冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

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Forth

12-2

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溜まっていた仕事をこなしているとあっという間にお昼の時間になったものの、ランチの誘いに来た相田に断りを入れて今日はコンビニで買ってきた飲料タイプのゼリーを吸い込む。


うちの会社は大体の人が外に食べに行くため、すぐにフロアには誰もいなくなった。


静かな空間での仕事は捗るもので。


たまに鳴り響く電話に出ながらパソコンのキーボードを叩いていた。


どれくらい集中していたのだろうか。コト、という音がすぐ近くから聞こえてハッとそちらを向く。



「……少しは休憩しろ」



ふわりと漂うココアの甘い香り。



「あ、ありがとうございます」



置かれたカップから湯気が広がっていた。


見上げるとそこには課長の姿。私のものと同じものを持っているのだろう。そこからも甘い香りがした。


腕時計で時間を確認すると後30分程休憩時間は残っていた。


……私もちょっと休憩しよう。


折角用意してくれたココアを温かいうちに飲みたい。


ただ会社で課長と二人きり、というのが思いの外緊張してしまって落ち着かない。


ドキドキと高鳴る胸。それに比例するかのように熱を帯びていく頰。


このまま無言の空間じゃ私が恥ずかしさでおかしくなってしまいそうだった為、話題を振る。




「課長、お昼は食べたんですか?」



ココアを飲みながら頷いた課長に、私も一口カップを傾ける。



「……おいしい」



口の中に広がる甘さに思わず顔が綻ぶ。



「ココアなんて給湯室にありましたっけ?」



ふとそう思って聞くと、課長はいつもの真顔でこちらを向いて。



「家から持ってきた」



と平然と言ってのける。



「……私までいただいちゃっていいんですか?」


「あぁ。その為に持ってきた」


「え?」


「お前と一緒に飲もうと思ってたから」



そう言って笑った課長に、思わずココアを吹き出しそうになる。



「どうした?」


「なっ、何でもないです……」



唐突の笑顔とその言葉に心臓を鷲掴みにされて吹き出しそうになりました、だなんて言えない。



「凄く嬉しいし美味しいです。ありがとうございます」


「……あぁ。喜んでくれたなら良かったよ」



課長も表情を緩めてくれた。


すぐに他の社員達がランチから戻ってきたこともあり、私達の会話はそこで終わる。


その時の課長がココアを飲み切ってカップを捨てるスピード感ときたら。


俊敏すぎて笑いが止まらなくなりそうだった。
そんな笑いを堪える私を課長はじとりと見つめて。


私はそれに気付かないふりをして。


そんなやり取りも楽しくて幸せに感じていた。

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