冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

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Ninth

27-4

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「そう言えば、課長がこれ金山に渡しといてって」


「え?」


「お客様から貰ったんだって。他の人の分は好きに取っていけって言ってたけど、金山の分だけ別で取っておいてたみたい。どうせ会うなら渡しとけってさ。自分で渡せばいいのに。恥ずかしかったのかねー。本当、課長ってわかりやすく金山にだけは甘いよね。愛されてるねー」



手に乗せられた高級店のフィナンシェ。


それを見て、口元が勝手ににやける。



「毎日さ、給湯室で課長に会うと"コーヒー淹れてくれる人がいなくなった"って言って嘆いてるよ」


「そうなの?」


「うん。でも不思議なんだけどさ、たまに私が給湯室に入るとミルク持ってたりするんだよね。私の顔見た途端慌てたみたいに置くんだけど。課長ってブラック派じゃなかったっけ?」


「ククッ……」


「金山?」



コーヒー苦手なくせに。そうやって見栄張っちゃって。本当に面白いんだから。



「ううん。なんでもない」



危ない危ない。思わず笑ってしまった私に、眞宏は不思議そうに首を傾げる。


それは課長のトップシークレットですから。眞宏にだって教えてあげない。



「でも、課長の話するとやっぱり金山良い顔するよね」


「え?」


「幸せそうで何より」



安心したように微笑む眞宏に、私も微笑み返す。



「眞宏には負けるよ」


「ははっ、じゃあお互い幸せってことだ」


「そうだね」



手の中におさまったフィナンシェをもう一度見つめる。


きっと、綾人さん用にもう一つ別に取っておいているものがあって。それは綾人さんのデスクの中か、既にその胃の中か……。


それは眞宏も知らないことだろう。


でも、それでいい。



「そうだ。眞宏に報告したいことがあるんだけど!」


「え?何!?ついにプロポーズされたとか!?」


「え、なんでわかったの!?」


「うそ!え!本当!?」


「うん」



パッと左手を見せると、眞宏の視線は私の薬指に注がれる。



「ちょっと待って!いつの間に!?見せて!え、プロポーズの言葉は?どこで言われたの!?あぁもう気になる!今日の夜飲みに行くわよ!」


「あ、ダメ。今日は綾人さん家にお泊まりだから」


「嘘でしょ!?金山!待ってー!」



この秘密は、私と綾人さんのだけのもの。


彼の笑顔も、彼の甘さも。彼からの大切な言葉も。



"俺と、結婚してください"


"はい。よろしくお願いします"



私だけが知っていれば、それでいい。




───冷徹上司の、甘い秘密。End.


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