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三年越し
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「んで、その後は知っての通り。今思えば俺は三年前のあの日、お前に一目惚れしてたってわけだ」
お酒が入っているからか、いつもより饒舌な天音。
自分で聞きたいと言った昔話だったけれど、その半分が私に関連する話で驚いた。
私は三年前のあの日から、もう会うことはないのだからと、ずっと忘れよう忘れようと思っていたのに。
天音は、忘れたくても忘れられなくて苦しんでいたなんて。
それに、天音が傑くんに嫉妬していただなんて。
私に、一目惚れをしてくれていただなんて。
そんなの、全然知らなかった。
「だ、って、今の話だと、天音はどこかの令嬢と結婚するんでしょう?なのになんで私をずっと……」
「それが最近知ったんだけど、親父は俺に恋愛結婚して欲しいんだと。だから見合いなんて全く考えてないらしい。ここんとこ早く婚約者を連れてこいってうるせぇんだ」
俺の勝手な思い込みってやつだ。そう笑った天音に、どうしようもなく胸がざわめく。
「……だからさ、どう?俺と結婚前提で付き合わない?」
「けっ……え、あ、えぇ!?」
「ははっ、動揺しすぎ。言っただろ。俺は唯香を口説き落とすって」
「そう、だけど……結婚って、そんな、私まだ二十五だしっ……」
突然のプロポーズ混じりの告白に、私はしどろもどろになって自分でも何を言っているのかわからなくなる。
「俺のこと、嫌いか?」
「そんなわけっ……!」
思わず声を荒げそうになってしまい、慌てて口を手で塞ぐ。
そんな仕草すら、天音のツボに入ってしまったのか頭を優しく撫でられた。
「そんな可愛い反応すんなよ。今すぐ押し倒したくなる」
「なっ!?」
言われ慣れない言葉に、簡単に動揺してしまいすぐに赤面してしまう。
天音もそれをわかっているからか、楽しそうに笑うのが恨めしい。
「……本当は、今日はこれをプレゼントしようと思ってたんだ」
「え?」
柔らかな笑顔で差し出されたのは、小さな袋。
「唯香に似合うと思って」
開けてみて、と言われて受け取ると、中にはラッピングされた綺麗な箱が。
取り出して開けると、華奢なデザインのピアスが輝いていた。
「これ……」
「人と被るのは俺が嫌だから、しばらく悩んで決めるのに時間かかっちまった。……それ、どう?」
「……すっごく、素敵です。本当にこれを私に……?」
「もちろん。唯香を思って選んだから、付けてもらえると嬉しい」
「……ありがとうございます。本当に嬉しいです」
「そりゃあ良かった」
天音はそのまま私の手から箱ごとピアスを取り、そっと取り出して私の耳に付けてくれる。
耳朶に触れる天音の手が、すごく冷たくて。
天音も緊張しているのがよくわかる。
「……うん。似合ってる。可愛いよ」
「っ……」
じっと見つめられて、その綺麗な瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
ふわりと微笑んだ天音に、心臓がギュッと鷲掴みにされたように痛み、しばらく大きな音を立てる。
そして天音は急に真顔に戻ったかと思うと、再び緊張した面持ちで色気を放つ。
「……なぁ。唯香。明日仕事は?」
明日は、土曜日。
「……や、すみ。ですけど……」
「良かった。……今日と明日。唯香の時間、俺にくれないか?」
私の両手を包み込むようにして、懇願する。
その表情があまりにも妖艶で、直視できなくて目を逸らしたいのに、囚われてしまったかのように逸らせない。
その言葉の意味がわからないほど子どもではない。
ゴクリと喉を鳴らしてから、誘われるようにゆっくりと頷いた。
お酒が入っているからか、いつもより饒舌な天音。
自分で聞きたいと言った昔話だったけれど、その半分が私に関連する話で驚いた。
私は三年前のあの日から、もう会うことはないのだからと、ずっと忘れよう忘れようと思っていたのに。
天音は、忘れたくても忘れられなくて苦しんでいたなんて。
それに、天音が傑くんに嫉妬していただなんて。
私に、一目惚れをしてくれていただなんて。
そんなの、全然知らなかった。
「だ、って、今の話だと、天音はどこかの令嬢と結婚するんでしょう?なのになんで私をずっと……」
「それが最近知ったんだけど、親父は俺に恋愛結婚して欲しいんだと。だから見合いなんて全く考えてないらしい。ここんとこ早く婚約者を連れてこいってうるせぇんだ」
俺の勝手な思い込みってやつだ。そう笑った天音に、どうしようもなく胸がざわめく。
「……だからさ、どう?俺と結婚前提で付き合わない?」
「けっ……え、あ、えぇ!?」
「ははっ、動揺しすぎ。言っただろ。俺は唯香を口説き落とすって」
「そう、だけど……結婚って、そんな、私まだ二十五だしっ……」
突然のプロポーズ混じりの告白に、私はしどろもどろになって自分でも何を言っているのかわからなくなる。
「俺のこと、嫌いか?」
「そんなわけっ……!」
思わず声を荒げそうになってしまい、慌てて口を手で塞ぐ。
そんな仕草すら、天音のツボに入ってしまったのか頭を優しく撫でられた。
「そんな可愛い反応すんなよ。今すぐ押し倒したくなる」
「なっ!?」
言われ慣れない言葉に、簡単に動揺してしまいすぐに赤面してしまう。
天音もそれをわかっているからか、楽しそうに笑うのが恨めしい。
「……本当は、今日はこれをプレゼントしようと思ってたんだ」
「え?」
柔らかな笑顔で差し出されたのは、小さな袋。
「唯香に似合うと思って」
開けてみて、と言われて受け取ると、中にはラッピングされた綺麗な箱が。
取り出して開けると、華奢なデザインのピアスが輝いていた。
「これ……」
「人と被るのは俺が嫌だから、しばらく悩んで決めるのに時間かかっちまった。……それ、どう?」
「……すっごく、素敵です。本当にこれを私に……?」
「もちろん。唯香を思って選んだから、付けてもらえると嬉しい」
「……ありがとうございます。本当に嬉しいです」
「そりゃあ良かった」
天音はそのまま私の手から箱ごとピアスを取り、そっと取り出して私の耳に付けてくれる。
耳朶に触れる天音の手が、すごく冷たくて。
天音も緊張しているのがよくわかる。
「……うん。似合ってる。可愛いよ」
「っ……」
じっと見つめられて、その綺麗な瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
ふわりと微笑んだ天音に、心臓がギュッと鷲掴みにされたように痛み、しばらく大きな音を立てる。
そして天音は急に真顔に戻ったかと思うと、再び緊張した面持ちで色気を放つ。
「……なぁ。唯香。明日仕事は?」
明日は、土曜日。
「……や、すみ。ですけど……」
「良かった。……今日と明日。唯香の時間、俺にくれないか?」
私の両手を包み込むようにして、懇願する。
その表情があまりにも妖艶で、直視できなくて目を逸らしたいのに、囚われてしまったかのように逸らせない。
その言葉の意味がわからないほど子どもではない。
ゴクリと喉を鳴らしてから、誘われるようにゆっくりと頷いた。
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