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「冬馬おまたせ」
「ん、行こうか」
「うん」
「気を付けていってらっしゃい」
「行ってきます」
お父さんに手を降り、冬馬と並んで雪道を歩く。
昼前から雪がちらついており、体感だけなら晴れるより幾分か温かく感じた。
昨日足首ほどまで積もっていた雪がさらに深さを増していく。
「昨日思ったけど、しずくってどちらかって言うと母親似なんだな」
「やっぱそう思う?」
「うん。目元の感じとか笑い方がそっくりだった」
「なんか改めて言われるとちょっと恥ずかしいよね」
「そうだな。でも雅弥は父親似なんだな」
「うん。昔はお母さんによく似てたんだけど、だんだんお父さん似になってきちゃって。普通女の子が父親似で男の子が母親似になるって聞くのに、なんか我が家は逆なんだよね」
「へぇ」
「雅弥なんていつのまにか私より背も高くなっちゃったからすごい変な感じするよ。昔はこーんなに小さかったのに」
「忘れ物多くてよくコンビニに探しにきてたよな。帽子とか水筒とか」
「そうそう。ふふっ、雅弥ったらすぐ何でも忘れてきちゃうから、色んなところに探しに行ったり電話かけたりして謝りに行って。コンビニに何回も取りに行ったよね。最初は冬馬がバイトしてるなんて思わなかったから、あの時はびっくりしたなあ」
確かその時に雅弥のお世話をしていることを知った冬馬が、自分の家庭のことも喋ってくれたんだっけ。
それから定期的にお互いの話を聞くようになって。雅弥なんてコンビニでよく会うもんだから冬馬に懐いちゃって遊ぼう遊ぼうってうるさかったから大変だったなあ。
懐かしさに目を細めながら歩いていると、よそ見していたからか氷の上に雪が積もった場所で足が滑る。
「ひゃっ……」
そのまま転びそうになったのをガシッと冬馬が支えてくれて、「危なっかしいな。俺の腕に捕まっとけ」という言葉に甘えて、腕を組んで冬馬の実家へ向かった。
私の実家からは徒歩で二十分ほどかかっただろうか。次第に見えてきたマンションの三階のインターホンを押してから鍵を開けた冬馬は、「ただいまー」と言って中に入っていく。
「おいで」
「お邪魔します……」
冬馬に手を引かれ私も中に入ると、
「あなたがしずくさん?いらっしゃい」
冬馬と目元がそっくりな、綺麗な女性が出迎えてくれた。
「うちの母親。んでこっちが大河原 しずく。俺の彼女で婚約者」
それぞれを手で示してくれて、お互いに「はじめまして」と頭を下げ合う。
婚約者という紹介の仕方が嬉しいけれど全然慣れなくて動揺しそうになる。
「大河原 しずくと申します」
「冬馬の母です。よろしくね」
「よろしくお願いします」
冬馬のお母さんはとても優しい笑顔で迎え入れてくれた。
冬馬が昨日ホッとした表情をしていたのがわかる気がする。
「だから緊張する必要ないって言ったろ?」
小声で言う冬馬にじとりとした視線を送る。
緊張したくてしてるわけじゃない。
リビングに向かい、ふかふかのソファに促されて腰掛けるとケーキと淹れたての紅茶を出してくれた。
「まさか冬馬がこんな素敵なお嬢さんを連れてきてくれるなんて思わなかったから全然準備できてないの。ごめんなさいね」
「いえ、お構いなく。むしろ忙しい年末に急に来てしまって申し訳ありません」
「いいのよ、気にしないで。年末年始はにぎやかな方が楽しいもの。お会いできてすごく嬉しいわ」
「ありがとうございます。私もお会いできて嬉しいです」
「あらあら、気を遣わなくてもいいのよ?ふふっ、いつも冬馬がお世話になってるみたいで、迷惑かけてないかしら」
「迷惑だなんてとんでもないです。冬馬さんには昔から助けてもらっていて、感謝しかないんです」
「あら感謝?うちの冬馬に?あの子がそんなに褒めてもらえるようなことしてたかしら」
「はい」
「おい、勝手に人の話で盛り上がんなよ」
「なあに?未来のお嫁さんに嫌われないようにこっちは必死なのよ?お母さんはね、お嫁さんとは仲良くやっていきたいタイプなの」
「それはいいけど、俺の話で盛り上がるのはやめてくれよ」
照れた顔をして私たちの会話を遮ろうと割って入ってくる冬馬も交え、終始穏やかに会話を楽しんだ。
