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【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
第17話
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こうしてオスカーが次期侯爵としてオブライエン家に迎え入れられて、5年の歳月が過ぎた。
彼の記憶では、1ヶ月後の仮面祭りでヒロインのミシェルと恋に落ちることになっていて……
正直なところオスカーは、どうにかしてそれをなくすことは出来ないだろうかと、悩んでいたのだった。
次期侯爵になるのだから早く婚約者を決めたい、と急かす義理の両親(特に義母) には、学苑を卒業してからとお願いした。
『周囲に後継はこいつで大丈夫と、認めて貰える成績を取りますので』と、もっともらしい理由をつけたが、本当はミシェルとのラブ展開のせいだ。
決められた運命がそうさせるのなら、下手に婚約者など作って泣かせることはしたくなかった。
俺はあのミシェルの恋人になんか、なりたくない。
それがオスカーの本音だ。
自分がオスカーに転生した以上は、逃れられない事なのだろうか?
異世界転生、異世界恋愛がテーマのマンガを主にしたコミック誌の編集者だったので、『物語の強制力』については知っている。
この『乙女は愛を知って花開く~底辺令嬢ですが王太子殿下に溺愛されています?~』(略して『乙花』) は、ヒロインのミシェルがフライ男爵家に引き取られ、王立貴族学苑に入学するところから始まるので、彼が15歳で高等部に進学するまでは、ミシェルは現れない。
それでストーリーを気にすることなく過ごすことが出来たので、オスカーは出来ればこのままで、ミシェルと関わることなく居たかったのだ。
何故なら、ミカミヒロキは物語のヒロインが好きではなかったから。
明るく健気な設定のせいか、『今、笑うとこじゃないよね?』な場面でも笑っているヒロインだった。
始めはオスカーも令嬢達から邪険にされているミシェルを守るべきかと思ったのだが、ウェズリーや他の攻略対象者達が次々と彼女の盾になり始めたので俺はいいよな、と静観することにした。
ミシェルから離れて、彼女を観察してみると『私はいいこでしょ』アピールが鼻についた。
ウェズリーと別れてからは、作り笑いが減って少し雰囲気も変わったが、苦手なタイプなのは変わらない。
ホントに俺はこんな女と、運命の恋に落ちてしまうのか?
テンプレの逆ハーヒロインなんて、どれだけ見た目が良かろうと全然タイプじゃない。
婚約者が居ようと、身分の違いがあろうと、お構いなしに距離を詰める女。
他人のコンプレックスを頼んでもないのに指摘して、理解者の顔をする女。
ミカミからすると、自分は愛してもいない癖に男達に囲まれて逆ハーレムを作るミシェルは、実際には関わりたくないヒロインだったのだ。
だからこそ。
原作者のホナミには第1章はテンプレで。
第2章からはそれをひっくり返しませんか?と提案したのだった。
チカ先生はミカミの提案に、面白いと言ってくれたが。
肝心のホナミは考え込んでしまった。
「ファンになってくださった方達が離れていくんじゃ?」
「別にミシェルに辛い思いをさせるのではありません。
愛される一方の受け身のヒロインから、愛を求めてアクティブに行動するヒロインに成長させるんです」
王太子とオスカーの両方から愛されて揺れ惑うヒロインではなく。
最初はガンガン王太子にアタックするが、相手を間違っていたと知るや、彼の手を振り切って、オスカーの元に走るヒロインにしましょう、とミカミは力説した。
「そんな変わり身の早いヒロインなんて、燃えそうじゃないですか……」
ホナミは原作者なのに、ミカミに反対する時や注文をつける時も遠慮がちに言う。
それがいつも、ミカミにはやりきれない思いをさせていることを、勿論ホナミ自身は気付いていない。
『俺を怒らせる心配なんかしないでいいよ』と言いたかった。
『腹を立てた男が皆、女性に手をあげる訳じゃありませんよ』と。
初めての顔合わせの日、カフェオレを飲む為にホナミがマスクをずらしたので口元の傷が見えた。
『カップル間のあれこれなんだから、こっちからは何も聞けないよ。
ミカミさんも見て見ぬふりをして』
手洗いに彼女が立った後、隣に居たチカ先生がミカミに注意をした。
ホナミと会うたびに、密かに彼女の傷を確認した。
以前より数が増えていると、見えない場所はどれ程酷いのか、と怒りがこみあげて。
減っていると他人事なのに安堵した。
ホナミに対するその気持ちが愛なのか、判断は付かなかったが。
彼女をどうにかして救えないかと思っていた。
彼女の方から相談なりしてくれたら、直ぐに動けるようにDVの救済関連を検索していた。
そんな男から離れてしまえばいい、と言ってしまいそうな自分を抑えていた。
彼女はどうなったのだろうか?
事故ったバスから無事に助け出されたのだろうか?
そして、殴る男から逃れることは出来ただろうか?
