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天使に愛を届けたい ~クリストファー~
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多分、もうすぐ俺は死ぬだろう。
10年間想い続けたグレイスと無事に結婚出来た。
今が人生のピークかもしれない。
幼い頃から、俺は最高の地点で神様に連れて行かれる様な気がしていたのだ。
「……旦那様、お身体の具合が?」
目の前の天使の瞳が揺れた。
たまらん、可憐だ。
「身体は健康だよ」
「では何処かの戦いに赴かれる、とか?」
「戦争の火種はないし、俺は文官だから最終王都決戦とかになれば、出陣かな」
「……それで、何で死ぬ、なんて仰せになるのですか?」
ちょっと眉をひそめる天使もよき。
「幸せ過ぎて、かな。
俺は君と結婚出来て幸せだから!」
一瞬、天使の表情が消えて、すぐに真っ赤になった。
そう俺は昨夜、俺に誓った。
何時神様に召されても良いように。
伝えられなかった、と後悔をしないように。
グレイスに愛を、この想いを届けよう、と。
7歳年下の彼女に恥ずかしがってどうするのだ。
俺は筋金入りの片想いマスターだぞ。
俺の気持ちを知ったやつは、皆気持ち悪そうにしたけれど、俺は貫いたんだ。
これからは本人にそれを、毎日伝えていく、そう誓ったんだ。
◇◇◇
「私、昨夜は貴方を愛するつもりはありませんでした」
「そうか、いいよ」
「いいんですか?」
「俺はずっと片想いを続けるだけで、いいよ」
「……ずっと、じゃないかも」
グレイスが小さな声で呟く。
「俺からもお願いしていい?」
「何でしょう?」
「旦那様って呼ばないで」
「……」
「旦那様って柄じゃないから」
「じ、じゃあ、クリストファー様?」
「様は要らない、俺もグレイス様って呼んでないし。
ただのクリストファーで」
「……判りました。
クリストファー、どうぞよろしくお願い致します」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します、グレイス」
◇◇◇
朝食を食べ終わった彼女が、スケスケを着替えたいと言ったので、俺は客室を出た。
さすがに今日はおねだりしないが、いつか天使が俺に許してくれる夜が来たら、彼女が言うところのスケスケを。
是非とも、もう一度着て欲しい。
白い結婚の話は今夜しよう。
君の事が何より大切なんだ。
愛してる、と何回でも繰り返すよ。
殿下とイーサンのことも聞いて貰いたい。
昔から俺と一緒に、幼い君の笑顔を見てきたから。
ふたりとも君の事を、大事な妹みたいに思ってる。
俺にはグレイスに聞いて欲しい話は山とあるが、それも徐々に話さないと、彼女がパンクしてしまう。
何せ10年だ。
話したいことは尽きない。
俺の人生のピークは、横ばい状態で何年も続くだろう。
今日から俺が死ぬまで、これまでのこと、これからのこと、今のこと。
毎日少しずつ想いを、言葉にして伝えていこう。
まずは、俺が選んでしまった壁紙を見せて一緒に笑おう。
そして、サンプルのカタログから彼女の好みで選んで貰おう。
母と妹には『天使ちゃん』と本人に向かって呼ぶな、と言っているが。
多分カリーナは、ここぞの時を狙って、ぶち込んで来そうだ。
父に注意された様に、運命や後光の話は様子を見てからだ。
でも。
君は俺の天使、の話は隠さない。
絶対、誰かが嬉しそうに楽しそうにグレイスにばらす。
その前に自分から言わないとな。
それから。
何であの、一番遠い客室に入って貰ったか説明しよう。
ウチではあの客室は
『天使の間』と名付けられているから、と。
おわり
*****
最終話まで、お付き合いくださいまして
ありがとうございました
『俺はずっと片想いを続けるだけ』に続きます!
