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Chapter7
7-3
しおりを挟むその日の夜。
和葉と哲平は仕事終わりにいつものバーでソファーに身を沈めていた。
すっかり気に入ったベリーミックスは今日も甘酸っぱくてとても美味しい。
一口飲んでホッと一息。
和葉は少し緊張していた。
「中西さん。手紙渡してくれて、ありがとうございました」
「どういたしまして」
「わがまま聞いてもらって、すみませんでした」
「いいよあれくらい。むしろ役に立てたなら本望です」
哲平から、康平がどんな反応だったかは聞いていない。
知る必要は無いと思った。だってこれは所詮、ただの自己満足に過ぎないから。
「中西さんは、本当に優しいですね」
「そう?」
「はい。とっても」
照れ臭そうにしている哲平を見て、和葉はベリーミックスをもう一度一口飲んだ。
「中西さん」
「ん?」
哲平に向き直って呼びかけた和葉に、哲平はグラスを持ったまま軽く和葉の方を向く。
「好きです。中西さんのこと、好きになりました」
にっこり笑った和葉に、哲平は時が止まったかのように固まって動かなくなった。
「あ、あれ……?中西さん?聞いてます?」
哲平の反応に段々恥ずかしくなってきた和葉は、若干頰を赤くしながらも笑って哲平に呼びかける。
哲平は"好き"の二文字を飲み込むのにたっぷり数秒を要して。そして理解した瞬間、口をパクパクさせながらカァーっと耳まで真っ赤になった。
「え、は?え、ちょ、え!?ちょ、待って待って待って待って」
自分でもパニックになって何を言っているのかわかっていなかった哲平に、和葉は驚いて笑う。
「えぇ?ははっ、慌てすぎじゃないですか?」
「いやいきなりで心の準備ってものが……」
両手で顔を抑えて必死で赤い顔を見られないようにしているものの、真っ赤な耳が見えていて。
そんな姿に、和葉は愛しさがこみ上げるのだった。
「じゃあもう一回言うので心の準備してください」
「え、はい」
パタパタ手で顔を仰いで深呼吸をして、未だ赤い顔で「お願いします」と言う哲平に和葉はふわりと笑う。
「中西さん。好きです」
そんな和葉を見て、哲平は優しく抱きしめた。
その暖かさを感じて、和葉は思う。
──あぁ、生きていて、本当に良かった。
「私、今日ほど幸せだと思ったことないです」
「大丈夫。これからはずっと幸せだから」
「ふふ、すごい自信ですね」
「一緒にいれるだけで俺は幸せなんだよ」
「……私もです」
トクトクと優しい鼓動を刻む心臓の音が、和葉の脳裏に若葉の笑顔を思い浮かばせて。
浮かんだその幼い笑顔を、決して忘れないように。
……若葉。ありがとう。
カンパニュラに想いを乗せて。End.
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