【完結】原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!

Mimi

文字の大きさ
上 下
2 / 78
【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!

第2話

しおりを挟む
 ロザリンドがふたりに負けず劣らずの美少女であったなら、風当たりはましだったかもしれないが、残念なことにロザリンドは凡庸な容姿の少女だった。

 自分に自信なさげな大人しい侯爵令嬢。
 それが多くの人が受けるロザリンドの印象だったが。

 彼女の本当の性格は、大人しい令嬢などではなかった。
 物事を少し斜めから見るような。
 人物の裏側を探り、皮肉な言葉を心中で呟くような。
 そのような少女であった。


 だから顔色を変えてしまって、周囲のお姉様達を悦ばせてしまったことに悔しさを感じたが、直ぐに思い直した。

(いいわ、ウェズリーの浮気に傷付いたと、思われた方が同情されやすいわよね……彼には悪者になって貰いましょう)


 お姉様方は、強さより弱さを見せる少女の姿を望んでいるだろうから。
 今ここから、私に対しての風当たりは少しは弱くなるだろう、とふんだのだ。


「そうなんですね……
 私、何も知らなくて」

「お可哀想なロザリンド様。
 ノース様とは、お会いになっていらっしゃらないの?」

「そうなんです……」

 答えたロザリンドの声は弱々しく聞こえたが、それは嘘だった。
 その前日もウェズリーはコルテスの邸へ遊びに来て、楽しく夕食を共にしていた。


 学苑では恋人と仲睦まじく過ごしているようだがウェズリーのロザリンドに対する態度は以前と変わりなく、お姉様方から教えてもらうまで、ロザリンドは彼の浮気に気付いていなかった。


 ウェズリーの性格上、浮気を隠しながら婚約者ともうまくやろうとして行動しているのではなく、あまり深く考えずにそうなっているのだろう、と思われた。

 ウェズリーには、元来そういうところがある。
 やる事、言う事、全て悪気がないのだ。
 だから余計に始末が悪いとも言える。



 馬鹿者ウェズリーの事だから。
『真実の愛』なんて口にしても、どれ程のものかわからない。
 それは学生の間だけのことなのかもしれない。
 このまま、彼はロザリンドと結婚をするつもりなのだろう。

 だから大事にしたくなくて、お義兄様は黙っているのだろうか、とロザリンドは考えた。



 なるほど……
 ウェズリーとオスカーのふたりが何も言わないつもりなら、私からは何も聞くまい、とロザリンドは決めた。


 その代わり……その時が来たら。
 ウェズリーなり、オスカーなり、どちらかが私にその事を告げたなら。
 お父様にお願いして、どんな目に合わせてやろうかしら。


 そして、今。
 その時がやってきた。


 ウェズリーがとうとう!  ようやく!
 浮気を告白したのだ!
 ……だが、やはりウェズリーはウェズリーだった。

 申し訳ないと頭を下げるわけでもなく、自分の行動を悔いている風でもなく。
 いつものおしゃべりと変わらない軽い調子で。
 浮気相手との別離を婚約者に語ってみせた。


「俺は真実の愛の相手だと思ってたんだけど、ミシェルにとっては違ってたみたいなんだ。
 それで昨日さようなら、と言われてね」

「……ミシェルとおっしゃるのが、貴方の浮気相手?」

「いやぁ、俺は浮気じゃなかったんだけどね」


 浮気じゃなかったのなら、本気だったの?
 ロザリンドとの婚約解消を願い出るわけでもなく。
 良くもまあ、そんなセリフが吐けるわね、とロザリンドは婚約者の顔を見た。

 その上自分から別れたのではなく振られた、とウェズリーは言った。
 情けないと自分で思わないの、とイラついた。


「別れたのなら黙っていたら良かったのに、どうしてわざわざその話を私にするの?」

「だって、入学したら君の耳に入る話だろう?
 その前に伝えとかなきゃ、と思ってさ」


 おあいにくさま、もう聞かされた話よ。
 このバカ(ウェズリー) 、どうしてくれようか?
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...