冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

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Forth

12-3

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そんなある日。



「──綾人!」



定時を迎えて皆が帰り支度をするノー残業デー。


そんな水曜日に、課長を親しげに呼ぶ声がして、皆そちらを振り向く。


その凛とした声に課長は顔を上げて、真顔のまま口を開いた。



「……恭子」



──そう、恭子さんである。



課長がその名前をポツリと呟いた途端、何処からか驚いた声や噂している小声が聞こえる。



「今、"綾人"って言った!?」


「課長も"恭子"って言ってたよ!?」


「え、彼女!?」


「でも聞いたことなくない!?」



いや、小声で言ってるつもりなんだろうけど私に聞こえてるってことはそれ全部多分本人に聞こえてるから。



「あの人って本社からヘルプで来てる人でしょ?」


「え!?何で課長と知り合いなの!?」


「さぁ?でも凄い仲良さそうじゃない?」



止まらない推測をも気にする素振りもない二人。それどころか「食事でも行こ!」と恭子さんは課長を連れてフロアを出ていくところで。


その際に私と目が合い恭子さんは「金山ちゃん!この間振り!」私に手を振り、私は小さく会釈する。課長はいつもの真顔に見えて何とも複雑な心境に陥る。部署が違うからあまり会うことは無かったんじゃなかったのか。


恭子さんの視線を追った数人の同僚は二人を見送った後にそのまま私に状況説明を求めてきたりして。


誰かが言った通り本社の人間だと伝えると皆大層驚いていた。



「なんか凄くお似合いの二人でしたね」


「わかります!課長って今まで浮いた話無かったから最初凄く不思議な感じでしたけど、美男美女な大人カップルって感じで素敵でしたね」



そんな二人をべた褒めする声に、私はどうしようもなく嫉妬してしまう。


言われてみればただの同期にしては仲が良すぎる気もする。


課長は何も言ってはいなかったものの。



……もしかして、二人は昔付き合っていたりしたのだろうか。



そんなことが頭をぐるぐると駆け巡り、気が付けばすぐに皆飽きたのかその場を離れていた。


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