーから借りパクしたペンを利用して、転移魔法で彼の元に現れたのだ。
いきなり現れた友人にクールなオスカーが腰を抜かした。
非常時だとわかっているが、つい笑ってしまった。
「グレンジャー・オルコット、参上!」
「おま、お前何で!」
「これが魔法です!」
軟禁された事情が全くわかっていない彼にグレンジャーが手短に、事実と憶測を交えながら語った。
「ロージーが誘拐?」
「そんなことを叫んでたらしいよ?」
5年以上の付き合いで、いつも冷静なオスカー・オブライエンのこんな姿は見たことがない。
「お前のその魔法でロージーのところへ連れていけ」
「悪いな、俺は自分1人しか転移出来ないから親父殿のところへ助けを頼みに行く」
オスカーが手首に巻かれたリボンを見せた。
これが噂の『義妹からリボン強奪事件』のヤツだな、とグレンジャーは手を伸ばそうとしたが、オスカーはその手を背後に隠した。
「親父殿をここへ連れてきてくれ。
これを渡したら、俺を置いてお前達だけで飛ぶ気だろ?」
「うーん……」
言い当てられて、仕方なくグレンジャーは自宅へ飛んだ。
登校する時、徹夜明けで入れ違いに帰宅した親父殿には、まだ侯爵令嬢誘拐の一報は入っていないだろう。
王城からの知らせを受け取ればそちらを優先しなくてはならず、自由に動けなくなる。
多分まだベッドの中で熟睡中の親父殿を起こすのは至難の業だが、思い切りたたき起こすのも面白い。
わずか15分足らずでグレンジャーは親父殿を連れてきた。
オルコット長官の髪は乱れ、服装のボタンはかけ違っていて、睡眠不足の目は血走っていた。
「殿下はこの場で、お待ちください。
私と息子で行って参ります」
「この腕を切り落としてから、ですか?
私はこのリボンは、絶対誰にも渡しません!」
そう言うオスカーの瞳を見てカーネル・オルコットは彼も一緒に飛ぶことにした。
一度決めたら絶対に譲らない、そんな性格の亡き妹の面影が確かに見えたのだ。
妹の忘れ形見と義理の息子の暴走の責任は全て自分が負う、と覚悟を決めた。
妹のケリー・アンには何もしてやれず、田舎に下る甥にも何も出来なかった。
自分に出来たのは、その身を守ってやりたい、と魔法をかけただけ。
その魔法さえ中途半端だと、グレンジャーには指摘された。
完璧に内外からの攻撃に耐えられるよう、保護をかけたつもりだったのに。
「畏まりました。
リボンを拝見致します。
失礼致します」
そう言ってオスカーの手首を軽く掴んだカーネルのライトブラウンの瞳が赤く染まった。
オスカーは傍らのグレンジャーの方を見た。
グレンジャーは軽く笑い、自分の赤い瞳を指差した。
この魔力を秘めた赤い目があったから自分は親父殿に引き取られたのだ。
オスカーは甥だと聞いていたが、さっきは殿下と呼び掛けていた。
手元で育てられない甥っ子と同い年の自分が、選ばれたのは魔力のせいだけではないのかも知れない。
しかし、それをグダグダ思うのはグレンジャーの性に合わない。
俺は親父殿が気に入ってるし。
親父殿は俺を気に入っている。
ただそれだけで充分じゃないか?
