冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

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「美味しかったですね!」


「あぁ。食べ歩きってのも良いもんだな」


「ですね」



結局観光名所に寄り、出店グルメを楽しんだ。


あっちのは?こっちのは?と色々巡っていたおかげか、お腹はパンパン。


しかもおかず系のものはそこそこに、殆ど甘い物でお腹を満たしてしまった。


課長も出張先だからか、隠す事もなく甘いものを堪能していたおかげで機嫌が良い。


その後は駅前のレンタルオフィスに入り、次のアポまで資料の確認と打ち合わせ。


二社目との会議が終わった頃には、もう外は真っ暗だった。


今晩泊まるホテルは、会社が手配してくれたビジネスホテル。


駅のロッカーに預けていたスーツケースを引きながらフロントへ。



「【R.foods】の名で予約しているものですが」


「かしこまりました。確認致しますので少々お待ちくださいませ」



課長がスマートにチェックインしている姿を横目に立っていると次の瞬間、フロントの女性から衝撃的な言葉が飛び出した。



「【R.foods】様、ツインルーム一部屋のご予約いただいておりますね」


「……え?」
「……は?」


「……?」


「え、二部屋ですよね?」



聞き間違いかと思ってそう尋ねるものの、



「……いえ、一部屋のご予約となっておりますが」



フロントの方の引き攣った表情が全てを物語っていて。


課長は焦ったようにどこかに電話をかけ始めた。


それは会社宛てで、



「ホテルの手配したのは誰方ですか!?」



詰め寄った数分後。



「……会社側の手配ミスだ……」



ホテルを手配してくれた社員が他の出張予定の社員が泊まるホテルと逆の数で予約してしまったよう。


その社員は電話の向こうで平謝りだったらしい。



「わかりました。どうにかするので大丈夫です」



そう言って電話を切った課長。



「すみません、もう一部屋空いていますか?離れててもいいので」



そう聞くものの。



「申し訳ございません。生憎本日はアーティストのコンサートが近くであるため既にこちらのお部屋以外全て予約で満室でして……」


「……」


「……」



そりゃそうだろう。


腕時計に視線をやると、時刻は既に21時を回っていて。


今から他のホテルを探したところで都心のビジネスホテルでこの時間に空きがあるところなんてあるのだろうか。


しかしコンサートと言っていたからおそらく他のホテルも似たようなものの可能性が高い。


無かったら最悪ネットカフェか……?


課長も同じことを考えているのだろう。腕時計と私の顔を見比べていた。



「……課長」


「……何だ」


「……どうせもう寝るだけですし今から空いてるところを探すのもお互いしんどいので……。
課長さえ良ければ私は同じ部屋でも大丈夫です」



恥ずかしくて、顔が赤く染まるのがわかる。
目を合わせづらくて下を向いた。



「……本当にいいのか?」


「……はい」



数秒の沈黙の後。



「……チェックイン、お願いします」



ルームキーを二つ受け取った。


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