17 / 30
****
17
しおりを挟む
「川上くん……?」
思わずそう問いかけると、
「んだよ、湊って呼ぶんじゃねぇの?」
と赤い顔で不貞腐れたような声を出す。
「あ、そうだった……。みなと、くん」
「……うん」
「みなとくん。……湊、くん」
「慣れた?」
「はい」
「よし。じゃあ今からはお互いそれで」
呼び方一つで何か変わるのかと聞かれたらそれはわたしにもわからないけれど、多分もっとお互いの距離が縮まるんだと思う。
「お兄ちゃんももしかしてあがり症になった……?」
湊くんの顔の赤さを見てそう言った美雨ちゃんに、湊くんは嫌そうに
「ちげーよ。照れてんの!」
と怒っていて、美雨ちゃんが小さく笑う。
「さっきの千春ちゃん、すんごい可愛かったもんね」
「なっ……そんなことないよっ」
「ううん。さっきの千春ちゃん、とっても可愛かった。ね?お兄ちゃん」
「……そりゃ、まぁ……うん……。つーか、それより美雨はいつまでここにいんだよ。飲み物置いたらとっとと自分の部屋戻れ」
「えー、だってわたしも千春ちゃんと仲良くなりたいもん。わたし、千春ちゃんのこと大好きだもん!」
湊くんが肯定してくれたことも、美雨ちゃんがわたしのことを大好きと言ってくれるのも、お世辞でもすごく嬉しい。
美雨ちゃんとは初めて会った時から何回か顔を合わせたことがあるけれど、その度に緊張しながらもわたしに挨拶をしてくれる。
笑顔を見せてくれたり、こうやって同じ空間に長くいてくれたり。
多分、わたしに心を開いてくれているんだと思う。
それが嬉しいし、こうやって言葉で気持ちを表してくれるのが本当にすごいことだと思う。
でも湊くんはそれが面白くないのか、
「お前が千春ちゃんのこと大好きなのはわかったから、とにかく一旦戻れ!それか母さんのクッキーが焼けた頃だろ!一緒にデコるだかなんだかって言ってなかったか?」
「あ、そうだった!わたし行ってくる!千春ちゃん、可愛いクッキー持ってくるからちょっと待っててね!」
「あ、うん。ありがとう……」
美雨ちゃんがドタバタと部屋を出て階段を降りていく。
その音を聞いて、湊くんは気まずそうに頭を掻きながら
「美雨がごめん。あいつ、なんか知らないけど千春ちゃんにめちゃくちゃ懐いてるっぽい」
とため息をついた。
「全然気にしてないよ。むしろ懐いてくれて嬉しい」
「そうか?」
「うん。わたし、一人っ子だから兄妹とかそういうのにずっと憧れてたの。だから二人の仲の良さが羨ましいんだ」
「……そうか」
湊くんはしばらく照れたような素振りを見せていたけれど、すぐにいつもの湊くんに戻った。
ゲームの話や学校の話、この間の夏祭りの話なんかをしているうちに時間は経ち、美雨ちゃんがアイシングでデコレーションした可愛らしいクッキーを持って戻って来た。
「おいしい!それに可愛くてすごいね。美雨ちゃんが作ってくれたの?」
「うん。クッキーの生地も一緒に作ったんだ。甘すぎたりしない?」
「ううん。ちょうどいいよ。おいしい。ありがとう」
そこから美雨ちゃんも交えて三人でゲームをすることになり、滅多にやらないわたしは二人に教えてもらいながらどうにかついていく。
気が付けば窓の外は暗くなって来ていて、
「湊ー!美雨ー!千春ちゃーん!ご飯よー!」
と、二人のお母さんに呼ばれてリビングに向かった。
思わずそう問いかけると、
「んだよ、湊って呼ぶんじゃねぇの?」
と赤い顔で不貞腐れたような声を出す。
「あ、そうだった……。みなと、くん」
「……うん」
「みなとくん。……湊、くん」
「慣れた?」
「はい」
「よし。じゃあ今からはお互いそれで」
呼び方一つで何か変わるのかと聞かれたらそれはわたしにもわからないけれど、多分もっとお互いの距離が縮まるんだと思う。
「お兄ちゃんももしかしてあがり症になった……?」
湊くんの顔の赤さを見てそう言った美雨ちゃんに、湊くんは嫌そうに
「ちげーよ。照れてんの!」
と怒っていて、美雨ちゃんが小さく笑う。
「さっきの千春ちゃん、すんごい可愛かったもんね」
「なっ……そんなことないよっ」
「ううん。さっきの千春ちゃん、とっても可愛かった。ね?お兄ちゃん」
「……そりゃ、まぁ……うん……。つーか、それより美雨はいつまでここにいんだよ。飲み物置いたらとっとと自分の部屋戻れ」
「えー、だってわたしも千春ちゃんと仲良くなりたいもん。わたし、千春ちゃんのこと大好きだもん!」
湊くんが肯定してくれたことも、美雨ちゃんがわたしのことを大好きと言ってくれるのも、お世辞でもすごく嬉しい。
美雨ちゃんとは初めて会った時から何回か顔を合わせたことがあるけれど、その度に緊張しながらもわたしに挨拶をしてくれる。
笑顔を見せてくれたり、こうやって同じ空間に長くいてくれたり。
多分、わたしに心を開いてくれているんだと思う。
それが嬉しいし、こうやって言葉で気持ちを表してくれるのが本当にすごいことだと思う。
でも湊くんはそれが面白くないのか、
「お前が千春ちゃんのこと大好きなのはわかったから、とにかく一旦戻れ!それか母さんのクッキーが焼けた頃だろ!一緒にデコるだかなんだかって言ってなかったか?」
「あ、そうだった!わたし行ってくる!千春ちゃん、可愛いクッキー持ってくるからちょっと待っててね!」
「あ、うん。ありがとう……」
美雨ちゃんがドタバタと部屋を出て階段を降りていく。
その音を聞いて、湊くんは気まずそうに頭を掻きながら
「美雨がごめん。あいつ、なんか知らないけど千春ちゃんにめちゃくちゃ懐いてるっぽい」
とため息をついた。
「全然気にしてないよ。むしろ懐いてくれて嬉しい」
「そうか?」
「うん。わたし、一人っ子だから兄妹とかそういうのにずっと憧れてたの。だから二人の仲の良さが羨ましいんだ」
「……そうか」
湊くんはしばらく照れたような素振りを見せていたけれど、すぐにいつもの湊くんに戻った。
ゲームの話や学校の話、この間の夏祭りの話なんかをしているうちに時間は経ち、美雨ちゃんがアイシングでデコレーションした可愛らしいクッキーを持って戻って来た。
「おいしい!それに可愛くてすごいね。美雨ちゃんが作ってくれたの?」
「うん。クッキーの生地も一緒に作ったんだ。甘すぎたりしない?」
「ううん。ちょうどいいよ。おいしい。ありがとう」
そこから美雨ちゃんも交えて三人でゲームをすることになり、滅多にやらないわたしは二人に教えてもらいながらどうにかついていく。
気が付けば窓の外は暗くなって来ていて、
「湊ー!美雨ー!千春ちゃーん!ご飯よー!」
と、二人のお母さんに呼ばれてリビングに向かった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【シリーズ1完】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~シリーズ2
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる