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Chapter6
6-1
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哲平との約束の土曜日は、あっという間にやってきた。
哲平は毎日気が気じゃなかったし、和葉も心なしかそわそわしているような雰囲気だった。
由美がそんな二人を間近で見て怪しいと思っていたくらいには。
土曜日は仕事が休みのため、普段スーツの哲平とビジネスカジュアルの和葉はお互いのプライベートな私服を見るのすら初めてだった。
和葉が待ち合わせに指定したのは、街中にあるカフェだった。
時刻は午前十一時。和葉が店内に入って周りを見渡すと見慣れた顔を見つける。
案内してくれようとしたスタッフの方に断りを入れてその席へ向かった。
「中西さん。お待たせしてしまってすみません」
「ん?ああ、全然だいじょ、うぶ……」
「?どうしました?」
「いや、……私服だとなんかイメージ違って新鮮だなー……と」
「?……そうですかね?」
シンプルな白シャツに細身のジャケットに黒のパンツという至ってシンプルな服装の哲平。
対して和葉は淡い色合いのシフォンワンピースの上に薄手のカーディガンを羽織り、足元はぺたんこ靴。
和葉は仕事に於いてはパンツスタイルが多いため、哲平からすればスカート、況してやワンピースは中々見慣れず新鮮だった。
席に着き、レモンティーを注文してから哲平と向き直る。
「私からお誘いしておいてお待たせしてしまいすみませんでした」
「いや、俺が早く来すぎただけだから」
片手を振って気にしてないと言った哲平は、先に注文していたアイスコーヒーを飲みながら聞く。
「今日はどこに行くんだ?綺麗目な格好って言われたからこんなんで来たけど……」
「……静かにお話ができるところへ。服はこんなんで大丈夫です」
「……果たしてそれは何処に」
「軽く何か食べていきましょう」
「あ、はい」
言われるがままにサンドイッチのセットを食べた2人はカフェを出る。会計は和葉が自分の分は自分で払うと言ってきかなかったため渋々別会計に。
街中を高身長の男女が歩いていると、それだけで目を引くものだ。
この2人も同様、かなりの高身長のため大分周りの視線を集めていた。が、本人達は全く興味がなさそうだった。
むしろ和葉に至っては気付いてすらいなかった。
数分歩いて着いた先は、有名ホテルのラウンジだった。
「何でここにっ!?」
小声で聞いた哲平に、和葉は
「ここが1番落ち着いて静かにお話できると思ったので」
と淡々と答えた。
確かに土曜日の午前中ということもあり、人は疎らだった。ここは有名なホテルでラウンジは席一つ一つが少しゆとりを持って配置されている。そのため周りに誰かいたとしても話し声が聞こえにくく、あまり気にならないのだ。
二人はラウンジの一番端、周りからは見えにくい場所を選んで腰掛けた。ソファーのスプリングがいい具合に体を包んでくれて、なんとも座り心地が良い。
それぞれアイスコーヒーとアイスティーを頼み、ゆっくりと流れるクラシックのBGMを聞きながら飲み物が運ばれてくるのを静かに待った。
「ーーお待たせ致しました」
運ばれてきた飲み物を一口飲む。
自分で思っていたよりも大分緊張しているのか、和葉の喉はカラカラだった。
喉が少し潤ったところで深呼吸をして、それからゆっくりと話し始めた。
「中西さん。私は昔、死んでいたはずでした」
「……!」
哲平は目を見開いた。
「それでも私が今生きているのは、"ココ"に傷があるからです」
そう言って胸に一本の縦線を手で描いた。
「……傷?」
それは、哲平にとっては映画やドラマでしか見たことがない、どこか現実味のない表現で。
ぼんやりと可能性に思い当たった時、言葉を失った。
「……少し、昔話にお付き合いいただけますか」
和葉は切なげに、思い出すように一度目を閉じて苦しそうに微笑んだ。
哲平は毎日気が気じゃなかったし、和葉も心なしかそわそわしているような雰囲気だった。
由美がそんな二人を間近で見て怪しいと思っていたくらいには。
土曜日は仕事が休みのため、普段スーツの哲平とビジネスカジュアルの和葉はお互いのプライベートな私服を見るのすら初めてだった。
和葉が待ち合わせに指定したのは、街中にあるカフェだった。
時刻は午前十一時。和葉が店内に入って周りを見渡すと見慣れた顔を見つける。
案内してくれようとしたスタッフの方に断りを入れてその席へ向かった。
「中西さん。お待たせしてしまってすみません」
「ん?ああ、全然だいじょ、うぶ……」
「?どうしました?」
「いや、……私服だとなんかイメージ違って新鮮だなー……と」
「?……そうですかね?」
シンプルな白シャツに細身のジャケットに黒のパンツという至ってシンプルな服装の哲平。
対して和葉は淡い色合いのシフォンワンピースの上に薄手のカーディガンを羽織り、足元はぺたんこ靴。
和葉は仕事に於いてはパンツスタイルが多いため、哲平からすればスカート、況してやワンピースは中々見慣れず新鮮だった。
席に着き、レモンティーを注文してから哲平と向き直る。
「私からお誘いしておいてお待たせしてしまいすみませんでした」
「いや、俺が早く来すぎただけだから」
片手を振って気にしてないと言った哲平は、先に注文していたアイスコーヒーを飲みながら聞く。
「今日はどこに行くんだ?綺麗目な格好って言われたからこんなんで来たけど……」
「……静かにお話ができるところへ。服はこんなんで大丈夫です」
「……果たしてそれは何処に」
「軽く何か食べていきましょう」
「あ、はい」
言われるがままにサンドイッチのセットを食べた2人はカフェを出る。会計は和葉が自分の分は自分で払うと言ってきかなかったため渋々別会計に。
街中を高身長の男女が歩いていると、それだけで目を引くものだ。
この2人も同様、かなりの高身長のため大分周りの視線を集めていた。が、本人達は全く興味がなさそうだった。
むしろ和葉に至っては気付いてすらいなかった。
数分歩いて着いた先は、有名ホテルのラウンジだった。
「何でここにっ!?」
小声で聞いた哲平に、和葉は
「ここが1番落ち着いて静かにお話できると思ったので」
と淡々と答えた。
確かに土曜日の午前中ということもあり、人は疎らだった。ここは有名なホテルでラウンジは席一つ一つが少しゆとりを持って配置されている。そのため周りに誰かいたとしても話し声が聞こえにくく、あまり気にならないのだ。
二人はラウンジの一番端、周りからは見えにくい場所を選んで腰掛けた。ソファーのスプリングがいい具合に体を包んでくれて、なんとも座り心地が良い。
それぞれアイスコーヒーとアイスティーを頼み、ゆっくりと流れるクラシックのBGMを聞きながら飲み物が運ばれてくるのを静かに待った。
「ーーお待たせ致しました」
運ばれてきた飲み物を一口飲む。
自分で思っていたよりも大分緊張しているのか、和葉の喉はカラカラだった。
喉が少し潤ったところで深呼吸をして、それからゆっくりと話し始めた。
「中西さん。私は昔、死んでいたはずでした」
「……!」
哲平は目を見開いた。
「それでも私が今生きているのは、"ココ"に傷があるからです」
そう言って胸に一本の縦線を手で描いた。
「……傷?」
それは、哲平にとっては映画やドラマでしか見たことがない、どこか現実味のない表現で。
ぼんやりと可能性に思い当たった時、言葉を失った。
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