【完結】やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかったわたしは今度こそ間違えない

Mimi

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第1章 今日、あなたにさようならを言う

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 フィリップスさんからの借金、及びコート問題をあれこれこねくりまわして考えてみたが、どうすれば正解なのか、分からない。

 わたしは直情径行で、頭を打って後から後悔するタイプなので、この週末にじっくり腰を据えて考えることにした。


 今はパピーの看護が優先だ。
 モニカのことも、後は両親とクリフォードに任せよう。
 クリフォードに伝えたように、法的解決をあちらは考えているのかも知れないけれど。
 この先は、わたしは表立ってどうこう言う気も、動くつもりもなかった。

 あのふたりに、関わらないで、と言ったのだ。
 わたしからも関わるつもりはない。

 ただ、週明けにモニカが荷物を取りに来た時に、パピーをどうしたらいいのかも悩む。
 わたしの留守に来い、と言ったけれど、パピーを置いて大学に行く訳にも行かないし、モニカが荷物持ちにシドニーを連れてくることも考えられるし。
 ふたりが黙って荷造りだけして消えてくれればいいけれど、また何かパピーについて言われたりすると面倒で、想像するだけでげんなりしてくる。

 昨夜はもっと言えばよかった等、腹を立てていたが、その後のパピーが現れてからの展開に、あのふたりのことは頭から抜け落ちていた。

 今はとにかく、どうでもいい。
 あまりにもうるさかったら、受けて立ってやろうと思うが、あちらから何か起こさない限りは、無視無視だ。


 それよりも考えなくてはいけないことが、多過ぎる。
 頭の中でそれらに優先順位をつけながら、大急ぎで買い物をしてフラットに戻った。

 目覚めたパピーが、わたしが居なくて心細くて泣いていたらどうしようと焦っていた。
 電話とクリーニング、買い物で想定していたより長く留守をしてしまっていたからだ。


 鍵を回してドアをそっと開く。
 リビングのアーク灯は点いていない。
 パピーはまだ眠ってくれているのだろうか。

 キッチンに買ってきたオートミールの箱とミルクの瓶を置いてから、足音を忍ばせて、わたしの部屋のドアを開けた。
 カーテンを閉めたままの暗い中を、パピーを寝かせていたベッドに近付こうとして、ドレッシングルームの灯りが点いてることに気付いて、先にその中を覗いた。
 朝、慌てていたから消し忘れていたのかと思って。

 ビックリして腰が抜けた。
 人が立っていた。
 素っ裸の女!


 我が目を疑った。
 見たこともない全裸の女性が鏡の前で、自分の胸を軽く揉みながら腰をくねらせていた。


 目の前の状況に腰が抜けて床に座り込んで……
 訳が分からないとは、まさしくこのこと。
 この部屋は間違いなくわたしの部屋だ。
 鍵を開けて入ってきたのだから。


 空き巣?
 わたしの服を盗もうとドレッシングルームに入り、着て帰ろうとして裸になってるの?


 悲鳴をあげかけて、慌てて自分の口を押さえた。
 女はわたしに気付いていない。
 このまま静かに離れて、パピーを抱いて、お祖父様のお店に駆け込むんだ。

 もう、どうのこうの言ってる余裕はない。
 盗みに入った家で裸になっている空き巣なんて。
 いくらなんでも、これはわたしの手に余る状況で、お祖父様に助けて貰わないとどうしようもない。


 とにかく全裸だと言うのが不気味で怖くて、早く早くと四つん這い状態で後退りしかけて。
 何かに腰をぶつけて、大きな音をたててしまった。
 ぶつかった、あまりの痛さに悶絶していたら……



 胸部腹部臀部と順に、自分の身体を撫で回していた露出女が物音に気付いて、こちらを見てニヤリと笑った。

 しまった……あぁ、見つかってしまった!万事休す!
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