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第四章

強くなる(2)

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「お兄ちゃん。……奈々美ちゃん!」

「美優ちゃん、久しぶり」

「久しぶり!え、奈々美ちゃん来るって知ってたら私お出迎えに行ったのに!」

「はぁ?じゃあ俺ん時も出迎えろよ」

「お兄ちゃんはいいのー!ほら、奈々美ちゃん、こっち座って?」

「ありがと美優ちゃん」


久しぶりに聞く兄妹の馴れ合いのようなやりとりに笑みをこぼしながら、促されるままに美優ちゃんのベッドの隣の丸椅子に腰掛ける。


「ずっと奈々美ちゃん来るの待ってたんだよ?もっと早く来てくれると思ってたのに」

「ははっ、ごめんね。いろいろ忙しくて中々来れなかったの」

「もー。お兄ちゃんの顔は見飽きたし、こんなこと言ったらアレだけど、奈々美ちゃんがいた頃が恋しいよお……」


泣き真似をする美優ちゃんの頭をよしよしと撫でていると、「見飽きたとはなんだ」と龍之介くんが不貞腐れながら軽く小突く。

美優ちゃんも退院の目処がそろそろ立つらしく、それに向けてリハビリと勉強も続けて頑張っているらしい。


「退院したらすぐ受験のために勉強頑張んないと」

「うん。応援してるよ」

「ありがと奈々美ちゃん」


三人で楽しく会話しているところに、
「失礼しまーす」と立花さんが入ってきて。


「奈々美ちゃん、これ。遅くなってごめんね」


「……ありがとうございます」


受け取った紙袋の中には、約束していた立花さんが昔着ていた高校の制服が入っていた。

おばさんのことで忙しく、まだ学校をどうするかは話し合っていなかったため、もしかしたらこの制服も必要なくなってしまうかもしれない。

でも、せっかく持ってきてくれた立花さんにそんなことを言えるわけもないため、ありがたくいただくことに。

紙袋の中をちらっと見たらしい龍之介くんが、「あ」と声を漏らしたため聞き返すものの。


「……いや、なんでもない」


と何かを考えるように黙ってしまった龍之介くん。

私は首を傾げながらも、美優ちゃんに話を振られたためすぐに意識はそちらに持っていかれてしまった。

家に帰り、龍之介くんの言葉を思い出す。


"だから焦らず、ゆっくりでいいんだ。確実に受け止められるくらいに、成長するんだよ"


じゃあ、どうすれば成長できるだろう。

どうすれば、私は強くなれるのだろう。

考えても答えが出ずにため息を吐いた頃。

部屋に置いてある卓上カレンダーが目に入る。

三日後の日付が、青い丸で囲まれていた。


「……相談してみよう」


それは、カウンセリングの日を示すものだった。
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