上 下
13 / 13

天使に愛を届けたい ~クリストファー~

しおりを挟む
多分、もうすぐ俺は死ぬだろう。

10年間想い続けたグレイスと無事に結婚出来た。
今が人生のピークかもしれない。 

幼い頃から、俺は最高の地点で神様に連れて行かれる様な気がしていたのだ。


「……旦那様、お身体の具合が?」

目の前の天使の瞳が揺れた。
たまらん、可憐だ。


「身体は健康だよ」

「では何処かの戦いに赴かれる、とか?」

「戦争の火種はないし、俺は文官だから最終王都決戦とかになれば、出陣かな」

「……それで、何で死ぬ、なんて仰せになるのですか?」

ちょっと眉をひそめる天使もよき。


「幸せ過ぎて、かな。
 俺は君と結婚出来て幸せだから!」

一瞬、天使の表情が消えて、すぐに真っ赤になった。



そう俺は昨夜、俺に誓った。
何時神様に召されても良いように。
伝えられなかった、と後悔をしないように。
グレイスに愛を、この想いを届けよう、と。

7歳年下の彼女に恥ずかしがってどうするのだ。
俺は筋金入りの片想いマスターだぞ。
俺の気持ちを知ったやつは、皆気持ち悪そうにしたけれど、俺は貫いたんだ。

これからは本人にそれを、毎日伝えていく、そう誓ったんだ。


 ◇◇◇


「私、昨夜は貴方を愛するつもりはありませんでした」

「そうか、いいよ」

「いいんですか?」

「俺はずっと片想いを続けるだけで、いいよ」




「……ずっと、じゃないかも」

グレイスが小さな声で呟く。


「俺からもお願いしていい?」

「何でしょう?」

「旦那様って呼ばないで」

「……」

「旦那様って柄じゃないから」

「じ、じゃあ、クリストファー様?」

「様は要らない、俺もグレイス様って呼んでないし。
 ただのクリストファーで」

「……判りました。
 クリストファー、どうぞよろしくお願い致します」

「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します、グレイス」


 ◇◇◇


朝食を食べ終わった彼女が、スケスケを着替えたいと言ったので、俺は客室を出た。

さすがに今日はおねだりしないが、いつか天使が俺に許してくれる夜が来たら、彼女が言うところのスケスケを。
是非とも、もう一度着て欲しい。



白い結婚の話は今夜しよう。
君の事が何より大切なんだ。
愛してる、と何回でも繰り返すよ。

殿下とイーサンのことも聞いて貰いたい。
昔から俺と一緒に、幼い君の笑顔を見てきたから。
ふたりとも君の事を、大事な妹みたいに思ってる。



俺にはグレイスに聞いて欲しい話は山とあるが、それも徐々に話さないと、彼女がパンクしてしまう。


何せ10年だ。
話したいことは尽きない。

俺の人生のピークは、横ばい状態で何年も続くだろう。
今日から俺が死ぬまで、これまでのこと、これからのこと、今のこと。
毎日少しずつ想いを、言葉にして伝えていこう。


まずは、俺が選んでしまった壁紙を見せて一緒に笑おう。
そして、サンプルのカタログから彼女の好みで選んで貰おう。


母と妹には『天使ちゃん』と本人に向かって呼ぶな、と言っているが。
多分カリーナは、ここぞの時を狙って、ぶち込んで来そうだ。


父に注意された様に、運命や後光の話は様子を見てからだ。


でも。
君は俺の天使、の話は隠さない。
絶対、誰かが嬉しそうに楽しそうにグレイスにばらす。
その前に自分から言わないとな。



それから。
何であの、一番遠い客室に入って貰ったか説明しよう。


ウチではあの客室は
『天使の間』と名付けられているから、と。



    おわり




 *****



最終話まで、お付き合いくださいまして
ありがとうございました

『俺はずっと片想いを続けるだけ』に続きます!
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(29件)

くーみん
2023.04.07 くーみん

登録作品欄から読みに来ました

とても微笑ましくて、さだまさしの「関白失脚」や「親父の一番長い日」を思い出しました😊

これから続編を読みに行ってきます☺

Mimi
2023.04.07 Mimi

くーみん様

ご感想ありがとうございます❣️

クリスとグレイス、及びこの物語の人物達、
これからも大切に書いていきたい彼等です。

また、ご感想いただけましたら嬉しいです♪

解除
conn
2022.12.12 conn

まずはこちらから遡らせていただきました。
何これ!?めっちゃ面白いですね。
旦那様の言葉一つ一つがおもしろすぎます。
すかさず続編に行かせていただきます!

Mimi
2022.12.12 Mimi

conn様

図々しい感想クレクレにお応えくださり、ありがとうございます😃💕 

処女作が『初恋の~』でして、書いてる本人のメンタルが⤵️になった時に、そこから逃げたくて書いたお話でした。
続編はこのふたりから離れがたくて、完結後直ぐに書きました。

続けてお楽しみいただけますように✨✨✨



解除
高校生の母
2022.12.12 高校生の母

ロリロリ、お好みです(*˘︶˘*).。.:*♡
それでは、続編に行かせていただきます!

Mimi
2022.12.12 Mimi

高校生の母様

ご感想ありがとうございます!
続編もおまけも、楽しんでいただけますように💗

どうぞよろしくお願い致します!

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

【完結】婚約から始まる恋愛結婚

水仙あきら
恋愛
「婚約を解消しましょう。私ではあなたの奥方にはなれそうもありませんから」 貧乏貴族のセレスティアにはものすごく横柄な婚約者がいる。そんな彼も最近ではずいぶん優しくなってきたと思ったら、ある日伯爵令嬢との浮気が発覚。そこでセレスティアは自ら身を引こうとするのだが…?前向き娘とツンデレ男のすれ違い恋物語。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

お金のために氷の貴公子と婚約したけど、彼の幼なじみがマウントとってきます

恋愛
キャロライナはウシュハル伯爵家の長女。 お人好しな両親は領地管理を任せていた家令にお金を持ち逃げされ、うまい投資話に乗って伯爵家は莫大な損失を出した。 お金に困っているときにその縁談は舞い込んできた。 ローザンナ侯爵家の長男と結婚すれば損失の補填をしてくれるの言うのだ。もちろん、一も二もなくその縁談に飛び付いた。 相手は夜会で見かけたこともある、女性のように線が細いけれど、年頃の貴族令息の中では断トツで見目麗しいアルフォンソ様。 けれど、アルフォンソ様は社交界では氷の貴公子と呼ばれているぐらい無愛想で有名。 おまけに、私とアルフォンソ様の婚約が気に入らないのか、幼馴染のマウントトール伯爵令嬢が何だか上から目線で私に話し掛けてくる。 この婚約どうなる? ※ゆるゆる設定 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでご注意ください

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。