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天使のことは秘密じゃない ~クリストファー~
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23歳にもなって情けない。
グレイスと約束した前日は、めちゃくちゃ気分が高揚するのに、帰ってくると自己嫌悪でのめり込みそうになった。
何でか知らんが、俺は彼女の前では喋れなくなるのだ。
いい加減、婚約も成立したのだから彼女に慣れればいいのに
約束の日に現れる彼女は、俺が覚えているより。
何倍も何十倍も何百倍も何千……、可愛い過ぎて、心臓がもたない。
ヘタな所を見せて嫌われたくない俺は、結婚式までデートの回数をセーブすることにした。
夫婦の寝室と彼女の部屋の用意は、力を入れた。
ところが。
完成間近の部屋を見て、俺は愕然とした。
なんだ、これは!
可愛い彼女にはピンクが似合う、と思って自分なりに吟味した壁紙が!
何とも言えず下品な代物で、自分の頭をかきむしった。
かきむしる、なんて実際にしてる奴いないだろ、と思っていたが。
人は自分が仕出かしてしまったことに耐えられないと、頭をかきむしるのだ……
少なくとも俺は。
気がついたら、背後に母と妹が立っていた。
「私、何度もお兄様に言ったわよね?
あれでいいの?って」
確かにカリーナからは何度か、夫婦の寝室を確認せよ、と言われた。
だが仕事が山積みで、結婚してから長い休暇が欲しかった俺は、それを優先して、完成してからのお楽しみにしよう、と改装作業をチェックしていなかった。
「まあ変わったセンスだと思ったけれど。
貴方ちょっとねぇ、アレだし」
俺は母の事は敬愛しているが、今の、ちょっとねぇアレだし発言は聞き流すべきか?
母と妹は着々と進む改装に、俺のセンスを疑いながらも、
『はりきって本人の好みで決めたのだから、口を挟むまい』とふたりで見て見ぬ振りをしていたらしい。
「どうするの、クリス?
作業してる人に確認したら、やり直しの時間は取れないそうよ。
結婚式までには、無理じゃないの」
母は過ぎたことをうるさく言う人ではないので、淡々と事実を語る。
それはそれで、俺の心を削る。
「大体ね、サンプルって小さいんだから、それが壁紙の大きさになったらどうなるか位、考えるべきよね」
妹に馬鹿にされても、今の俺は弱々しくぴよぴよと鳴くしか出来ない……
「一番いい客室に取り敢えず、入って貰って」
「客室? お兄様、貴方の部屋から遠いのよ?」
カリーナは騒いだが、母は仕方なさそうに同意してくれた。
「夫婦のお部屋が用意出来なかった、なんて。
情けなくて、リーヴァイスの方達には知られたくないわ。
天使ちゃんには、お部屋の事は式当日の朝にでも、きちんと謝るのよ」
母も最近は妹の影響から、天使ちゃんと呼び始めた。
「貴方の口から言うのよ、いい?
新婚夫婦の部屋の事に口出しをする姑と小姑、とは思われたくないの」
◇◇◇
「たまらんなぁ、幼妻~」
「そんないやらしい言い方するな、俺の天使だぞ」
仕事の合間に、イーサンには時々からかわれた。
俺達は留学時には、王太子殿下の近習として、帰国してからは側近として、共に働いている。
初等部の頃からの付き合いなので、かれこれ15年以上になる。
当然、俺の天使グレイスのことも知っている。
最初教えた時は、ドン引きされた。
俺達は14歳で、放課後の教室で。
学園じゃ誰が好みか、の話になったのだ。
中等部には誰もいないと答えた俺に、殿下とイーサンは顔を見合わせた。
「高等部?クリスは年上が好みか?」
「初等部の1年に居るんだ」
「へっ?」
へっ、なんて言う王太子殿下は初めてだった。
「お前、何言ってんの?」
俺にからかわれたと思ったのか、イーサンの声が大きくなった。
「B組のアデライン・リーヴァイスの妹なんだけど。
去年、初めて見かけて」
「……」
「……クリス、何で喋ったの?
