2 / 50
第一章
再会(2)
しおりを挟む
「新婦が入場します」
アナウンスと共に扉が開き、自身の父親と腕を組んで入場した晴美姉ちゃん。
バージンロードを一歩ずつ歩く姿はやはりとても神秘的。美しいという言葉がよく当てはまる。
「……綺麗」
「そうだな」
結局私は、当たり前のように隣に陣取った先生と一緒に参列することになった。
式は滞りなく進み、誓いの言葉を経てキスを交わす。
晴美姉ちゃんには昔からお世話になりっぱなしだったから、嬉しいのと少し寂しいのとでなんだか気持ちがぐちゃぐちゃになりそうだった。
その後は披露宴。
先生と一緒に会場に移動すると、私の席はまたまた先生の隣だった。親族席には恐れ多くて座れないと言った私のために仕事関係者のテーブルに席を用意してくれたらしい。
「お、隣じゃん」
「知ってる人が隣で良かった」
いくら地元とは言え、晴美姉ちゃんとはそこそこ歳も離れているから共通の知り合いなんてほとんどいない。一人ですみっこの方で参列すればいいかと思っていたものの、やはり知っている人の隣は安心するもの。晴美姉ちゃんの配慮に感謝せねば。
披露宴の間は先生がたくさん話しかけてくれたおかげで、楽しく参加できた。
二人の生い立ちを振り返るスライドショーでは、晴美姉ちゃんが私の子守りをしている昔の写真が出てきたり、深山先生や他の先生方と一緒に写っている写真が出てきたり。時折指差しながら先生と笑い合う。
終盤の新婦から両親への手紙に感動して泣きそうになったりもした。
うっすらと滲んだ涙を拭いた後。写真撮影の時間では晴美姉ちゃんとツーショットも撮ることができて大満足だった。
カメラマンさんにも撮ってもらい、私のスマートフォンでも撮ってもらい。晴美姉ちゃんも自分のスマートフォンで撮ってもらっていた。
後で撮った写真を送り合おう。そう思って席に戻ろうとすると、晴美姉ちゃんが思い出したかのように
「美也子、せっかくだから深山先生とも写真撮ったら?」
と笑顔を向けた。
「え?」
「振り袖姿、どうせ今のやつしか写真撮ってないんでしょ?」
「それはそうだけど……」
「深山先生も美也子と二人で写真撮りたいでしょ?」
まさか、そんなわけないでしょ。
そう思って晴美姉ちゃんに断りを入れようとしたら。
「確かに。撮りたい」
「え!?」
まさかの返事に、固まった。
「ほら、美也子!深山先生!私が撮ってあげる!」
晴美姉ちゃんにそう言われて、断る間も無くノリノリの先生が私を引き寄せる。
ぴったりと先生にくっついた肩が、やけに熱く感じた。
「ほら、美也子もっと笑って」
「え……うん」
何故か晴美姉ちゃんが写真を撮ってくれて、よくわからないけど先生につられるようにカメラにぎこちない笑顔を向けた。
何故今日の主役が私たちにカメラを向けているのか、その主役がとても楽しそうだから聞くのはやめた。
「後で送っとくねー!」
そう言って晴美姉ちゃんはすぐに他の人との写真の時間になり、今度は撮られる側に戻っていた。
「みゃーこはこの後は?いつ東京戻るの?」
席に戻ってから晴美姉ちゃんを眩しく見つめていると、先生が話しかけてくる。
「私?……この後はちょっと実家の方見に行って、今日はホテル泊まる予定。明日の最終便で向こう戻るよ」
今日は土曜日だ。仕事の関係もあり、明日の最終便の飛行機のチケットを取っていた。
「一人で実家行くの?」
「うん。別に帰省したからって会うような友達もいないし、ホテルのチェックインまで時間あるし。どうせなら久しぶりに街中とかそれこそ高校とか、いろいろ見に行きたいなって思ってたから、その辺ぶらぶらしてる予定だよ」
上京してから、初めての帰省だった。
いろいろ見たいところがあるけど、誘うような友達なんていない。
晴美姉ちゃんを見つめながら答えると、
「じゃあそれ、俺も付き合っていい?」
と言われて、思わず振り向いた。
「え?先生が?なんで?」
「なんでって言われても。せっかく久しぶりに会ったし、みゃーこともっと話したいなと思って。それに高校も行くなら、関係者の許可が無いと今入れないから」
「あ、そうなの?」
その辺は全く考えていなかった。確かに部外者が勝手に入るわけにはいかないか。
「うん。だから俺がいた方が何かと便利だと思うよ」
「先生も暇なの?」
「うん。この後何も予定無い」
「……じゃあ、お願いしようかな」
「よし、決まり!」
嬉しそうな先生は、最近の学校生活をいろいろと話してくれた。あの先生が転勤したとか、この先生が寿退社したとか。
私が在籍していた頃の教頭先生が今校長先生をやっているとか。
同じテーブルにいる人たちが正に学校関係者だ。
言われてみれば懐かしく見えてくる顔ぶれに、いつのまにか先生の話を楽しく聞いていた。
アナウンスと共に扉が開き、自身の父親と腕を組んで入場した晴美姉ちゃん。