「冬馬おまたせ」
「ん、行こうか」
「うん」
「気を付けていってらっしゃい」
「行ってきます」
お父さんに手を降り、冬馬と並んで雪道を歩く。
昼前から雪がちらついており、体感だけなら晴れるより幾分か温かく感じた。
昨日足首ほどまで積もっていた雪がさらに深さを増していく。
「昨日思ったけど、しずくってどちらかって言うと母親似なんだな」
「やっぱそう思う?」
「うん。目元の感じとか笑い方がそっくりだった」
「なんか改めて言われるとちょっと恥ずかしいよね」
「そうだな。でも雅弥は父親似なんだな」
「うん。昔はお母さんによく似てたんだけど、だんだんお父さん似になってきちゃって。普通女の子が父親似で男の子が母親似になるって聞くのに、なんか我が家は逆なんだよね」
「へぇ」
「雅弥なんていつのまにか私より背も高くなっちゃったからすごい変な感じするよ。昔はこーんなに小さかったのに」
「忘れ物多くてよくコンビニに探しにきてたよな。帽子とか水筒とか」
「そうそう。ふふっ、雅弥ったらすぐ何でも忘れてきちゃうから、色んなところに探しに行ったり電話かけたりして謝りに行って。コンビニに何回も取りに行ったよね。最初は冬馬がバイトしてるなんて思わなかったから、あの時はびっくりしたなあ」
確かその時に雅弥のお世話をしていることを知った冬馬が、自分の家庭のことも喋ってくれたんだっけ。
それから定期的にお互いの話を聞くようになって。雅弥なんてコンビニでよく会うもんだから冬馬に懐いちゃって遊ぼう遊ぼうってうるさかったから大変だったなあ。
懐かしさに目を細めながら歩いていると、よそ見していたからか氷の上に雪が積もった場所で足が滑る。
「ひゃっ……」
そのまま転びそうになったのをガシッと冬馬が支えてくれて、「危なっかしいな。俺の腕に捕まっとけ」という言葉に甘えて、腕を組んで冬馬の実家へ向かった。
私の実家からは徒歩で二十分ほどかかっただろうか。次第に見えてきたマンションの三階のインターホンを押してから鍵を開けた冬馬は、「ただいまー」と言って中に入っていく。
「おいで」
「お邪魔します……」
冬馬に手を引かれ私も中に入ると、
「あなたがしずくさん?いらっしゃい」
冬馬と目元がそっくりな、綺麗な女性が出迎えてくれた。
「うちの母親。んでこっちが大河原 しずく。俺の彼女で婚約者」
それぞれを手で示してくれて、お互いに「はじめまして」と頭を下げ合う。
婚約者という紹介の仕方が嬉しいけれど全然慣れなくて動揺しそうになる。
「大河原 しずくと申します」
「冬馬の母です。よろしくね」
「よろしくお願いします」
冬馬のお母さんはとても優しい笑顔で迎え入れてくれた。
冬馬が昨日ホッとした表情をしていたのがわかる気がする。
「だから緊張する必要ないって言ったろ?」
小声で言う冬馬にじとりとした視線を送る。
緊張したくてしてるわけじゃない。
リビングに向かい、ふかふかのソファに促されて腰掛けるとケーキと淹れたての紅茶を出してくれた。
「まさか冬馬がこんな素敵なお嬢さんを連れてきてくれるなんて思わなかったから全然準備できてないの。ごめんなさいね」
「いえ、お構いなく。むしろ忙しい年末に急に来てしまって申し訳ありません」
「いいのよ、気にしないで。年末年始はにぎやかな方が楽しいもの。お会いできてすごく嬉しいわ」
「ありがとうございます。私もお会いできて嬉しいです」
「あらあら、気を遣わなくてもいいのよ?ふふっ、いつも冬馬がお世話になってるみたいで、迷惑かけてないかしら」
「迷惑だなんてとんでもないです。冬馬さんには昔から助けてもらっていて、感謝しかないんです」
「あら感謝?うちの冬馬に?あの子がそんなに褒めてもらえるようなことしてたかしら」
「はい」
「おい、勝手に人の話で盛り上がんなよ」
「なあに?未来のお嫁さんに嫌われないようにこっちは必死なのよ?お母さんはね、お嫁さんとは仲良くやっていきたいタイプなの」
「それはいいけど、俺の話で盛り上がるのはやめてくれよ」
照れた顔をして私たちの会話を遮ろうと割って入ってくる冬馬も交え、終始穏やかに会話を楽しんだ。
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