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【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
第32話
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この1週間、オスカーは食欲がないようで食事を完食せずに下げさせる事が増えている。
夜もちゃんと眠れていないのか顔色も良くない。
何か悩み事があるのだろうけれど、彼は自分には何も話さないだろう……
コルテス侯爵夫人アメリアはため息をついた。
遠縁の伯爵家から養子縁組した義理の息子は、いつも穏やかな顔を見せているが、本心では何を考えているのかわからない。
彼の他人行儀な一面を目にする度に、夫の言うことなど聞かず、やはり赤ちゃんの時から私が育てるべきだった、と何度も後悔した。
表情には決して出さなかったが、彼女は心からオスカーの事を本当の息子のように案じていたし、自分の事を信頼して欲しいと思っていた。
遠縁のウェイン家の三男だとされていたオスカーは、本当はアメリアの親友だったケリー・アン・オルコットの忘れ形見だ。
ケリーは今際の床に駆けつけてくれたアメリアの手を取り、置いていく息子をお願いします、とその言葉のみを息が絶える直前まで。
何度も何度も繰り返した。
ケリーの兄のカーネル・オルコットは魔法省の次期長官になるだろうと噂されている非常に多忙な男だったし、未婚なので甥である赤ん坊のオスカーを育てるのは難しい状況だった。
亡き親友の願いに応えたかったアメリアは新婚間もない夫のクライド・オブライエン・コルテスにオスカーを養子に迎えたいと願い出た。
中等部の頃から交際していたクライドとアメリア、アメリアの親友ケリーと現国王陛下のローレンスを加えた4人で学生時代はいつも行動を共にしていた。
クライドにとってもケリーは大切な友人だったので、彼女の子供は可愛いし、行く末も気にかかる。
またそれに加えて、この先の政治的な意味で切り札になりそうなオスカーを養子にして迎える事に打算が働くのも、貴族ならば仕方なかった。
妻アメリアに異論はないクライドだったがオスカーの父親の事を考えると、今の時点でコルテス侯爵家に迎えるのは危険な気がした。
それでカーネル・オルコットと相談して、王都から遠く離れたマーカス伯領主のウェイン家に預けることにしたのだった。
そして密かにその旨をローレンスに伝えた。
当時、ローレンスは王太子で2人の王子を得て幸せの最中であった。
貴族間の均衡を保つ為に娶った側妃が産んだ下の第2王子はオスカーと同い年になる。
「色々と……お前達には苦労を掛けてしまい申し訳なかった。
ケリー・アンにも今更になるが、これ程早くに儚くなってしまうとは思ってもみなかった。
関係を公にしなかったことを何と詫びればいいのか……」
「彼女自身道ならぬ恋の行方は覚悟していた、とアメリアからは聞いております」
「……母上がご存命の間は」
「承知致しております。
遠方の我が遠縁の者にくれぐれも頼んでありますし、信頼する手の者を使用人として配置し、若君には保護魔法をオルコットが施しております」
クライドがオスカーを若君と呼んだのは。
不倫の恋に落ち、ケリーを身籠らせたのが国王陛下だったからだ。
つまりオスカーは王太子ローレンスにとって、親子ほど年の離れた弟ということになる。
ローレンスは王宮奥のプライベートエリアにクライド達と共に招き、『学苑の友人』と両親に紹介したケリーと父が恋愛関係になった事など、彼女がオスカーを身籠るまで気付くことはなかった。
政略だった両親の結婚が当初から良い関係ではないのは、周知の事実であったが。
それでも側妃や愛妾を持たず、謹厳実直と名高かった父が不惑の年齢を過ぎて迎えた『初恋』を、責めることは彼には出来なかった。
しかしながら王太子の立場上、身重のケリーを側妃に迎えたいと言った父を説得し、母からふたりの関係を隠すことに腐心した。
自分の敵と認識した者に対しては苛烈なまでの対応をする事で有名な王妃陛下が、息子の王太子と同い年の娘が産んだオスカーの存在を許すとは到底思えず。
クライド達は王妃陛下が亡くなるまでは、彼女の目の届かない田舎でオスカーを育てることにしたのだった。
父親の国王陛下が与えた名前は、オスカー・レイ・エリオット・ルーランド。
この先は、オスカー・ウェイン・マーカス。
その後は、オスカー・オブライエン・コルテス。
彼は父親の国王陛下が亡くなり、王太后陛下が世を去った12年後まで、マーカス領主ウェイン家の三男として過ごした。
