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出た!白い結婚です! ~グレイス~
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結婚初夜、旦那様の寝室で。
「き、君とは白い結婚だ!」
(きたきた、きたよ!
だけど目の前に居る私に、叫ばなくても)
「えぇ……、お、俺に……」
(ちょっと、ここで止まってどうするの?
白い結婚とセットで言わないといけないヤツ。
あんな簡単な台詞忘れたの?
こっちは大人しく黙って聞いてるんだから。
ほら、がんばってもう一言!)
「俺に、俺に……うーん……」
旦那様の額から、急に汗がたらたらと流れ出ました。
焦って、唸っているイケメンは残念の一言に尽きます。
(うーん、て?
何焦ってんのかな。
私その続き、知ってるから。
『お前を愛するつもりはない!』でしょ?
『俺に愛されると思うな!』もアリね?
ね、落ち着いたら大丈夫。
ちゃんと上手く言えるから)
結婚前夜の昨夜は、我が伯爵家のレディース
(大叔母、母、姉、そして私)で、遅くまで盛り上がり。
今朝は早くから花嫁支度で、何だかんだ、もう、とにかく。
私は早く休みたくて仕方ありません。
旦那様は決して嫌いなタイプじゃなかったので、こんな事を言われなければ、普通にコトがあってもいいかな、と思っていたのですが。
でも、これなら妻の夜のお勤めを、これからも旦那様の方から無し方向へ持って行っていただける感じです。
……別に私はどちらでもいいのです。
旦那様が無事にトドメのお言葉をくださったなら、私は直ぐに旦那様のお部屋から撤収して、メイドにお夜食を頼もう、と頭のなかはそちらへ。
(もう遅いし、あまり脂っこいモノはダメね。
果物かスープ……うん、スープ頼もう!)
「え、だが、君がどうしてもと言うなら…」
(えっ、どうしたの?
『俺に愛されるとは思うな』は何処へ行った?)
「我が侯爵家の後継ぎは……き、君とっ!」
(そっち?そっちなの!
後継ぎの子作りだけはしてやるパターン?
叫んでいた『白い結婚』はどうなった?)
それだけは本当に勘弁して欲しかったのです。
真実に愛してる方がいらっしゃるのなら、その御方にお役目はお譲りします。
私は慌ててベッドから降り、大きな泣き声をあげながら、旦那様の寝室から逃げ出しました。
「グ、グレイス、待って!」
勿論涙なんか出ていないので、声だけの迫真の演技です。
文字通り脱兎の如く、廊下を走り抜けました。
私、足の速さとキックの正確さには自信があります。
常識的に言うなら、旦那様と私の部屋は続き部屋になるか、もしくはお隣同士なのですが。
私が通された部屋は、ここから遠く離れた客室でした。
そして、妻とは名ばかりの次期侯爵夫人に相応しい……
あてがわれた豪華な客室に飛び込み、内側から鍵を掛けました。
長い距離を全力疾走してきたのです。
胸の動悸は激しく、上手く呼吸出来ません。
私は扉にもたれて、ズルズルと座り込んでしまいました。
これって、後から問題になる?
「き、君とは白い結婚だ!」
(きたきた、きたよ!
だけど目の前に居る私に、叫ばなくても)
「えぇ……、お、俺に……」
(ちょっと、ここで止まってどうするの?
白い結婚とセットで言わないといけないヤツ。
あんな簡単な台詞忘れたの?
こっちは大人しく黙って聞いてるんだから。
ほら、がんばってもう一言!)
「俺に、俺に……うーん……」
旦那様の額から、急に汗がたらたらと流れ出ました。
焦って、唸っているイケメンは残念の一言に尽きます。
(うーん、て?
何焦ってんのかな。
私その続き、知ってるから。
『お前を愛するつもりはない!』でしょ?
『俺に愛されると思うな!』もアリね?
ね、落ち着いたら大丈夫。
ちゃんと上手く言えるから)
結婚前夜の昨夜は、我が伯爵家のレディース
(大叔母、母、姉、そして私)で、遅くまで盛り上がり。
今朝は早くから花嫁支度で、何だかんだ、もう、とにかく。
私は早く休みたくて仕方ありません。
旦那様は決して嫌いなタイプじゃなかったので、こんな事を言われなければ、普通にコトがあってもいいかな、と思っていたのですが。
でも、これなら妻の夜のお勤めを、これからも旦那様の方から無し方向へ持って行っていただける感じです。
……別に私はどちらでもいいのです。
旦那様が無事にトドメのお言葉をくださったなら、私は直ぐに旦那様のお部屋から撤収して、メイドにお夜食を頼もう、と頭のなかはそちらへ。
(もう遅いし、あまり脂っこいモノはダメね。
果物かスープ……うん、スープ頼もう!)
「え、だが、君がどうしてもと言うなら…」
(えっ、どうしたの?
『俺に愛されるとは思うな』は何処へ行った?)
「我が侯爵家の後継ぎは……き、君とっ!」
(そっち?そっちなの!
後継ぎの子作りだけはしてやるパターン?
叫んでいた『白い結婚』はどうなった?)
それだけは本当に勘弁して欲しかったのです。
真実に愛してる方がいらっしゃるのなら、その御方にお役目はお譲りします。
私は慌ててベッドから降り、大きな泣き声をあげながら、旦那様の寝室から逃げ出しました。
「グ、グレイス、待って!」
勿論涙なんか出ていないので、声だけの迫真の演技です。
文字通り脱兎の如く、廊下を走り抜けました。
私、足の速さとキックの正確さには自信があります。
常識的に言うなら、旦那様と私の部屋は続き部屋になるか、もしくはお隣同士なのですが。
私が通された部屋は、ここから遠く離れた客室でした。
そして、妻とは名ばかりの次期侯爵夫人に相応しい……
あてがわれた豪華な客室に飛び込み、内側から鍵を掛けました。
長い距離を全力疾走してきたのです。
胸の動悸は激しく、上手く呼吸出来ません。
私は扉にもたれて、ズルズルと座り込んでしまいました。
これって、後から問題になる?
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