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第五章
淡い気持ち
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「言いたいことは全部中原さんに言われてしまったよ。桐ヶ谷さん、少しだけ検査にも付き合ってもらえるかい?」
「っ、はい」
「お母さんはその間私と少しお話ししましょう」
「……はい。お願いします」
お母さんと離れて、涙を拭いて立ち上がる。
お母さんは中原さんと一緒に部屋を出て行って、二人で何かを話しに向かった。
「なに、心配することはないよ。ちょっと話があるだけだろうから」
「……はい」
東海林先生に頷いて検査に向かった。
異常が無いとわかると、しばらくはゆっくり生活するようにと言われて今日は帰ってもいいことになった。
エレベーターで一階に降りながらスマートフォンを見ると龍之介くんから連絡が来ており、お母さんに声をかけて少しだけ病院の外で会うことに。
「奈々美」
「龍之介くん」
「どうだった?」
「うん。検査も異常無いって」
「そっか、良かった」
頭を撫でてくれる龍之介くんは、私の後ろにいるお母さんに気が付いたらしく「はじめまして、乙坂 龍之介といいます」と綺麗に挨拶をした。
「あなたが龍之介くんね?はじめまして、奈々美の母です。あなたがずっと奈々美のそばにいてくれたのよね。本当にありがとう」
「いや、俺は別に……」
照れたようにそっぽを向いた龍之介くんにお母さんは優しく微笑む。
「良かったら、お家まで送っていくわ」
「そうだよ龍之介くん、乗ってって」
車で来たらしいお母さんの提案で
「じゃあ、お願いします」
龍之介くんと一緒に駐車場に向かった。
龍之介くんのお家は私の家からもそう遠くは無くて。車で十分もいかないくらいの距離らしい。
同じ高校に通っているのも頷ける。
後部座席に並んで乗り込み、私たちが仲良くなった経緯を説明していた。
「じゃあ、龍之介くんの妹さんと奈々美が同じ病室だったの?」
「そう。それで美優ちゃんのお見舞いに来た龍之介くんとも仲良くなって」
「そうだったの。その妹さんは?」
「もうすぐ退院する予定です」
「そう。良かったわ。その妹さんにも今度お礼を言わなきゃ」
「いや、あいつは難しいことあんまりわかってないので」
たじたじになっている龍之介くんも珍しい。
笑いを堪えていると龍之介くんはじとりとした目でこちらを見ていて。それもまた面白い。
「お母さん、美優ちゃんは受験生なの。うちの高校受けるんだって。龍之介くんも同じ学校だったの」
記憶が戻って、お母さんにしゃべりたいことがたくさんあった。
「あらそうなの?すごい偶然」
そんな話をしているうちに龍之介くんのお家に着き、「今日はありがとう」とお礼を告げた。
「だから気にすんなって。俺がしたくてしてるんだから。また連絡する。……送っていただいてありがとうございました」
「ふふっ、いいのよ。これからも奈々美のことよろしくね」
「ちょっとお母さん!?」
「はい。失礼します」
「龍之介くんまでっ……もう、バイバイ」
恥ずかしさに負けて手を振って別れる。
車が見えなくなるまで龍之介くんは手を振ってくれていて、そんな些細なことが嬉しかった。
「奈々美にあんなに優しいお友達ができてたなんて、お母さん知らなかった」
「私も、こんなに仲良くなれるなんて思ってなかった」
「ふふっ、奈々美が好きになるのもわかるわ」
「……えっ!?」
「あら、違うの?」
「な、にをっ」
「お母さん、彼なら賛成するからね」
「お母さんってば!?何言ってるのよ……!?」
急に何を言い出すのだろう。お母さんは面白そうに笑いを堪えながらからかってきて。
それに否定できなかったのは、確かに私の心の中に淡い気持ちが芽生え始めていたからだった。
「っ、はい」
「お母さんはその間私と少しお話ししましょう」
「……はい。お願いします」
お母さんと離れて、涙を拭いて立ち上がる。
お母さんは中原さんと一緒に部屋を出て行って、二人で何かを話しに向かった。
「なに、心配することはないよ。ちょっと話があるだけだろうから」
「……はい」
東海林先生に頷いて検査に向かった。
異常が無いとわかると、しばらくはゆっくり生活するようにと言われて今日は帰ってもいいことになった。
エレベーターで一階に降りながらスマートフォンを見ると龍之介くんから連絡が来ており、お母さんに声をかけて少しだけ病院の外で会うことに。
「奈々美」
「龍之介くん」
「どうだった?」
「うん。検査も異常無いって」
「そっか、良かった」
頭を撫でてくれる龍之介くんは、私の後ろにいるお母さんに気が付いたらしく「はじめまして、乙坂 龍之介といいます」と綺麗に挨拶をした。
「あなたが龍之介くんね?はじめまして、奈々美の母です。あなたがずっと奈々美のそばにいてくれたのよね。本当にありがとう」
「いや、俺は別に……」
照れたようにそっぽを向いた龍之介くんにお母さんは優しく微笑む。
「良かったら、お家まで送っていくわ」
「そうだよ龍之介くん、乗ってって」
車で来たらしいお母さんの提案で
「じゃあ、お願いします」
龍之介くんと一緒に駐車場に向かった。
龍之介くんのお家は私の家からもそう遠くは無くて。車で十分もいかないくらいの距離らしい。
同じ高校に通っているのも頷ける。
後部座席に並んで乗り込み、私たちが仲良くなった経緯を説明していた。
「じゃあ、龍之介くんの妹さんと奈々美が同じ病室だったの?」
「そう。それで美優ちゃんのお見舞いに来た龍之介くんとも仲良くなって」
「そうだったの。その妹さんは?」
「もうすぐ退院する予定です」
「そう。良かったわ。その妹さんにも今度お礼を言わなきゃ」
「いや、あいつは難しいことあんまりわかってないので」
たじたじになっている龍之介くんも珍しい。
笑いを堪えていると龍之介くんはじとりとした目でこちらを見ていて。それもまた面白い。
「お母さん、美優ちゃんは受験生なの。うちの高校受けるんだって。龍之介くんも同じ学校だったの」
記憶が戻って、お母さんにしゃべりたいことがたくさんあった。
「あらそうなの?すごい偶然」
そんな話をしているうちに龍之介くんのお家に着き、「今日はありがとう」とお礼を告げた。
「だから気にすんなって。俺がしたくてしてるんだから。また連絡する。……送っていただいてありがとうございました」
「ふふっ、いいのよ。これからも奈々美のことよろしくね」
「ちょっとお母さん!?」
「はい。失礼します」
「龍之介くんまでっ……もう、バイバイ」
恥ずかしさに負けて手を振って別れる。
車が見えなくなるまで龍之介くんは手を振ってくれていて、そんな些細なことが嬉しかった。
「奈々美にあんなに優しいお友達ができてたなんて、お母さん知らなかった」
「私も、こんなに仲良くなれるなんて思ってなかった」
「ふふっ、奈々美が好きになるのもわかるわ」
「……えっ!?」
「あら、違うの?」
「な、にをっ」
「お母さん、彼なら賛成するからね」
「お母さんってば!?何言ってるのよ……!?」
急に何を言い出すのだろう。お母さんは面白そうに笑いを堪えながらからかってきて。
それに否定できなかったのは、確かに私の心の中に淡い気持ちが芽生え始めていたからだった。
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