そして3人はロザリンドのリボンから感じる彼女の波動を探しながら飛んだ。
グレンジャーが得意気に教えてくれた。
小屋に現れて助けに来てくれたのは3人。
オスカー、グレンジャー、そしてカーネル・オルコット。
その肩書きは魔法省長官。
グレンジャーの義父であり、オスカーの伯父。
あの日、ルシルはパニックになりながら通行人に助けを求めたそうだ。
何人かが、コルテス侯爵家と警備隊に知らせを走らせてくれた。
それから学苑は身分証を持った人物ではないと中には入れてはくれないので、息も絶え絶えなルシルを校門までおぶってくれたという。
そこで守衛に向かってルシルは、声を限りにオスカーの名前を叫んだのだ。
叫び続ける彼女を職員が取り押さえ、図書室に居たオスカーは学苑長の指示で王族専用室に軟禁された。
王家からの通達が学苑長には届いていて、王弟殿下の身の安全が最優先だからだ。
全く状況が分からず、イライラしたオスカーの元に現れたのがグレンジャーだった。
今日1日で、あちこちでコルテス兄妹の名前が口にされていた。
それは昼休みが始まる前には、別棟の魔法科校舎にまで届くほどだった。
そして、放課後。
義妹付きの侍女が校門でわめき散らして、オスカーは何処かに押し込められたと聞いた。
それで以前、オスカーから借りパクしたペンを利用して、転移魔法で彼の元に現れたのだ。
いきなり現れた友人にクールなオスカーが腰を抜かした。
非常時だとわかっているが、つい笑ってしまった。
「グレンジャー・オルコット、参上!」
「おま、お前何で!」
「これが魔法です!」
軟禁された事情が全くわかっていない彼にグレンジャーが手短に、事実と憶測を交えながら語った。
「ロージーが誘拐?」
「そんなことを叫んでたらしいよ?」
5年以上の付き合いで、いつも冷静なオスカー・オブライエンのこんな姿は見たことがない。
「お前のその魔法でロージーのところへ連れていけ」
「悪いな、俺は自分1人しか転移出来ないから親父殿のところへ助けを頼みに行く」
オスカーが手首に巻かれたリボンを見せた。
これが噂の『義妹からリボン強奪事件』のヤツだな、とグレンジャーは手を伸ばそうとしたが、オスカーはその手を背後に隠した。
「親父殿をここへ連れてきてくれ。
これを渡したら、俺を置いてお前達だけで飛ぶ気だろ?」
「うーん……」
言い当てられて、仕方なくグレンジャーは自宅へ飛んだ。
登校する時、徹夜明けで入れ違いに帰宅した親父殿には、まだ侯爵令嬢誘拐の一報は入っていないだろう。
王城からの知らせを受け取ればそちらを優先しなくてはならず、自由に動けなくなる。
多分まだベッドの中で熟睡中の親父殿を起こすのは至難の業だが、思い切りたたき起こすのも面白い。
わずか15分足らずでグレンジャーは親父殿を連れてきた。
オルコット長官の髪は乱れ、服装のボタンはかけ違っていて、睡眠不足の目は血走っていた。
「殿下はこの場で、お待ちください。
私と息子で行って参ります」
「この腕を切り落としてから、ですか?
私はこのリボンは、絶対誰にも渡しません!」
そう言うオスカーの瞳を見てカーネル・オルコットは彼も一緒に飛ぶことにした。
一度決めたら絶対に譲らない、そんな性格の亡き妹の面影が確かに見えたのだ。
妹の忘れ形見と義理の息子の暴走の責任は全て自分が負う、と覚悟を決めた。
妹のケリー・アンには何もしてやれず、田舎に下る甥にも何も出来なかった。
自分に出来たのは、その身を守ってやりたい、と魔法をかけただけ。
その魔法さえ中途半端だと、グレンジャーには指摘された。
完璧に内外からの攻撃に耐えられるよう、保護をかけたつもりだったのに。
「畏まりました。
リボンを拝見致します。
失礼致します」
そう言ってオスカーの手首を軽く掴んだカーネルのライトブラウンの瞳が赤く染まった。
オスカーは傍らのグレンジャーの方を見た。
グレンジャーは軽く笑い、自分の赤い瞳を指差した。
この魔力を秘めた赤い目があったから自分は親父殿に引き取られたのだ。
オスカーは甥だと聞いていたが、さっきは殿下と呼び掛けていた。
手元で育てられない甥っ子と同い年の自分が、選ばれたのは魔力のせいだけではないのかも知れない。
しかし、それをグダグダ思うのはグレンジャーの性に合わない。
俺は親父殿が気に入ってるし。
親父殿は俺を気に入っている。
ただそれだけで充分じゃないか?
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