10年間想い続けたグレイスと無事に結婚出来た。
今が人生のピークかもしれない。
幼い頃から、俺は最高の地点で神様に連れて行かれる様な気がしていたのだ。
「……旦那様、お身体の具合が?」
目の前の天使の瞳が揺れた。
たまらん、可憐だ。
「身体は健康だよ」
「では何処かの戦いに赴かれる、とか?」
「戦争の火種はないし、俺は文官だから最終王都決戦とかになれば、出陣かな」
「……それで、何で死ぬ、なんて仰せになるのですか?」
ちょっと眉をひそめる天使もよき。
「幸せ過ぎて、かな。
俺は君と結婚出来て幸せだから!」
一瞬、天使の表情が消えて、すぐに真っ赤になった。
そう俺は昨夜、俺に誓った。
何時神様に召されても良いように。
伝えられなかった、と後悔をしないように。
グレイスに愛を、この想いを届けよう、と。
7歳年下の彼女に恥ずかしがってどうするのだ。
俺は筋金入りの片想いマスターだぞ。
俺の気持ちを知ったやつは、皆気持ち悪そうにしたけれど、俺は貫いたんだ。
これからは本人にそれを、毎日伝えていく、そう誓ったんだ。
◇◇◇
「私、昨夜は貴方を愛するつもりはありませんでした」
「そうか、いいよ」
「いいんですか?」
「俺はずっと片想いを続けるだけで、いいよ」
「……ずっと、じゃないかも」
グレイスが小さな声で呟く。
「俺からもお願いしていい?」
「何でしょう?」
「旦那様って呼ばないで」
「……」
「旦那様って柄じゃないから」
「じ、じゃあ、クリストファー様?」
「様は要らない、俺もグレイス様って呼んでないし。
ただのクリストファーで」
「……判りました。
クリストファー、どうぞよろしくお願い致します」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します、グレイス」
◇◇◇
朝食を食べ終わった彼女が、スケスケを着替えたいと言ったので、俺は客室を出た。
さすがに今日はおねだりしないが、いつか天使が俺に許してくれる夜が来たら、彼女が言うところのスケスケを。
是非とも、もう一度着て欲しい。
白い結婚の話は今夜しよう。
君の事が何より大切なんだ。
愛してる、と何回でも繰り返すよ。
殿下とイーサンのことも聞いて貰いたい。
昔から俺と一緒に、幼い君の笑顔を見てきたから。
ふたりとも君の事を、大事な妹みたいに思ってる。
俺にはグレイスに聞いて欲しい話は山とあるが、それも徐々に話さないと、彼女がパンクしてしまう。
何せ10年だ。
話したいことは尽きない。
俺の人生のピークは、横ばい状態で何年も続くだろう。
今日から俺が死ぬまで、これまでのこと、これからのこと、今のこと。
毎日少しずつ想いを、言葉にして伝えていこう。
まずは、俺が選んでしまった壁紙を見せて一緒に笑おう。
そして、サンプルのカタログから彼女の好みで選んで貰おう。
母と妹には『天使ちゃん』と本人に向かって呼ぶな、と言っているが。
多分カリーナは、ここぞの時を狙って、ぶち込んで来そうだ。
父に注意された様に、運命や後光の話は様子を見てからだ。
でも。
君は俺の天使、の話は隠さない。
絶対、誰かが嬉しそうに楽しそうにグレイスにばらす。
その前に自分から言わないとな。
それから。
何であの、一番遠い客室に入って貰ったか説明しよう。
ウチではあの客室は
『天使の間』と名付けられているから、と。
おわり
*****
最終話まで、お付き合いくださいまして
ありがとうございました
『俺はずっと片想いを続けるだけ』に続きます!
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とても微笑ましくて、さだまさしの「関白失脚」や「親父の一番長い日」を思い出しました😊
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ご感想ありがとうございます❣️
クリスとグレイス、及びこの物語の人物達、
これからも大切に書いていきたい彼等です。
また、ご感想いただけましたら嬉しいです♪
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何これ!?めっちゃ面白いですね。
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図々しい感想クレクレにお応えくださり、ありがとうございます😃💕
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