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面倒くさいことは苦手です! ~グレイス~
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旦那様からは『待って』と名前を呼ばれました。
昨年婚約して、お約束してお会いした時も(ほんの数回です)
式の前にお顔を合わせた時も、私の名前を呼ばれた事は皆無でしたので、ひょっとしたら知らないのでは、と思っていたのですが。
名前を呼ばれたのに、振り返りもしなかった私です。
旦那様のあの言葉があったとはいえ、新床から逃げ出したのです。
(格下の伯爵家出身の妻が、侯爵家の嫡男の夫を拒否した、
そうなるのかしら?)
(今からでも、旦那様の所へ戻り、傷付けられた新妻の演技を再開した方が?)
ぐるぐると考えましたが、結局。
もう今夜はいいや、と結論を出しました。
私は長い間考えるのが、面倒で苦手なのです。
あのプライドの高そうな旦那様が、『白い結婚』を宣言されて、ショックで飛び出していった新妻を。
客室まで追いかけて、コトに及ぶとは思えません。
(そうよ、私は悪くない。
結婚式だっていうのに笑顔を見せない旦那様。
申し込んでくださった結婚なのに、夫婦の寝室だって、用意されていなかった)
(そうだ、そうだ、私は悪くない!
ちゃんとお風呂で磨いてもらって、こんなヒラヒラだって、嫌いなのに我慢した)
朝早くから起こされて。
1日満足に食べていませんでした。
披露宴だって、目の前に並べられたご馳走に手を出せなくて。
お客様に御祝いのお言葉を戴きながら。
私は虚ろに笑うしか出来なくて。
頭のなかは、『食べたい食べたい食べたい』しか……
それなのに、隣の席では。
旦那様は、思うがまま酒池肉林を繰り広げられて。
(いやいや、決して肉林はしていなかったけれども)
早めに席を立たされて、宴から退いた私は、これで何か食べられる!と喜んだのに。
そのまま、お風呂で磨きたてられて。
口にしたのは、お風呂上がりの果実水のみ。
奥様付き?メイドから差し出された夜着は。
ヒラヒラの付いたスケスケ。
そんな屈辱的で羞恥の塊に、上からガウンを羽織って。
メイドの案内で、いくつもの角を曲がり長い廊下を歩いて。
旦那様の寝室にたどり着いたのです。
そして『どーぞ、お召し上がりになって』状態で待ってた私に。
待たせた旦那様は、私に叫ばれました。
「君とは、白い結婚だ!」と。
それなのに直ぐ様、侯爵家の跡継ぎ?
理解出来ません。
取り敢えず、今夜は免れましたが……
明日は逃げられないでしょう。
対策を練ろうと、ふかふかのベッドに飛び込みました。
そのつもりだったのに。
お夜食を頼む事も出来なくなったのが辛い。
私の頭のなかは『お腹空いた空いた空いた』ばっかりで。
(この恨み、忘れまじ)
空腹と……
慌ただしかった1日の疲れで、気が昂っていたくせに。
私は割りとすぐに、熟睡してしまったのです。
昨年婚約して、お約束してお会いした時も(ほんの数回です)
式の前にお顔を合わせた時も、私の名前を呼ばれた事は皆無でしたので、ひょっとしたら知らないのでは、と思っていたのですが。
名前を呼ばれたのに、振り返りもしなかった私です。
旦那様のあの言葉があったとはいえ、新床から逃げ出したのです。
(格下の伯爵家出身の妻が、侯爵家の嫡男の夫を拒否した、
そうなるのかしら?)
(今からでも、旦那様の所へ戻り、傷付けられた新妻の演技を再開した方が?)
ぐるぐると考えましたが、結局。
もう今夜はいいや、と結論を出しました。
私は長い間考えるのが、面倒で苦手なのです。
あのプライドの高そうな旦那様が、『白い結婚』を宣言されて、ショックで飛び出していった新妻を。
客室まで追いかけて、コトに及ぶとは思えません。
(そうよ、私は悪くない。
結婚式だっていうのに笑顔を見せない旦那様。
申し込んでくださった結婚なのに、夫婦の寝室だって、用意されていなかった)
(そうだ、そうだ、私は悪くない!
ちゃんとお風呂で磨いてもらって、こんなヒラヒラだって、嫌いなのに我慢した)
朝早くから起こされて。
1日満足に食べていませんでした。
披露宴だって、目の前に並べられたご馳走に手を出せなくて。
お客様に御祝いのお言葉を戴きながら。
私は虚ろに笑うしか出来なくて。
頭のなかは、『食べたい食べたい食べたい』しか……
それなのに、隣の席では。
旦那様は、思うがまま酒池肉林を繰り広げられて。
(いやいや、決して肉林はしていなかったけれども)
早めに席を立たされて、宴から退いた私は、これで何か食べられる!と喜んだのに。
そのまま、お風呂で磨きたてられて。
口にしたのは、お風呂上がりの果実水のみ。
奥様付き?メイドから差し出された夜着は。
ヒラヒラの付いたスケスケ。
そんな屈辱的で羞恥の塊に、上からガウンを羽織って。
メイドの案内で、いくつもの角を曲がり長い廊下を歩いて。
旦那様の寝室にたどり着いたのです。
そして『どーぞ、お召し上がりになって』状態で待ってた私に。
待たせた旦那様は、私に叫ばれました。
「君とは、白い結婚だ!」と。
それなのに直ぐ様、侯爵家の跡継ぎ?
理解出来ません。
取り敢えず、今夜は免れましたが……
明日は逃げられないでしょう。
対策を練ろうと、ふかふかのベッドに飛び込みました。
そのつもりだったのに。
お夜食を頼む事も出来なくなったのが辛い。
私の頭のなかは『お腹空いた空いた空いた』ばっかりで。
(この恨み、忘れまじ)
空腹と……
慌ただしかった1日の疲れで、気が昂っていたくせに。
私は割りとすぐに、熟睡してしまったのです。
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