バージンロードを一歩ずつ歩く姿はやはりとても神秘的。美しいという言葉がよく当てはまる。
「……綺麗」
「そうだな」
結局私は、当たり前のように隣に陣取った先生と一緒に参列することになった。
式は滞りなく進み、誓いの言葉を経てキスを交わす。
晴美姉ちゃんには昔からお世話になりっぱなしだったから、嬉しいのと少し寂しいのとでなんだか気持ちがぐちゃぐちゃになりそうだった。
その後は披露宴。
先生と一緒に会場に移動すると、私の席はまたまた先生の隣だった。親族席には恐れ多くて座れないと言った私のために仕事関係者のテーブルに席を用意してくれたらしい。
「お、隣じゃん」
「知ってる人が隣で良かった」
いくら地元とは言え、晴美姉ちゃんとはそこそこ歳も離れているから共通の知り合いなんてほとんどいない。一人ですみっこの方で参列すればいいかと思っていたものの、やはり知っている人の隣は安心するもの。晴美姉ちゃんの配慮に感謝せねば。
披露宴の間は先生がたくさん話しかけてくれたおかげで、楽しく参加できた。
二人の生い立ちを振り返るスライドショーでは、晴美姉ちゃんが私の子守りをしている昔の写真が出てきたり、深山先生や他の先生方と一緒に写っている写真が出てきたり。時折指差しながら先生と笑い合う。
終盤の新婦から両親への手紙に感動して泣きそうになったりもした。
うっすらと滲んだ涙を拭いた後。写真撮影の時間では晴美姉ちゃんとツーショットも撮ることができて大満足だった。
カメラマンさんにも撮ってもらい、私のスマートフォンでも撮ってもらい。晴美姉ちゃんも自分のスマートフォンで撮ってもらっていた。
後で撮った写真を送り合おう。そう思って席に戻ろうとすると、晴美姉ちゃんが思い出したかのように
「美也子、せっかくだから深山先生とも写真撮ったら?」
と笑顔を向けた。
「え?」
「振り袖姿、どうせ今のやつしか写真撮ってないんでしょ?」
「それはそうだけど……」
「深山先生も美也子と二人で写真撮りたいでしょ?」
まさか、そんなわけないでしょ。
そう思って晴美姉ちゃんに断りを入れようとしたら。
「確かに。撮りたい」
「え!?」
まさかの返事に、固まった。
「ほら、美也子!深山先生!私が撮ってあげる!」
晴美姉ちゃんにそう言われて、断る間も無くノリノリの先生が私を引き寄せる。
ぴったりと先生にくっついた肩が、やけに熱く感じた。
「ほら、美也子もっと笑って」
「え……うん」
何故か晴美姉ちゃんが写真を撮ってくれて、よくわからないけど先生につられるようにカメラにぎこちない笑顔を向けた。
何故今日の主役が私たちにカメラを向けているのか、その主役がとても楽しそうだから聞くのはやめた。
「後で送っとくねー!」
そう言って晴美姉ちゃんはすぐに他の人との写真の時間になり、今度は撮られる側に戻っていた。
「みゃーこはこの後は?いつ東京戻るの?」
席に戻ってから晴美姉ちゃんを眩しく見つめていると、先生が話しかけてくる。
「私?……この後はちょっと実家の方見に行って、今日はホテル泊まる予定。明日の最終便で向こう戻るよ」
今日は土曜日だ。仕事の関係もあり、明日の最終便の飛行機のチケットを取っていた。
「一人で実家行くの?」
「うん。別に帰省したからって会うような友達もいないし、ホテルのチェックインまで時間あるし。どうせなら久しぶりに街中とかそれこそ高校とか、いろいろ見に行きたいなって思ってたから、その辺ぶらぶらしてる予定だよ」
上京してから、初めての帰省だった。
いろいろ見たいところがあるけど、誘うような友達なんていない。
晴美姉ちゃんを見つめながら答えると、
「じゃあそれ、俺も付き合っていい?」
と言われて、思わず振り向いた。
「え?先生が?なんで?」
「なんでって言われても。せっかく久しぶりに会ったし、みゃーこともっと話したいなと思って。それに高校も行くなら、関係者の許可が無いと今入れないから」
「あ、そうなの?」
その辺は全く考えていなかった。確かに部外者が勝手に入るわけにはいかないか。
「うん。だから俺がいた方が何かと便利だと思うよ」
「先生も暇なの?」
「うん。この後何も予定無い」
「……じゃあ、お願いしようかな」
「よし、決まり!」
嬉しそうな先生は、最近の学校生活をいろいろと話してくれた。あの先生が転勤したとか、この先生が寿退社したとか。
私が在籍していた頃の教頭先生が今校長先生をやっているとか。
同じテーブルにいる人たちが正に学校関係者だ。
言われてみれば懐かしく見えてくる顔ぶれに、いつのまにか先生の話を楽しく聞いていた。
1
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」


あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる