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「湊くん……川上くんは、みんなが思ってるような怖い人じゃない」
「え……」
「何それ……」
「わたしは脅されてないし、助けなんていらない。川上くんはわたしの友だちだから」
はっきりそう告げると、
「え、友だち?」
「やっぱそうなんだよ……」
「だから言ったじゃん……川上くんと友だちとか、ヤバくない?」
と焦ったような言葉が聞こえた。
「川上くんは、喧嘩なんてしないよ。ヤンキーともつるんでないし夜遊びもしてない。妹想いで優しくて、本当はみんなと仲良くしたいはずなのに見た目で変な噂が流れてるからって諦めてるんだよ。全然怖い人なんかじゃない。黒髪にしたのだって、わたしと一緒にいることでわたしが悪い噂に巻き込まれないようにって、そう色々考えてくれただけなのに」
自分でも何を言っているのか、何が言いたいのか途中からわからなくなってしまった。
「確かに校則違反してたのは事実だし、金髪だったから話しかけるとか怖いしわたしも最初は怖かったよ!だけど、話せば話すほど普通の男の子だった!緊張もするし、照れたりもする、勉強だって真面目にしてるし楽しければ大口開けて笑う人だよ!みんなと変わらない、ただの中学一年生の男の子だよ!それを……みんなは川上くんのことを知ろうともしないで陰口ばっかり話して……。酷いよ……」
だけど、一度言葉にしてしまえば止まることを知らなくて。
ずっと胸の中で抱えていた想いが、あふれていく。
「だ……って、川上くんにはいろんな噂があるじゃん……怖い人じゃないとか言われても信用できないよ」
「確かに噂はいっぱいあるよ。だけど、それが全てじゃない!それに、信用できないって言うならその噂が本当かどうか本人に確かめたの!?」
「え、いや……」
「確かめてもいないのに、どうしてそれを信用できないだなんて酷いこと言えるの!?」
「っ……」
「……わかってるよ。そんなこと言われたって、あんなにいろんな噂があったら聞くのも怖いし近寄るのも怖いと思う。確認のしようがないんだよね。それはわかるよ。わたしだって最初はそう思ってたから。……だけど、それっておかしいなって思った。だって噂が本当なら、何人かは川上くんがそんな悪いことしてるところを見たことある人がいるはずじゃん。そんなところ、誰か一人でも見たことあるの……!?他校のヤンキーと一緒にいるところ、誰かと喧嘩してるところ。見たって人を、みんなは一人でも知ってるの……!?」
「あ……」
誰一人として、湊くんが夜遊びをしているのも喧嘩しているのも見たことがない。
当たり前だ。だってそんな事実、どこにも無いのだから。
「実際に見た人がいるかどうかも知らないのに、想像で勝手に噂して、わたしのこと脅してるとか陰口叩いて……それは違うと思う。ダメなことだと思う。それが一番、川上くんを傷付けてると思う」
どんなに悪い噂がある人でも、その人の本当の部分なんて、きっと誰にもわからない。
もしかしたら見た目だけで、中身は自分たちと同じただの中学生かもしれない。
その人がたとえ笑っていても、心の中では傷付いてるかもしれない。
何も表情に出さない人でも、心の中では泣いてるかもしれない。
それは、ただ顔を見ただけじゃ全くわからない。
その人自身を知ろうとしない限り、絶対にわからないんだ。
「え……」
「何それ……」
「わたしは脅されてないし、助けなんていらない。川上くんはわたしの友だちだから」
はっきりそう告げると、
「え、友だち?」
「やっぱそうなんだよ……」
「だから言ったじゃん……川上くんと友だちとか、ヤバくない?」
と焦ったような言葉が聞こえた。
「川上くんは、喧嘩なんてしないよ。ヤンキーともつるんでないし夜遊びもしてない。妹想いで優しくて、本当はみんなと仲良くしたいはずなのに見た目で変な噂が流れてるからって諦めてるんだよ。全然怖い人なんかじゃない。黒髪にしたのだって、わたしと一緒にいることでわたしが悪い噂に巻き込まれないようにって、そう色々考えてくれただけなのに」
自分でも何を言っているのか、何が言いたいのか途中からわからなくなってしまった。
「確かに校則違反してたのは事実だし、金髪だったから話しかけるとか怖いしわたしも最初は怖かったよ!だけど、話せば話すほど普通の男の子だった!緊張もするし、照れたりもする、勉強だって真面目にしてるし楽しければ大口開けて笑う人だよ!みんなと変わらない、ただの中学一年生の男の子だよ!それを……みんなは川上くんのことを知ろうともしないで陰口ばっかり話して……。酷いよ……」
だけど、一度言葉にしてしまえば止まることを知らなくて。
ずっと胸の中で抱えていた想いが、あふれていく。
「だ……って、川上くんにはいろんな噂があるじゃん……怖い人じゃないとか言われても信用できないよ」
「確かに噂はいっぱいあるよ。だけど、それが全てじゃない!それに、信用できないって言うならその噂が本当かどうか本人に確かめたの!?」
「え、いや……」
「確かめてもいないのに、どうしてそれを信用できないだなんて酷いこと言えるの!?」
「っ……」
「……わかってるよ。そんなこと言われたって、あんなにいろんな噂があったら聞くのも怖いし近寄るのも怖いと思う。確認のしようがないんだよね。それはわかるよ。わたしだって最初はそう思ってたから。……だけど、それっておかしいなって思った。だって噂が本当なら、何人かは川上くんがそんな悪いことしてるところを見たことある人がいるはずじゃん。そんなところ、誰か一人でも見たことあるの……!?他校のヤンキーと一緒にいるところ、誰かと喧嘩してるところ。見たって人を、みんなは一人でも知ってるの……!?」
「あ……」
誰一人として、湊くんが夜遊びをしているのも喧嘩しているのも見たことがない。
当たり前だ。だってそんな事実、どこにも無いのだから。
「実際に見た人がいるかどうかも知らないのに、想像で勝手に噂して、わたしのこと脅してるとか陰口叩いて……それは違うと思う。ダメなことだと思う。それが一番、川上くんを傷付けてると思う」
どんなに悪い噂がある人でも、その人の本当の部分なんて、きっと誰にもわからない。
もしかしたら見た目だけで、中身は自分たちと同じただの中学生かもしれない。
その人がたとえ笑っていても、心の中では傷付いてるかもしれない。
何も表情に出さない人でも、心の中では泣いてるかもしれない。
それは、ただ顔を見ただけじゃ全くわからない。
その人自身を知ろうとしない限り、絶対にわからないんだ。
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