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【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
第12話
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今日も気分の悪い1日が始まる。
学苑のドブスモブキャラ達にバカにされる1日が。
夏休みに入る前に、いわゆる攻略対象者達にはお別れを言った。
皆が皆、タイプの違うイケメンで性格も良かったから、別れを言うのは辛い選択だった……
だけどもう思い出したから。
貴方達とは友人としても、付き合えない。
将来の王太子妃に相応しく身辺を綺麗にしておかないと。
そう思って、ウェズリーと別れた翌日に放課後の教室に彼等を集めて皆に打ち明けたのに。
「ホントは私はこの世界の人間じゃないの。
西暦2022年の地球の日本で死んで、この世界に転生したわけ」
異世界転生のシステムや西暦や地球、日本をうまく説明出来るかと悩んでいたが、集めたイケメン達は何も聞かず、お互いに顔を見合わせただけだった。
「ここはマンガの世界なの。
貴方達はそのマンガの登場人物で、ヒロインの逆ハーレム要員っていう役割なの。
私はそのヒロインに転生したのよ。
ストーリー上、これから王太子と知り合って恋人になるから、もう貴方達とは過ごせないの。
……ごめんね?」
「……あぁ、そうなんだ。
色々と大変だと思うけど、がんばってね。
ミシェル、これからも君の幸せを祈っているよ」
皆を代表するように立ち上がって、あっさりそう言ったのは魔法省長官の養子のグレンジャーだった。
彼の孤児院育ちの寂しさや膨大な魔力を持つゆえの疎外感を癒したのはヒロインである自分だった。
グレンジャーはそれだけ言うと、教室から出ていった。
その後次々と、それぞれお別れの言葉を口にして皆帰っていき……ミシェルだけが残された。
逆ハーレム要員と、教えてしまって気を悪くしたのだろうか、彼等は振り返りもしなかった。
優しくしてくれた彼等には、自分なりの誠意をみせたつもりだった。
それなのに、イケメン達が自分を見る目は『イタいモノ』を見る目だ、と感じた。
長い夏休みになった。
去年はウェズリーが週に2回はあちこちへ連れ出してくれた。
まだ恋人同士ではなかったからキスは勿論の事、手を繋ぐこともなかったが、両片思いの微妙な距離の甘酸っぱい関係にドキドキして、会える日の前夜は眠れない程だった。
その彼とも夏休み前にお別れしたので、当然お誘いはもう無い。
記憶が戻る前のミシェルが行っていた孤児院や救貧院への慰問(という名のお手伝い) も、何の見返りもないことに気付いて行くのをやめた。
平民だった頃に親しくしていた友人達も、この先を考えたら余計な関係だと切ることにした。
それで誰とも繋がらない夏休みになったが、孤独だと自分で思えば負けだ、と淋しさを認めたくなかった。
夏休みが終わり最終学年に進級すると、掌を返すように攻略対象者の全員がミシェルの側に来なくなった。
何人かはそれでも残ると思っていた。
皆は口には出さなくても、ヒロインに執着しているはずだから。
王太子との真実の愛に生きても、彼等はミシェルの幸せを願ってくれて、いつまでも見守っていてくれるのだ、と思い込んでいた。
彼等が居なくなったことで、モブ達の遠慮がなくなった。
彼女とすれ違うと、奴等は目と目を見合わせて嗤っていた。
授業で隣り合わせの席であろうと、必要以上に間を空けられた。
ウェズリーの元婚約者の義兄が、彼女を避けるような素振りをあからさまにするようになったことが、元々あった状況に拍車をかけているように思えた。
ウェズリーとの会話中に侯爵令嬢が倒れた、と噂に聞いたけど。
(彼の目の前で気を失うなんて、わざとらし過ぎるじゃない!)
コルテス嬢は演技で倒れたかも知れないのに、自分のせいにされて腹立ちしかない。
どうせ身分を笠に着た奴等と同じドブスモブなのに、と会ったことはなかったが、本当に『ムカつく女』だ。
麗しのオスカー様がミシェルに対して、塩対応なのは以前からだったが。
義妹の敵認定されたようで、今では視線もくれなくなったのも『ムカつく女』が、そうするように義兄に言ったのだろう。
だけど、それも後少しの我慢だ。
こんな最低の毎日はもうすぐ終わる。
何故なら、ヒロインはこの王国の王太子に愛されるのだから。
仮面祭りの夜、ミシェルの運命は新たに始まるのだから。
学苑のドブスモブキャラ達にバカにされる1日が。
夏休みに入る前に、いわゆる攻略対象者達にはお別れを言った。
皆が皆、タイプの違うイケメンで性格も良かったから、別れを言うのは辛い選択だった……
だけどもう思い出したから。
貴方達とは友人としても、付き合えない。
将来の王太子妃に相応しく身辺を綺麗にしておかないと。
そう思って、ウェズリーと別れた翌日に放課後の教室に彼等を集めて皆に打ち明けたのに。
「ホントは私はこの世界の人間じゃないの。
西暦2022年の地球の日本で死んで、この世界に転生したわけ」
異世界転生のシステムや西暦や地球、日本をうまく説明出来るかと悩んでいたが、集めたイケメン達は何も聞かず、お互いに顔を見合わせただけだった。
「ここはマンガの世界なの。
貴方達はそのマンガの登場人物で、ヒロインの逆ハーレム要員っていう役割なの。
私はそのヒロインに転生したのよ。
ストーリー上、これから王太子と知り合って恋人になるから、もう貴方達とは過ごせないの。
……ごめんね?」
「……あぁ、そうなんだ。
色々と大変だと思うけど、がんばってね。
ミシェル、これからも君の幸せを祈っているよ」
皆を代表するように立ち上がって、あっさりそう言ったのは魔法省長官の養子のグレンジャーだった。
彼の孤児院育ちの寂しさや膨大な魔力を持つゆえの疎外感を癒したのはヒロインである自分だった。
グレンジャーはそれだけ言うと、教室から出ていった。
その後次々と、それぞれお別れの言葉を口にして皆帰っていき……ミシェルだけが残された。
逆ハーレム要員と、教えてしまって気を悪くしたのだろうか、彼等は振り返りもしなかった。
優しくしてくれた彼等には、自分なりの誠意をみせたつもりだった。
それなのに、イケメン達が自分を見る目は『イタいモノ』を見る目だ、と感じた。
長い夏休みになった。
去年はウェズリーが週に2回はあちこちへ連れ出してくれた。
まだ恋人同士ではなかったからキスは勿論の事、手を繋ぐこともなかったが、両片思いの微妙な距離の甘酸っぱい関係にドキドキして、会える日の前夜は眠れない程だった。
その彼とも夏休み前にお別れしたので、当然お誘いはもう無い。
記憶が戻る前のミシェルが行っていた孤児院や救貧院への慰問(という名のお手伝い) も、何の見返りもないことに気付いて行くのをやめた。
平民だった頃に親しくしていた友人達も、この先を考えたら余計な関係だと切ることにした。
それで誰とも繋がらない夏休みになったが、孤独だと自分で思えば負けだ、と淋しさを認めたくなかった。
夏休みが終わり最終学年に進級すると、掌を返すように攻略対象者の全員がミシェルの側に来なくなった。
何人かはそれでも残ると思っていた。
皆は口には出さなくても、ヒロインに執着しているはずだから。
王太子との真実の愛に生きても、彼等はミシェルの幸せを願ってくれて、いつまでも見守っていてくれるのだ、と思い込んでいた。
彼等が居なくなったことで、モブ達の遠慮がなくなった。
彼女とすれ違うと、奴等は目と目を見合わせて嗤っていた。
授業で隣り合わせの席であろうと、必要以上に間を空けられた。
ウェズリーの元婚約者の義兄が、彼女を避けるような素振りをあからさまにするようになったことが、元々あった状況に拍車をかけているように思えた。
ウェズリーとの会話中に侯爵令嬢が倒れた、と噂に聞いたけど。
(彼の目の前で気を失うなんて、わざとらし過ぎるじゃない!)
コルテス嬢は演技で倒れたかも知れないのに、自分のせいにされて腹立ちしかない。
どうせ身分を笠に着た奴等と同じドブスモブなのに、と会ったことはなかったが、本当に『ムカつく女』だ。
麗しのオスカー様がミシェルに対して、塩対応なのは以前からだったが。
義妹の敵認定されたようで、今では視線もくれなくなったのも『ムカつく女』が、そうするように義兄に言ったのだろう。
だけど、それも後少しの我慢だ。
こんな最低の毎日はもうすぐ終わる。
何故なら、ヒロインはこの王国の王太子に愛されるのだから。
仮面祭りの夜、ミシェルの運命は新たに始まるのだから。
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