冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

文字の大きさ
上 下
45 / 112
Third

11-4

しおりを挟む
「綾人とは同期なのよ」


「へぇ……」


「お前は相変わらずうるさいな」


「何よ、良いじゃない。久し振りに会ったんだから」



ねぇ?とこちらに振られて、反射的に愛想笑いを一つ。



「金山、コイツのことは無視して良いから」


「酷い!金山ちゃん、綾人から嫌がらせとかされてない?大丈夫?」


「勝手に馴れ馴れしくするな」


「あら、焼きもち?」


「ちがっ……そんなんじゃないから」


「ふふっ……恥ずかしがっちゃって」



会話を聞いただけで、二人が気心知れた仲だというのがよくわかる。


普段見ないような課長の雰囲気とフレンドリーな恭子さんからの圧に、笑うことしかできない。



「もう、折角美味しいスイーツさっき買ってきてたからお裾分けしようと思ったのに」


「……」



目の色が変わったような課長に、私はどうしてか心臓がズキンと痛む。



「金山ちゃん知ってた?綾人ったら昔っから甘い物が大好きでねー、なのに馬鹿にされるから黙っておいてくれって言って……」


「おい、ペラペラ喋るな」


「何よ、良いでしょ減るもんじゃないんだから」


「いいから」



……なんだ。課長の秘密知ってるの、私だけじゃなかったんだ。



「あ、そうそう。私ね、今度そっちの支社に一時的に戻ることになったの」


「……なんだ、左遷か?」


「ははっ、まさか。そっちの開発部からのヘルプ要請があってね。私が行くことになったの。今日はその下見。明後日一回こっちに帰ってきてから来週もう一回そっち行くの。三ヶ月くらいになると思う」


「結構長いな」


「うん。だから長いことホテル取って今日荷物置いておこうと思って」



だからこれ、とスーツケースを指差した恭子さん。


その顔が凄く嬉しそうで。



「まぁ、綾人とは違う部署だから会うこともあんまり無いかもしれないけど」


「そうだな」



課長も、会社では見ないような少しだけ柔らかい表情をしている。


チクリと痛む胸に手を当てる。



「そうだ!今日の夜空いてる?久し振りに綾人とも話したいし、ご飯でもどう?」


「あぁ……今日はもう直帰予定だから別に良いけど」


「やった!じゃあ後で連絡するね!」



ぱあっと笑った恭子さんが、凄く眩しく見えた。




「……すみません、私ちょっとお手洗いに行ってきますね」


「……金山?」


「はーい、行ってらっしゃーい」



恭子さんの明るい声を背に、思わずその場から逃げ出した。


トイレの洗面台の前で、ふぅ、と息を吐く。


当たり前じゃないか。旧知の中なら、知っていてもおかしくないじゃないか。


……どうして私は、こんなにもショックを受けているのだろうか。



「……まさか、ね」



ズキズキと痛む胸を抑えて、目の前の鏡を眺める。



「……ははっ、酷い顔」



だらしなく眉の下がった自分の顔を見て、



「そんなわけ、無いと思ってたんだけど」



朝、キスされた唇をそっと指で撫でてからぽつり、呟く。



──好き、なのかも。



胸に秘めた想いが、動き出した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。 逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー 法人営業部メンバー 鈴木梨沙:28歳 高濱暁人:35歳、法人営業部部長 相良くん:25歳、唯一の年下くん 久野さん:29歳、一個上の優しい先輩 藍沢さん:31歳、チーフ 武田さん:36歳、課長 加藤さん:30歳、法人営業部事務

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...