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Chapter1
1-3
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「和葉ちゃーん」
「何ですか由美さん」
「ずっと聞きたかったんだけどね」
「はい」
「和葉ちゃんの"忘れられない男"ってどんな人なの~?」
いい具合にお酒が進んだ頃、大声で言った由美の言葉に部の男性社員の殆どがびっくりして咳払いをしたり咽せたりし、それぞれ飲み物を一口飲んでさりげなく耳をすませた。
当の本人の和葉は「……は?」と口をあんぐり開けて驚いていて。
哲平も気にしてませんという表情をしながらも、内心かなり動揺していた。
あまりの動揺に酔いも吹っ飛び、意味も無くビールを小分けに飲んで落ち着かない気持ちを抑える。
聞きたいような……聞きたくないような……。そう思ってソワソワとしていると和葉が眉間に皺を寄せた。
「……何ですかソレ」
「えぇ~?だって和葉ちゃんってあまりにも男関係の誘い全部断るし、その割に相手はいないって言うからきっと"忘れられない男"がいるんだろうって専らの噂よ~?」
「……何ですかソレ」
全く同じ台詞を言った和葉に、今日一番の緊張感から解放されたように皆静かにゆっくりと息を吐いた。
どうやら息を止めていた社員が殆どだったようだ。
和葉はそんな他の社員を気にする余裕もなく、由美に
「ソレ誰が流した噂なんですか?何なんですかソレ。全っ然違うんですけど」
と詰め寄っている。
その和葉の様子を見て、哲平は胸を撫で下ろした。
「(……なんだ。そんな奴、元々いなかったのか)」
ホッとしたのもつかの間、由美はさらに続けた。
「じゃあさ、何で和葉ちゃんは男絡みの誘いぜーんぶ断るの?好きな人もいないんでしょう?彼氏欲しくないの?」
「……」
「……おい、後藤にだって言いたくないことくらい……」
「何よ、哲平も知りたいくせにっ。今更良い人振るんじゃないわよ。こんな時にしか聞けないんだから」
「おい……」
何てことを……!とあたふたする哲平を横目に由美は和葉に視線を戻す。
和葉は哲平の方は見ておらず、何かを考えるようにしていた。
「……仮に好きな人ができたとして」
「うん?」
「運良く相手も私のことを好いてくれたとして」
「ん?うん」
ゆっくりと話し出した和葉の言葉を聞き逃さないように、由美も哲平も耳を傾ける。
「……それで付き合うことがイコール幸せなことなら、それは私にはできないだけです」
「……え、何々、どういうこと?ん?」
言葉の意味をよく理解できなくて由美は噛み砕いた言い方を求めたものの、逆に由美の言葉に自分が何を言ったのか初めて気が付いたかのように和葉はハッとして。
「何でもないですっ。あ、あれです。ちょっと男の人が苦手なんです。本当です。本当ですよ」
と顔の前で両手を振った。
それは誰が見ても不自然だったものの、流石にさらに突っ込んで聞こうという者はおらず。
気まずかったのかトイレに立った和葉を大人しく見送った。
戻ってきた後さりげなく由美の話にシフトチェンジした和葉は、由美の合コン話を丁寧に相槌を打ちながら聞いている。
哲平は先程の和葉の言葉に感じた違和感が離れなくなり、頭から抜けなくなった言葉の意味を考えた。しかし考えても答えなんて当然わかるわけもなく。
「(男が苦手、ねぇ……)」
そのまま残っていたビールを一気に飲み干した。
「何ですか由美さん」
「ずっと聞きたかったんだけどね」
「はい」
「和葉ちゃんの"忘れられない男"ってどんな人なの~?」
いい具合にお酒が進んだ頃、大声で言った由美の言葉に部の男性社員の殆どがびっくりして咳払いをしたり咽せたりし、それぞれ飲み物を一口飲んでさりげなく耳をすませた。
当の本人の和葉は「……は?」と口をあんぐり開けて驚いていて。
哲平も気にしてませんという表情をしながらも、内心かなり動揺していた。
あまりの動揺に酔いも吹っ飛び、意味も無くビールを小分けに飲んで落ち着かない気持ちを抑える。
聞きたいような……聞きたくないような……。そう思ってソワソワとしていると和葉が眉間に皺を寄せた。
「……何ですかソレ」
「えぇ~?だって和葉ちゃんってあまりにも男関係の誘い全部断るし、その割に相手はいないって言うからきっと"忘れられない男"がいるんだろうって専らの噂よ~?」
「……何ですかソレ」
全く同じ台詞を言った和葉に、今日一番の緊張感から解放されたように皆静かにゆっくりと息を吐いた。
どうやら息を止めていた社員が殆どだったようだ。
和葉はそんな他の社員を気にする余裕もなく、由美に
「ソレ誰が流した噂なんですか?何なんですかソレ。全っ然違うんですけど」
と詰め寄っている。
その和葉の様子を見て、哲平は胸を撫で下ろした。
「(……なんだ。そんな奴、元々いなかったのか)」
ホッとしたのもつかの間、由美はさらに続けた。
「じゃあさ、何で和葉ちゃんは男絡みの誘いぜーんぶ断るの?好きな人もいないんでしょう?彼氏欲しくないの?」
「……」
「……おい、後藤にだって言いたくないことくらい……」
「何よ、哲平も知りたいくせにっ。今更良い人振るんじゃないわよ。こんな時にしか聞けないんだから」
「おい……」
何てことを……!とあたふたする哲平を横目に由美は和葉に視線を戻す。
和葉は哲平の方は見ておらず、何かを考えるようにしていた。
「……仮に好きな人ができたとして」
「うん?」
「運良く相手も私のことを好いてくれたとして」
「ん?うん」
ゆっくりと話し出した和葉の言葉を聞き逃さないように、由美も哲平も耳を傾ける。
「……それで付き合うことがイコール幸せなことなら、それは私にはできないだけです」
「……え、何々、どういうこと?ん?」
言葉の意味をよく理解できなくて由美は噛み砕いた言い方を求めたものの、逆に由美の言葉に自分が何を言ったのか初めて気が付いたかのように和葉はハッとして。
「何でもないですっ。あ、あれです。ちょっと男の人が苦手なんです。本当です。本当ですよ」
と顔の前で両手を振った。
それは誰が見ても不自然だったものの、流石にさらに突っ込んで聞こうという者はおらず。
気まずかったのかトイレに立った和葉を大人しく見送った。
戻ってきた後さりげなく由美の話にシフトチェンジした和葉は、由美の合コン話を丁寧に相槌を打ちながら聞いている。
哲平は先程の和葉の言葉に感じた違和感が離れなくなり、頭から抜けなくなった言葉の意味を考えた。しかし考えても答えなんて当然わかるわけもなく。
「(男が苦手、ねぇ……)」
そのまま残っていたビールを一気に飲み干した。
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