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第1章 今日、あなたにさようならを言う
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わたしの方が知り合うのは早かった。
皆が言うように、仲を取り持ったわけではなかったけれど、わたしを通じてシドニーはモニカを知ったのだ。
「わたしが、貴方との交際の、邪魔をする、とモニカが、言ったの?
……貴方はそれを、信じたの?」
敢えて細かく区切って、確認するように尋ねてやった。
すると、シドニーの瞳が揺れた。
「いや、俺も……すべてを信じたわけじゃないけど」
「すべて、と言うことは他にも何か聞いてるのね?
そうね、考えられるとしたら。
平民になっていたわたしの父がクレイトンを盗んだ、とか?」
モニカの父はわたしの伯父だった。
8年前、クレイトン伯爵夫妻だったモニカの両親は列車の脱線事故で亡くなり。
兄の後を継ぎ実家に戻って、新たにクレイトン伯爵となったわたしの父は、ひとり生き延びた当時13歳のモニカを引き取って、実子とかわりなく今まで育てていた。
クレイトン伯爵位はわたしの弟が継ぐことになっていて、母はモニカを嫁に出すまでは、本当の母娘のように甘えてほしい、と姪である彼女をわたし以上に慈しんできたのに。
以前クレイトンのカントリーハウスに泊まったことがあるシドニーもわたしの両親に会っていたから、その人柄を知っているはずなのに。
シドニーは何も言わず、唇を噛んだ。
それで、今思い付くままわたしが口に出した憶測が事実だと気付かされた。
クレイトンを継ぐのは本当はモニカなのに、叔父達がそれを盗んだ、とシドニーに話していたのだ、と。
憶測だったけれど、わたしがそれを口にしたのは、まだこちらに出ていなかった頃クレイトン領内の中等学校で、わたしは1度だけモニカの同級生と名乗る方から聞かれたことがあったから。
『貴女のお父様はモニカが成人するまでの中継ぎでしょう?』と。
その日、下校する時にモニカにそのことを告げると、彼女はわたしの手を握り。
「そんなひと、知らないわ。
わたしの友人ならそんなこと言ったりしない。
何も事情を知らないひとが面白がって余計なことをジェリーに言っても、気にしなくていいの。
絶対にこのことは叔父様や叔母様の耳には入れないでね」
その出来事を忘れていたのは、わたしがモニカの言葉を信じていたからだ。
シドニーの反応を見た今になって。
あの時も、モニカ本人が友人にそう話していたから、あんな風に言われたのだ、とおめでたいわたしも、やっと分かった。
皆が言うように、仲を取り持ったわけではなかったけれど、わたしを通じてシドニーはモニカを知ったのだ。
「わたしが、貴方との交際の、邪魔をする、とモニカが、言ったの?
……貴方はそれを、信じたの?」
敢えて細かく区切って、確認するように尋ねてやった。
すると、シドニーの瞳が揺れた。
「いや、俺も……すべてを信じたわけじゃないけど」
「すべて、と言うことは他にも何か聞いてるのね?
そうね、考えられるとしたら。
平民になっていたわたしの父がクレイトンを盗んだ、とか?」
モニカの父はわたしの伯父だった。
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シドニーは何も言わず、唇を噛んだ。
それで、今思い付くままわたしが口に出した憶測が事実だと気付かされた。
クレイトンを継ぐのは本当はモニカなのに、叔父達がそれを盗んだ、とシドニーに話していたのだ、と。
憶測だったけれど、わたしがそれを口にしたのは、まだこちらに出ていなかった頃クレイトン領内の中等学校で、わたしは1度だけモニカの同級生と名乗る方から聞かれたことがあったから。
『貴女のお父様はモニカが成人するまでの中継ぎでしょう?』と。
その日、下校する時にモニカにそのことを告げると、彼女はわたしの手を握り。
「そんなひと、知らないわ。
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何も事情を知らないひとが面白がって余計なことをジェリーに言っても、気にしなくていいの。
絶対にこのことは叔父様や叔母様の耳には入れないでね」
その出来事を忘れていたのは、わたしがモニカの言葉を信じていたからだ。
シドニーの反応を見た今になって。
あの時も、モニカ本人が友人にそう話していたから、あんな風に言われたのだ、とおめでたいわたしも、やっと分かった。
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