【完結】原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!

Mimi

文字の大きさ
上 下
3 / 78
【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!

第3話

しおりを挟む
 ロザリンドが自分を脳内で痛め付ける算段をしているとは思いもせずに、ウェズリーは能天気に話続ける。


「ミシェルは自分がこの世界に転生してきたことに気がついたらしいんだ。
 それで、本当に自分が結ばれるべき相手が王太子殿下だと思い出したんだって」

 何をペラペラと話しているの、とロザリンドは理解に苦しんだ。
 そして、冒頭の言葉になった。


「君は転生って、言葉を知っている?」

「て、転生?」

「俺も何言ってるのかわからなくてさ、ミシェルが言うには、俺達が今生きているこの世界は少女マンガの世界なんだって」

「少女マンガ? 何?」


 少女は勿論わかるが、マンガって?
 ロザリンドにとって、転生もマンガも初めて聞く言葉だった。


「なんかさ、人物画とか風景画とか、ごっちゃになってて。
 小説の挿絵ってあるだろ?
 あの小さい絵を繋げて、その絵とセリフで物語を進めていく絵本、みたいなものだって。
 コミ、コミックとかも言ってたな……」



 説明するウェズリーにも良くわかっていないようなので、それを聞かされるロザリンドはますますわからない。


「とにかく、俺たちの王国も人間も皆、そのマンガの中の世界なんだって。
 で、ミシェルはそのマンガが大好きだったニホンジンだったらしい」

「はぁあ?」

「昨日転倒して頭を打って、急にそれを思い出して、自分がその話のヒロインに転生していることに気がついたそうなんだ」

「はぁあ? はぁ?」


 何を言ってるのか、訳がわからない!

 ロザリンドには、自らをヒロインと言う浮気女の言い分も、それを言われるまま伝えるバカなウェズリーの言いたいことも理解出来なかった。

 だから、つい。
 行儀の悪い相槌をわざとした。


「その、はぁあ? って、やめてよ。
 令嬢らしさに欠けるよ」


 ウェズリーが笑いながら言ったその言葉が、ロザリンドのモヤりを刺激した。
 何が可笑しくてニヤニヤしているのか。
 やめて、なんて言える立場か。

 そうか、やめて欲しいなら。
 もう一回言ってやる。


「はぁあ? そんなこと貴方に言われる筋合いないでしょ?
 私がどんな言葉使いしようと、貴方には言われたくない」

「……」

「大体、何様のつもりよ?
 真実の愛だか何だか知らないけど、浮気は浮気でしょ?
 謝るのが先じゃないの? 」

「……」

「転生とかマンガとか、ワケわからない言葉で誤魔化そうとするなんて貴方の方が男らしくないわ」

「……」

「貴方の浮気は有名な話よ?
 お茶会の話のネタによく聞かされたもの。
 私が知らないからと貴方は何食わぬ顔してウチに来てたわよね。
 なんて面の皮の厚い男なんだろうと……」


 笑顔じゃなくなったウェズリーが何も言わないのをいいことにロザリンドはどんどんぶちまけた。
 一度言い出せば、どんどん言葉が溢れ出てきた。
 文字通り、溢れるようにウェズリーに対する罵倒の言葉が浮かんでくる。


 自分に対しての文句が止まらないロザリンドの様子に、最初は目を見開いていたウェズリーだったが、さすがの彼も顔色が変わりつつあった。
 それでもロザリンドの口は止まらなかった。

 それで、彼女は今まで自分が言いたいことを我慢していたことに、はじめて気付いた。
 別にこの婚約なんかなくなったっていい。
 言える時に全部吐き出さなくては、後から後悔すると思った。


「相手に振られたから、ですって?
 良くも私にその話をする気になったわね。
 それを聞いて私が喜ぶとでも思ってるの?」

「なあ、ロージー……」

「私はずっと我慢してたのよ。
 貴方の事を愛してるから我慢してた訳じゃないわよ。
 私から愛されていると思っていたのなら、それは思い上がりと言うものよ」

「そんなことは思ってないけど!
 ロージー、もうそろそろその辺でやめろ」

「やめないわよ、命令なんかしないでよ」

「命令? 違う、これは警告して……」


 脅すようにウェズリーが人差し指を突きつけてくる。
 自分に向かって目の前に突き出された指に、抑えられない怒りが沸き上がった。


「指さすなよ、バカ」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~

Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。 その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。 そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた── ──はずだった。 目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた! しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。 そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。 もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは? その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー…… 4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。 そして時戻りに隠された秘密とは……

イリス、今度はあなたの味方

さくたろう
恋愛
 20歳で死んでしまったとある彼女は、前世でどハマりした小説、「ローザリアの聖女」の登場人物に生まれ変わってしまっていた。それもなんと、偽の聖女として処刑される予定の不遇令嬢イリスとして。  今度こそ長生きしたいイリスは、ラスボス予定の血の繋がらない兄ディミトリオスと死ぬ運命の両親を守るため、偽の聖女となって処刑される未来を防ぐべく奮闘する。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

いつの間にかの王太子妃候補

しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。 遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。 王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。 「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」 話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。 話せるだけで十分幸せだった。 それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。 あれ? わたくしが王太子妃候補? 婚約者は? こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*) アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。 短編です、ハピエンです(強調) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。

処理中です...