とろけるような、キスをして。

青花美来

文字の大きさ
上 下
29 / 50
第三章

クリスマス(2)

しおりを挟む
「夢じゃないよね?」

「夢だったら私が困る」

「やだ俺も困る。……どうしよう。マフラーも嬉しいしみゃーこが可愛すぎるし幸せすぎて俺今日死ぬのかな?」


パニックになりそうな修斗さんを落ち着かせるために、少し体を離して顔を寄せた。


「みゃーこ?……!」


肩に手を置いて、背伸びをして。目を伏せた先には、驚いた顔。

触れるだけのキスだけど、今の私には恥ずかしくてこれが限界で。
でも


「……それじゃ足りない」

「えっ……んんっ」


すぐに塞がれた唇は、何度も角度を変えてどんどん深くなっていく。

ぬるりと入り込んできた舌が、歯列をなぞって口内を暴れ回る。

あまりの激しさに、膝に力が入らなくなってガクンと崩れ落ちそうになった。

それを修斗さんは片手で支えると、そのまま何度もキスをしてきて。


「……このまま連れて帰りたい」


ゆっくりと離れると、すぐに力強く抱きしめられた。

荒い呼吸を落ち着かせながら、その背中に縋り付くように腕を回す。

足がガクガクして、立っていられない。


「マジで可愛い。どうしよう、このままベッド直行したい」


そう言って耳元や首筋にもキスを落とす。


「んっ……だ、め……だよ。大和さんのところ……行くんでしょ?」

「いやアイツよりも今はみゃーこ。みゃーこが誘惑してきたのが悪い。大好き。やばい」


言うが早いか、修斗さんは家の鍵を後ろ手に閉めて、靴を脱いで私を横抱きにして家に入る。


「……みゃーこの部屋、行こ」


三階に上がり、私の部屋に入る。

ほどよく暖房で温まった部屋は、コートの必要性など皆無だ。

修斗さんは私をベッドに寝かせて、自分のコートと私が巻いたマフラーを脱いでベッドの下にそっと置く。

私の上に馬乗りになると、ベッドが軋む音を立てた。


「……大和さんのところは?」

「俺といるのに大和のことばっかり。なに、みゃーこはそんなに余裕なの?」

「なっ……」

「俺は余裕無いよ?ほら」


そう言って私の手を持って、ジーンズ越しに熱く滾る場所に触れさせる。

興奮しているのがわかる、その質量の高さ。

赤面しながらも、思わず撫でるように指をその部分に這わせてしまう。すると見ただけでもわかるくらい、また膨らんだ気がする。

そのお返しとばかりに、私の太腿の内側を修斗さんの指がツー……と這った。


「っ!」

「俺といるのに、気安く他の男の名前呼んでんなよ?……そんな余裕、無くしてやるから」


……私に余裕?そんなの、あるわけないじゃん。

心臓は破裂しそうなほどうるさく鳴り響いているし、呼吸すらおかしくなっている。

上気した頰と熱い視線が、私を溶かすように射抜いていく。


「頭ん中から、俺以外なんて消えればいい」

「俺のことだけ考えて、感じてろよ」


言葉が、甘い蜜のように脳に染み込んでいく。

それは、私を優しく包み込んで。そして溶かしていく。

キスの雨を降らすかのように、絶え間無く何度も角度を変えて重なる唇。

次第に耳、首筋、鎖骨へと動くそれは、壊れ物を扱うように優しく、丁寧に私を愛撫していく。

冷えた指先が、私の敏感なところを執拗に責めて。

その刺激に、私は幾度も吐息を漏らした。


「……美也子。本当可愛い」


たまに呼ぶ"美也子"が、さらに興奮を煽る。

窓から私たちを照らす月明かりと、しんしんと降り続く雪。

外は寒いのに、お互いを求め合う身体は熱い。

響く嬌声とベッドが何度も軋む音。

少し遅れてやってきたクリスマスは、とても熱い夜だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

逆行令嬢の反撃~これから妹達に陥れられると知っているので、安全な自分の部屋に籠りつつ逆行前のお返しを行います~

柚木ゆず
恋愛
 妹ソフィ―、継母アンナ、婚約者シリルの3人に陥れられ、極刑を宣告されてしまった子爵家令嬢・セリア。  そんな彼女は執行前夜泣き疲れて眠り、次の日起きると――そこは、牢屋ではなく自分の部屋。セリアは3人の罠にはまってしまうその日に、戻っていたのでした。  こんな人達の思い通りにはさせないし、許せない。  逆行して3人の本心と企みを知っているセリアは、反撃を決意。そうとは知らない妹たち3人は、セリアに翻弄されてゆくことになるのでした――。 ※体調不良の影響で現在感想欄は閉じさせていただいております。 ※こちらは3年前に投稿させていただいたお話の改稿版(文章をすべて書き直し、ストーリーの一部を変更したもの)となっております。  1月29日追加。後日ざまぁの部分にストーリーを追加させていただきます。

処理中です...