秘密にしてていいんだよ?」
殿下はお優しいが、グレイスへの気持ちは別に秘密にすることでもないので、喋ったんだけどな。
グレイスと約束した前日は、めちゃくちゃ気分が高揚するのに、帰ってくると自己嫌悪でのめり込みそうになった。
何でか知らんが、俺は彼女の前では喋れなくなるのだ。
いい加減、婚約も成立したのだから彼女に慣れればいいのに
約束の日に現れる彼女は、俺が覚えているより。
何倍も何十倍も何百倍も何千……、可愛い過ぎて、心臓がもたない。
ヘタな所を見せて嫌われたくない俺は、結婚式までデートの回数をセーブすることにした。
夫婦の寝室と彼女の部屋の用意は、力を入れた。
ところが。
完成間近の部屋を見て、俺は愕然とした。
なんだ、これは!
可愛い彼女にはピンクが似合う、と思って自分なりに吟味した壁紙が!
何とも言えず下品な代物で、自分の頭をかきむしった。
かきむしる、なんて実際にしてる奴いないだろ、と思っていたが。
人は自分が仕出かしてしまったことに耐えられないと、頭をかきむしるのだ……
少なくとも俺は。
気がついたら、背後に母と妹が立っていた。
「私、何度もお兄様に言ったわよね?
あれでいいの?って」
確かにカリーナからは何度か、夫婦の寝室を確認せよ、と言われた。
だが仕事が山積みで、結婚してから長い休暇が欲しかった俺は、それを優先して、完成してからのお楽しみにしよう、と改装作業をチェックしていなかった。
「まあ変わったセンスだと思ったけれど。
貴方ちょっとねぇ、アレだし」
俺は母の事は敬愛しているが、今の、ちょっとねぇアレだし発言は聞き流すべきか?
母と妹は着々と進む改装に、俺のセンスを疑いながらも、
『はりきって本人の好みで決めたのだから、口を挟むまい』とふたりで見て見ぬ振りをしていたらしい。
「どうするの、クリス?
作業してる人に確認したら、やり直しの時間は取れないそうよ。
結婚式までには、無理じゃないの」
母は過ぎたことをうるさく言う人ではないので、淡々と事実を語る。
それはそれで、俺の心を削る。
「大体ね、サンプルって小さいんだから、それが壁紙の大きさになったらどうなるか位、考えるべきよね」
妹に馬鹿にされても、今の俺は弱々しくぴよぴよと鳴くしか出来ない……
「一番いい客室に取り敢えず、入って貰って」
「客室? お兄様、貴方の部屋から遠いのよ?」
カリーナは騒いだが、母は仕方なさそうに同意してくれた。
「夫婦のお部屋が用意出来なかった、なんて。
情けなくて、リーヴァイスの方達には知られたくないわ。
天使ちゃんには、お部屋の事は式当日の朝にでも、きちんと謝るのよ」
母も最近は妹の影響から、天使ちゃんと呼び始めた。
「貴方の口から言うのよ、いい?
新婚夫婦の部屋の事に口出しをする姑と小姑、とは思われたくないの」
◇◇◇
「たまらんなぁ、幼妻~」
「そんないやらしい言い方するな、俺の天使だぞ」
仕事の合間に、イーサンには時々からかわれた。
俺達は留学時には、王太子殿下の近習として、帰国してからは側近として、共に働いている。
初等部の頃からの付き合いなので、かれこれ15年以上になる。
当然、俺の天使グレイスのことも知っている。
最初教えた時は、ドン引きされた。
俺達は14歳で、放課後の教室で。
学園じゃ誰が好みか、の話になったのだ。
中等部には誰もいないと答えた俺に、殿下とイーサンは顔を見合わせた。
「高等部?クリスは年上が好みか?」
「初等部の1年に居るんだ」
「へっ?」
へっ、なんて言う王太子殿下は初めてだった。
「お前、何言ってんの?」
俺にからかわれたと思ったのか、イーサンの声が大きくなった。
「B組のアデライン・リーヴァイスの妹なんだけど。
去年、初めて見かけて」
「……」
「……クリス、何で喋ったの?
秘密にしてていいんだよ?」
殿下はお優しいが、グレイスへの気持ちは別に秘密にすることでもないので、喋ったんだけどな。
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