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第二章
勉強(3)
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そんな中、午後から美優ちゃんに面会客が訪れた。
「美優!」
「来たよ、調子どう?」
「え、美優勉強してんの!?やばっ!」
以前も来た部活動の仲間のよう。
夏休み中の部活帰りなのだろう。ジャージを着ており、皆小麦色にこんがりと焼けている。
美優ちゃんが勉強しているのがよっぽど見慣れないらしく、見つけるや否や美優ちゃんの周りを囲んで喋り始めた。
私はそっとカーテンを閉めようと手を伸ばす。
しかし、ちらりと見えた美優ちゃんの表情が気になってしまい、手が止まった。
「私だって勉強くらいするよ。ほら、一応受験生だし?」
そう言って無邪気に笑っているものの、なんだかいつも違う気がして。
「いやー、せっかく現実逃避してるのに!思い出させないでー」
「そういえば休み明けテストあるしね。あれ内申に直結するんだっけ?やめてほしいー」
友達の嘆きに、ふとした瞬間になんとも言えない表情をする。
しかし、周りの子たちは誰一人としてそれに気が付かず。
それどころか、寄ってたかって美優ちゃんのノートを覗き込んでいく。
「でもさ、なんか美優が真面目に勉強してるのとかちょっと見慣れ無さすぎて違和感あるかも」
「わかるっ、いっつも一夜漬けで赤点ギリギリなのにね」
「……ははっ、だよね。私も自分でやってて違和感しかない」
次第に美優ちゃんも、同調するように笑った。
それがどうも居た堪れなくて。
でも、ここで変に口出ししたら美優ちゃんの立場も無くなってしまう。
「あ、あの。お話中ごめんなさい。美優ちゃん、そろそろリハビリの時間じゃない?」
だから、そんな助け舟を出すのが精一杯で。
本当はリハビリは午前中で終わっていたのに、
「……え、あ、うん。本当だ。時間見てなかった」
と美優ちゃんも理解したのか話を合わせてくれた。
「そうだったの!?ごめんね、急に来て」
「言ってよー。リハビリ頑張ってね!また来るから!」
「あ、ありがとう。ごめんねせっかく来てくれたのに」
「ううん。美優の顔見れて良かったよ。じゃあ。またね」
どうやら疑われることはなかったようで安心した。
キュ、とローファーを鳴らしながらその子たちは病室を出ていく。
美優ちゃんと二人きりになった瞬間、なんだか一気に緊張が取れた気がして、一つ息を吐いた。
どうやらそれは美優ちゃんも同じだったようで、
「……奈々美ちゃん、ありがと」
と力無く笑う。
「……お節介かとは思ったんだけど、美優ちゃんの顔が強張ってたから」
「うん……ごめんね、情けないところ見せちゃって」
「ううん。……それより、美優ちゃんは大丈夫?」
コクン、と小さく頷いた美優ちゃん。
その小さな身体に寄り添ってあげられない自分の方が情けないと思った。
「……早く高校生になりたい」
「え?」
「ううん、何でもない。ちょっと問題解いてたら眠くなってきちゃった。夕方まで少し寝るね」
「……うん。わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
美優ちゃんの強がりに気付いていながら、カーテンを閉める姿に何も知らないふりをして頷いた。
早く高校生になりたい、か。
私が中学生の頃も、同じようなことを思っていたのだろうか。
窓の外は、恨めしいくらいの快晴だった。
「美優!」
「来たよ、調子どう?」
「え、美優勉強してんの!?やばっ!」
以前も来た部活動の仲間のよう。
夏休み中の部活帰りなのだろう。ジャージを着ており、皆小麦色にこんがりと焼けている。
美優ちゃんが勉強しているのがよっぽど見慣れないらしく、見つけるや否や美優ちゃんの周りを囲んで喋り始めた。
私はそっとカーテンを閉めようと手を伸ばす。
しかし、ちらりと見えた美優ちゃんの表情が気になってしまい、手が止まった。
「私だって勉強くらいするよ。ほら、一応受験生だし?」
そう言って無邪気に笑っているものの、なんだかいつも違う気がして。
「いやー、せっかく現実逃避してるのに!思い出させないでー」
「そういえば休み明けテストあるしね。あれ内申に直結するんだっけ?やめてほしいー」
友達の嘆きに、ふとした瞬間になんとも言えない表情をする。
しかし、周りの子たちは誰一人としてそれに気が付かず。
それどころか、寄ってたかって美優ちゃんのノートを覗き込んでいく。
「でもさ、なんか美優が真面目に勉強してるのとかちょっと見慣れ無さすぎて違和感あるかも」
「わかるっ、いっつも一夜漬けで赤点ギリギリなのにね」
「……ははっ、だよね。私も自分でやってて違和感しかない」
次第に美優ちゃんも、同調するように笑った。
それがどうも居た堪れなくて。
でも、ここで変に口出ししたら美優ちゃんの立場も無くなってしまう。
「あ、あの。お話中ごめんなさい。美優ちゃん、そろそろリハビリの時間じゃない?」
だから、そんな助け舟を出すのが精一杯で。
本当はリハビリは午前中で終わっていたのに、
「……え、あ、うん。本当だ。時間見てなかった」
と美優ちゃんも理解したのか話を合わせてくれた。
「そうだったの!?ごめんね、急に来て」
「言ってよー。リハビリ頑張ってね!また来るから!」
「あ、ありがとう。ごめんねせっかく来てくれたのに」
「ううん。美優の顔見れて良かったよ。じゃあ。またね」
どうやら疑われることはなかったようで安心した。
キュ、とローファーを鳴らしながらその子たちは病室を出ていく。
美優ちゃんと二人きりになった瞬間、なんだか一気に緊張が取れた気がして、一つ息を吐いた。
どうやらそれは美優ちゃんも同じだったようで、
「……奈々美ちゃん、ありがと」
と力無く笑う。
「……お節介かとは思ったんだけど、美優ちゃんの顔が強張ってたから」
「うん……ごめんね、情けないところ見せちゃって」
「ううん。……それより、美優ちゃんは大丈夫?」
コクン、と小さく頷いた美優ちゃん。
その小さな身体に寄り添ってあげられない自分の方が情けないと思った。
「……早く高校生になりたい」
「え?」
「ううん、何でもない。ちょっと問題解いてたら眠くなってきちゃった。夕方まで少し寝るね」
「……うん。わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
美優ちゃんの強がりに気付いていながら、カーテンを閉める姿に何も知らないふりをして頷いた。
早く高校生になりたい、か。
私が中学生の頃も、同じようなことを思っていたのだろうか。
窓の外は、恨めしいくらいの快晴だった。
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