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【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
第22話
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今オスカーが爽やかな笑顔でさらっと言った事に、父の顔はひきつり、母は慌てて立ち上がった。
「オスカー! 貴方、何を言ってるの!」
母が義兄の右手を握ったので。
私だって、とロザリンドも急いでオスカーの左手を掴んだ。
2人とも『こいつは絶対に逃がさない!』と手を握ると言うよりも、両手を拘束したような格好だ。
女性2人から左右を抑え込まれて、オスカーが義父に助けを求める瞳を向けたので、コルテス侯爵は咳払いをした。
「……ロザリンドに後を継がせればいい、などと。
お前はどうする気なんだ?」
「マーカスのウェイン家に戻るか、王都で仕事を探すか致しますが。
学苑を卒業するまでは、こちらでお世話になることをお許しいただけますと……」
オスカーが実家の名前を出したので、ロザリンドは彼の左腕を抱え込んだ。
「この家を継ぐのは、お義兄様よ!
マーカスに帰るなんて、絶対にダメよ!」
反対側の母の方を伺えば、母も同様にオスカーの右腕を抱き締めている。
いつも、侯爵夫人として泰然とした態度の母の姿からは思いもしない必死さが見えた。
「ロージーだってこう言ってるのよ?
バカな事を言うのは、もうやめて」
「……ですが、義母上。
今すぐにロージーの相手を探すとなると、相手に余程のメリットがないと」
「その通りだけど!
破格の持参金を持たせたら解決するわ!」
(だから! あんたら2人!
余程のメリット、って! 破格の持参金、って!
何気に私の事をディスってるよね!)
ロザリンドは少しムカついていたので、つい口走ってしまった。
両親は養子にした出来の良いオスカーを、手放したくはない。
武闘派ロザリンドには、しばらくは縁談は来ない。
だったら、解決法は1つじゃないか。
「お義兄様が私と結婚してくれたら、いいのよ!」
「は?」
「ね、これで全部解決!」
驚いて固まってしまった家族3人の顔を見回して、ロザリンドは微笑んだ。
勢いで言ってしまったけれど。
3人一緒に話を切り出せて良かった。
個別に説得するなんて、時間がどれだけかかるのだろう、とその道のりを想像してげんなりしていたのだ。
今からオスカーとの婚約を認めて貰えれば、ミシェルとの可能性は完全に潰せる。
これは神様がくれたタイミングだったのだ。
「いやいや、何言って……俺達は義理だけど兄妹だよ?
そんな……ねぇ義父上?」
「……」
「おかしな話ですよ……ね、義母上?」
「……」
驚きながらも脳内であれこれ考え始めた様に見える両親だったが、肝心のオスカーはぶんぶんと頭を振っている。
未だに両腕を義母と義妹に拘束されて、椅子に座る彼が自由に動かせるのは頭だけ。
「お義兄様、そんなに私がお嫌ですか……」
「い、嫌とかじゃなくてっ!
ロージー、そんなに焦らなくても、まだ15歳なんだし?
噂なんて、直ぐに無くなるよ?
そしたら、君には縁談がじゃんじゃん来るんじゃ……」
なんだし? じゃんじゃん?
焦っているのはオスカーの方で。
この世界の男性なら絶対に使わない言葉が、彼の口をついて出てきた。
もしかして。
オスカー……貴方も、なの?
貴方もこの世界に転生した……元は『乙花』好きな日本人女性なの?
推しのオスカーの前世が女性だったかもしれない事に、彼の転生者疑惑よりも衝撃を受けたロザリンドは。
誰にもこの秘密は漏らさないと誓っていたのに、自分からアビゲイルに手紙を送った。
『乙花』の件で、お話があります 、と。
「オスカー! 貴方、何を言ってるの!」
母が義兄の右手を握ったので。
私だって、とロザリンドも急いでオスカーの左手を掴んだ。
2人とも『こいつは絶対に逃がさない!』と手を握ると言うよりも、両手を拘束したような格好だ。
女性2人から左右を抑え込まれて、オスカーが義父に助けを求める瞳を向けたので、コルテス侯爵は咳払いをした。
「……ロザリンドに後を継がせればいい、などと。
お前はどうする気なんだ?」
「マーカスのウェイン家に戻るか、王都で仕事を探すか致しますが。
学苑を卒業するまでは、こちらでお世話になることをお許しいただけますと……」
オスカーが実家の名前を出したので、ロザリンドは彼の左腕を抱え込んだ。
「この家を継ぐのは、お義兄様よ!
マーカスに帰るなんて、絶対にダメよ!」
反対側の母の方を伺えば、母も同様にオスカーの右腕を抱き締めている。
いつも、侯爵夫人として泰然とした態度の母の姿からは思いもしない必死さが見えた。
「ロージーだってこう言ってるのよ?
バカな事を言うのは、もうやめて」
「……ですが、義母上。
今すぐにロージーの相手を探すとなると、相手に余程のメリットがないと」
「その通りだけど!
破格の持参金を持たせたら解決するわ!」
(だから! あんたら2人!
余程のメリット、って! 破格の持参金、って!
何気に私の事をディスってるよね!)
ロザリンドは少しムカついていたので、つい口走ってしまった。
両親は養子にした出来の良いオスカーを、手放したくはない。
武闘派ロザリンドには、しばらくは縁談は来ない。
だったら、解決法は1つじゃないか。
「お義兄様が私と結婚してくれたら、いいのよ!」
「は?」
「ね、これで全部解決!」
驚いて固まってしまった家族3人の顔を見回して、ロザリンドは微笑んだ。
勢いで言ってしまったけれど。
3人一緒に話を切り出せて良かった。
個別に説得するなんて、時間がどれだけかかるのだろう、とその道のりを想像してげんなりしていたのだ。
今からオスカーとの婚約を認めて貰えれば、ミシェルとの可能性は完全に潰せる。
これは神様がくれたタイミングだったのだ。
「いやいや、何言って……俺達は義理だけど兄妹だよ?
そんな……ねぇ義父上?」
「……」
「おかしな話ですよ……ね、義母上?」
「……」
驚きながらも脳内であれこれ考え始めた様に見える両親だったが、肝心のオスカーはぶんぶんと頭を振っている。
未だに両腕を義母と義妹に拘束されて、椅子に座る彼が自由に動かせるのは頭だけ。
「お義兄様、そんなに私がお嫌ですか……」
「い、嫌とかじゃなくてっ!
ロージー、そんなに焦らなくても、まだ15歳なんだし?
噂なんて、直ぐに無くなるよ?
そしたら、君には縁談がじゃんじゃん来るんじゃ……」
なんだし? じゃんじゃん?
焦っているのはオスカーの方で。
この世界の男性なら絶対に使わない言葉が、彼の口をついて出てきた。
もしかして。
オスカー……貴方も、なの?
貴方もこの世界に転生した……元は『乙花』好きな日本人女性なの?
推しのオスカーの前世が女性だったかもしれない事に、彼の転生者疑惑よりも衝撃を受けたロザリンドは。
誰にもこの秘密は漏らさないと誓っていたのに、自分からアビゲイルに手紙を送った。
『乙花』の件で、お話があります 、と。
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