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第三章

夜明け(1)

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***

「……送ってくれてありがとう。じゃあね」

「あぁ。ちゃんと後で電話しろよ?」

「うん。……またね」

「気を付けて」


空港の保安検査場の前で、前回と同じく手を振る。

前回と違う点と言えば、二人の関係性だろうか。

厳密に言えばまだ変わってはいないけれど。確実に昨日までとは気持ちが違う。

私を見つめるその視線から、絶えず私を想ってくれているのが伝わってきて、こっちが恥ずかしいくらいだ。

今朝起きた時、お互いに何も身に付けていない状態で抱きしめ合って寝ていて。

昨夜の情事を思い出し、あまりの恥ずかしさに悶絶した。


"みゃーこ。おはよ"


修斗さんのその寝起きの掠れた声と眩しい笑顔に、心臓を鷲掴みにされたような気がしてから早数時間。

私はまた、東京に戻る。

今日一日、まともに修斗さんの顔を見た気がしない。

見られなかったと言った方が正しいだろうか。

修斗さんはそんな私を見て、"照れてんの?可愛い"と言ってまたキスを落としてきたり、いろいろと大変だった。


……これじゃあ、心臓がもたないよ……。


飛行機に乗ってスマートフォンの電源を切ろうとした時に、メッセージが来ている事に気が付く。


"次会った時に、返事聞くから"


そっと、胸に手を当てる。

メッセージを見ただけで高鳴る鼓動。

昨夜の、あの時間。

嫌じゃなかったし、むしろときめいた。

幸せな時間だった。気持ち良くて、私だってたくさん求めたし。

今まで、ああいう行為は男の人が気持ち良くなるためだけのもので、女の人は痛いことの方が多いと思っていた。しかしそれは私の男性経験がそうだっただけで。

昨夜は、私にとって今までで一番幸せな時間だった気がする。

私が痛くないように。私が満たされるように。


"ここ好き?"

"痛くない?"

"好きだよ"

"可愛い"


終始私を大切にしてくれて、甘やかして、私を気持ちよくすることを第一に考えてくれていた。

初めて、男性に心から大切にされているという実感が持てた。

……気持ち良いって、初めて思った。

思わず頬を染める。

私は飛行機の中で一体何を考えているんだか。

不思議と、寂しさは感じなかった。

……次会った時の返事の言葉、考えておこう。

景色を見ている自分の姿が、窓に映る。
そこには、嬉しそうに口元を緩ませている私がいた。

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