冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

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「ありがとう、ございます」



お礼を言ってコップを傾ける。


アルコールで満たされた身体は水分不足で、喉はカラカラだった。


このまま朝まで寝ていたら喉が痛くて目が覚めただろう。


私が寝ている間にシャワーに入ったのか、課長はスウェットにTシャツというラフな格好だった。


いつもピシッとしたスーツ姿を見慣れている分、なんだかそわそわしてしまう。



「あの、私帰ります。これ以上ご迷惑はかけられませんし」



ベッドまで借りてしまって申し訳ない。明日も仕事だし、早く帰って寝ないと。シャワーは朝入ればいいし。


そう思って水を飲み切ったコップを片付けようと立ち上がると、すかさず課長がそれを制する。



「色々あったんだろ、気にしないで今日は泊まってけ」


「いや、でも。そこまでお世話になるわけには……」


「どうせお前のことだ。一人になったらなったでウジウジ自己嫌悪して落ち込んで酷い顔で出社するんだろ?」



……何故バレている。



「さっきも"寂しい"って飲みながら一人で騒いでたじゃないか」


「……私、そんな醜態を晒してたんですか……」


「別に、一人で勝手に泣いて勝手に俺に絡んで勝手に寝ただけだ」


「重ね重ね申し訳ないです……」



一体どれほどの失態を重ねてしまったのか、これほどまでに知りたくないと思うものも無い。



「ザルのお前がそうやって記憶無くす程だ。自分で思ってる以上にストレス抱えてんだよ。少しはゆっくり休め」


「……」


「お前の性格的に、近くに誰かいた方が余計なこと考えなくて済むだろ。シャワーもトイレも好きに使っていいし朝早くにタクシー呼んでやるからそれで帰って着替えればいい」


「そんな、何か何まで申し訳なさすぎます……!」


「……気にすんな」


「……でも」


流石にそこまでしてもらうのは気が引ける。


しかしこのままではどちらも譲らずに堂々巡りだ。


課長もそれを感じたのか、一つ溜息を吐きながらも譲る気はなさそうで。



「……俺がそうしたいんだ」


「……え?」


「ほっとけるわけないだろ。"寂しい"って泣いてる奴を」



だから泊まってけ。そう言った課長は、私の頭にそっと手を置いて。


恥ずかしさに真っ赤に染まった頰。課長の口からそんな言葉が出るとは思わなかった私は固まってしまい、何も言うことができない。


見かねた課長がまた一つ息を吐いた。


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