もし、君もこの世界に転生しているなら。
君が理想だと言っていたオスカーに、俺はなれたよ。
もし、君に巡り合えたなら。
今世こそ、その手を取ることが出来るだろうか……
彼の記憶では、1ヶ月後の仮面祭りでヒロインのミシェルと恋に落ちることになっていて……
正直なところオスカーは、どうにかしてそれをなくすことは出来ないだろうかと、悩んでいたのだった。
次期侯爵になるのだから早く婚約者を決めたい、と急かす義理の両親(特に義母) には、学苑を卒業してからとお願いした。
『周囲に後継はこいつで大丈夫と、認めて貰える成績を取りますので』と、もっともらしい理由をつけたが、本当はミシェルとのラブ展開のせいだ。
決められた運命がそうさせるのなら、下手に婚約者など作って泣かせることはしたくなかった。
俺はあのミシェルの恋人になんか、なりたくない。
それがオスカーの本音だ。
自分がオスカーに転生した以上は、逃れられない事なのだろうか?
異世界転生、異世界恋愛がテーマのマンガを主にしたコミック誌の編集者だったので、『物語の強制力』については知っている。
この『乙女は愛を知って花開く~底辺令嬢ですが王太子殿下に溺愛されています?~』(略して『乙花』) は、ヒロインのミシェルがフライ男爵家に引き取られ、王立貴族学苑に入学するところから始まるので、彼が15歳で高等部に進学するまでは、ミシェルは現れない。
それでストーリーを気にすることなく過ごすことが出来たので、オスカーは出来ればこのままで、ミシェルと関わることなく居たかったのだ。
何故なら、ミカミヒロキは物語のヒロインが好きではなかったから。
明るく健気な設定のせいか、『今、笑うとこじゃないよね?』な場面でも笑っているヒロインだった。
始めはオスカーも令嬢達から邪険にされているミシェルを守るべきかと思ったのだが、ウェズリーや他の攻略対象者達が次々と彼女の盾になり始めたので俺はいいよな、と静観することにした。
ミシェルから離れて、彼女を観察してみると『私はいいこでしょ』アピールが鼻についた。
ウェズリーと別れてからは、作り笑いが減って少し雰囲気も変わったが、苦手なタイプなのは変わらない。
ホントに俺はこんな女と、運命の恋に落ちてしまうのか?
テンプレの逆ハーヒロインなんて、どれだけ見た目が良かろうと全然タイプじゃない。
婚約者が居ようと、身分の違いがあろうと、お構いなしに距離を詰める女。
他人のコンプレックスを頼んでもないのに指摘して、理解者の顔をする女。
ミカミからすると、自分は愛してもいない癖に男達に囲まれて逆ハーレムを作るミシェルは、実際には関わりたくないヒロインだったのだ。
だからこそ。
原作者のホナミには第1章はテンプレで。
第2章からはそれをひっくり返しませんか?と提案したのだった。
チカ先生はミカミの提案に、面白いと言ってくれたが。
肝心のホナミは考え込んでしまった。
「ファンになってくださった方達が離れていくんじゃ?」
「別にミシェルに辛い思いをさせるのではありません。
愛される一方の受け身のヒロインから、愛を求めてアクティブに行動するヒロインに成長させるんです」
王太子とオスカーの両方から愛されて揺れ惑うヒロインではなく。
最初はガンガン王太子にアタックするが、相手を間違っていたと知るや、彼の手を振り切って、オスカーの元に走るヒロインにしましょう、とミカミは力説した。
「そんな変わり身の早いヒロインなんて、燃えそうじゃないですか……」
ホナミは原作者なのに、ミカミに反対する時や注文をつける時も遠慮がちに言う。
それがいつも、ミカミにはやりきれない思いをさせていることを、勿論ホナミ自身は気付いていない。
『俺を怒らせる心配なんかしないでいいよ』と言いたかった。
『腹を立てた男が皆、女性に手をあげる訳じゃありませんよ』と。
初めての顔合わせの日、カフェオレを飲む為にホナミがマスクをずらしたので口元の傷が見えた。
『カップル間のあれこれなんだから、こっちからは何も聞けないよ。
ミカミさんも見て見ぬふりをして』
手洗いに彼女が立った後、隣に居たチカ先生がミカミに注意をした。
ホナミと会うたびに、密かに彼女の傷を確認した。
以前より数が増えていると、見えない場所はどれ程酷いのか、と怒りがこみあげて。
減っていると他人事なのに安堵した。
ホナミに対するその気持ちが愛なのか、判断は付かなかったが。
彼女をどうにかして救えないかと思っていた。
彼女の方から相談なりしてくれたら、直ぐに動けるようにDVの救済関連を検索していた。
そんな男から離れてしまえばいい、と言ってしまいそうな自分を抑えていた。
彼女はどうなったのだろうか?
事故ったバスから無事に助け出されたのだろうか?
そして、殴る男から逃れることは出来ただろうか?
もし、君もこの世界に転生しているなら。
君が理想だと言っていたオスカーに、俺はなれたよ。
もし、君に巡り合えたなら。
今世こそ、その手を取ることが出来るだろうか……
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