国王陛下から受け継いだ紫の瞳は、瞳の色を変えるのは赤ん坊には危険だとそのままにしていたが、生来の金髪は伯父カーネルの魔法で黒く染められていた。
夜もちゃんと眠れていないのか顔色も良くない。
何か悩み事があるのだろうけれど、彼は自分には何も話さないだろう……
コルテス侯爵夫人アメリアはため息をついた。
遠縁の伯爵家から養子縁組した義理の息子は、いつも穏やかな顔を見せているが、本心では何を考えているのかわからない。
彼の他人行儀な一面を目にする度に、夫の言うことなど聞かず、やはり赤ちゃんの時から私が育てるべきだった、と何度も後悔した。
表情には決して出さなかったが、彼女は心からオスカーの事を本当の息子のように案じていたし、自分の事を信頼して欲しいと思っていた。
遠縁のウェイン家の三男だとされていたオスカーは、本当はアメリアの親友だったケリー・アン・オルコットの忘れ形見だ。
ケリーは今際の床に駆けつけてくれたアメリアの手を取り、置いていく息子をお願いします、とその言葉のみを息が絶える直前まで。
何度も何度も繰り返した。
ケリーの兄のカーネル・オルコットは魔法省の次期長官になるだろうと噂されている非常に多忙な男だったし、未婚なので甥である赤ん坊のオスカーを育てるのは難しい状況だった。
亡き親友の願いに応えたかったアメリアは新婚間もない夫のクライド・オブライエン・コルテスにオスカーを養子に迎えたいと願い出た。
中等部の頃から交際していたクライドとアメリア、アメリアの親友ケリーと現国王陛下のローレンスを加えた4人で学生時代はいつも行動を共にしていた。
クライドにとってもケリーは大切な友人だったので、彼女の子供は可愛いし、行く末も気にかかる。
またそれに加えて、この先の政治的な意味で切り札になりそうなオスカーを養子にして迎える事に打算が働くのも、貴族ならば仕方なかった。
妻アメリアに異論はないクライドだったがオスカーの父親の事を考えると、今の時点でコルテス侯爵家に迎えるのは危険な気がした。
それでカーネル・オルコットと相談して、王都から遠く離れたマーカス伯領主のウェイン家に預けることにしたのだった。
そして密かにその旨をローレンスに伝えた。
当時、ローレンスは王太子で2人の王子を得て幸せの最中であった。
貴族間の均衡を保つ為に娶った側妃が産んだ下の第2王子はオスカーと同い年になる。
「色々と……お前達には苦労を掛けてしまい申し訳なかった。
ケリー・アンにも今更になるが、これ程早くに儚くなってしまうとは思ってもみなかった。
関係を公にしなかったことを何と詫びればいいのか……」
「彼女自身道ならぬ恋の行方は覚悟していた、とアメリアからは聞いております」
「……母上がご存命の間は」
「承知致しております。
遠方の我が遠縁の者にくれぐれも頼んでありますし、信頼する手の者を使用人として配置し、若君には保護魔法をオルコットが施しております」
クライドがオスカーを若君と呼んだのは。
不倫の恋に落ち、ケリーを身籠らせたのが国王陛下だったからだ。
つまりオスカーは王太子ローレンスにとって、親子ほど年の離れた弟ということになる。
ローレンスは王宮奥のプライベートエリアにクライド達と共に招き、『学苑の友人』と両親に紹介したケリーと父が恋愛関係になった事など、彼女がオスカーを身籠るまで気付くことはなかった。
政略だった両親の結婚が当初から良い関係ではないのは、周知の事実であったが。
それでも側妃や愛妾を持たず、謹厳実直と名高かった父が不惑の年齢を過ぎて迎えた『初恋』を、責めることは彼には出来なかった。
しかしながら王太子の立場上、身重のケリーを側妃に迎えたいと言った父を説得し、母からふたりの関係を隠すことに腐心した。
自分の敵と認識した者に対しては苛烈なまでの対応をする事で有名な王妃陛下が、息子の王太子と同い年の娘が産んだオスカーの存在を許すとは到底思えず。
クライド達は王妃陛下が亡くなるまでは、彼女の目の届かない田舎でオスカーを育てることにしたのだった。
父親の国王陛下が与えた名前は、オスカー・レイ・エリオット・ルーランド。
この先は、オスカー・ウェイン・マーカス。
その後は、オスカー・オブライエン・コルテス。
彼は父親の国王陛下が亡くなり、王太后陛下が世を去った12年後まで、マーカス領主ウェイン家の三男として過ごした。
国王陛下から受け継いだ紫の瞳は、瞳の色を変えるのは赤ん坊には危険だとそのままにしていたが、生来の金髪は伯父カーネルの魔法で黒く染められていた。
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