キミと踏み出す、最初の一歩。

青花美来

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結局そのまま考え過ぎて頭がショートしてしまったのか、湊くんに頭を撫でられたまま眠ってしまうという失態をおかしてしまった。

起きた時にはもちろん放課後。

湊くんはずっと側についてくれていて、授業をサボらせてしまった。

申し訳なくて謝るわたしに湊くんは


「俺が千春ちゃんの側にいたかっただけだからいいんだよ」


と甘い言葉を言ってくる。

自分の気持ちに気が付いたから、そんな些細な言葉ですらわたしは顔を真っ赤にしてしまうのに。

恥ずかしくて顔を隠したいわたしと、


「ははっ、本当可愛い。顔見せて」


なんてわざともっとわたしを照れさせて遊んでくる湊くん。

もうわけがわかんなくて、でも楽しくて幸せだと思った。


「一緒に帰ろ」

「うん」


並んで歩く帰り道は、もうすっかり慣れた。

なんならいつも一緒に帰っているから、隣に湊くんがいないと逆に変な感じがしてしまいそう。


「千春ちゃんはさ」

「ん?」

「友だちは俺がいればそれでいいって言ってたよな」

「う、ん……」


改めてそう言われると、なんて大胆なことを言ってしまったのかと自分に驚く。


「あれ、俺もそう思った」

「え?」

「友だち。俺も千春ちゃんだけでいい。千春ちゃんが俺のことをわかってくれてれば、それでいいなって思った」

「湊くん……」


ニカっと笑った湊くんにまた胸が激しく動き出す。


「千春ちゃんが俺のために怒ってくれて、嬉しかった。だけど、無理しなくていいんだよ」

「……無理なんてしてないよ」

「本当?」

「うん。言ったでしょ?湊くんが悪く言われてるのが耐えられなかっただけだもん」


わたしのことを脅してるとか、騙してるとか。

湊くんはそんな人じゃないのにって思ったら、身体が勝手に動いてたんだ。

後悔もしてないし、無理なんてしてない。


「……でも、俺が心配だから」

「心配?」

「うん。心配」


湊くんはわたしの頭を撫でる。

それが心地良くて、すっと目を細めた。


「俺のために何かしてくれるのはすごく嬉しい。だけど、それ以上にすごく心配になる」

「どうして?」

「それ、聞いちゃう?」

「え?」

「俺、結構アピールしてたつもりだけど……もしかして気付いてない?」

「な、にを……」

「……そっか、千春ちゃんって鈍感なのか……そりゃそうだよな」


湊くんは勝手にそう頷いていて、わたしはますます首を傾げる。


「俺、なんとも思ってない子のことお姫様抱っこしたりしないよ?」

「え……」

「ははっ。……ちょっとあっちの公園寄って行ってもいい?」

「う、うん。いいけど」


誘われるがまま、わたしたちは近所の公園に入った。
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