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それから一週間ほどが経ったある日のこと。

わたしたちは毎日コツコツと宿題を進めたこともあって、意外にも半分以上進んでいた。


「白咲さん」

「ん?どうしたの?」


気が付けばわたしも川上くんとの会話に慣れてきて、緊張することも減ってきた。

敬語じゃなくて、自然に話せるようにもなってきて胸を張って友だちだと言える気がする。

この調子で学校でも友だちができればなあ……なんて思っていると、今日もコンビニでアイスを買ってくれた川上くんが口を開いた。


「来週、夏祭り一緒に行かねぇ?」

「夏祭り?」

「あぁ。二丁目にある神社わかる?」

「二丁目……あぁ、なんとなく見たことあるかも」

「うん。そこで毎年結構デカい祭りやるんだって。花火も上がるらしいよ」

「そうなんだ、全然知らなかった」

「俺も。それで美雨が行くって張り切っててさ。でも美雨は友だちと行くし、中学にもなって親と行くのは嫌だし、かと言って一人で行くのもなーと思って。白咲さん、俺の勉強付き合ってくれてるから夏らしいこと全然できてないだろ。宿題もそろそろ終わりそうだしさ。良かったら、どう?」

「うん!行きたい!です!」

「じゃあ決まり」


お祭りかあ。いつぶりだろう。

地元のお祭りは小さい頃は行っていたけれど、やっぱり友だちがいないと一緒に行く人もいなかったから、最後に行ったのがいつか全然思い出せない。

何着て行こう。お小遣いはいくらもっていけばいいかな。花火って、打ち上げだよね。近くから見れるのかな。どうしよう、すごく楽しみ。

わくわくがとまらなくて、川上くんに


「どんな屋台が出るんだろうっ、クレープとかあるかな!」


といろいろと聞いてしまう。

川上くんだって初めて行くんだから知らないはずなのに、


「どうだろうな、あるといいな。他に行きたい屋台は?」


テンションの高いわたしの話に頷いてくれる。


「いちご飴でしょ、わたあめでしょ、あとはからあげとー……あ、たこ焼き!」

「ははっ、食いもんばっかじゃん」

「えー、ダメかなあ?あ、型抜きとかしたい!」

「お、型抜きいいな。俺も久しぶりにしたい」

「楽しみだなあ」

「だな。また近くなったら時間決めようぜ。調べてくるから」

「うん」


笑顔で頷くと、川上くんが小さく笑う。


「どうかした?」

「いや、白咲さんって、慣れると結構喋るタイプなんだなと思って」

「え!あ!ごめんなさい!うるさかった?」

「まさか。白咲さんが心開いてくれたんだなと思うと嬉しいんだよ」


柔らかく笑う川上くんに、わたしもつられて笑ってしまった。




そしてそれから三日後。


『祭りの日だけど、昼は暑いから夕方くらいからにしねぇ?』


さっそく連絡がきて、


『そうだね、そうしよう』


と返す。

夕方の四時に神社の前で待ち合わせすることにして、お母さんに夏祭りに行くことを伝えた。


「あら、じゃあ浴衣着て行く?」

「え?浴衣?」

「うん。引っ越しの時にね、お母さんが昔着てた浴衣が久しぶりに出てきたの。もしかしたら千春が使うかもしれないって思って、クリーニングに出しておいたのよ」


そう言ってお母さんはタンスのある部屋に向かい、そこから綺麗な紺色の浴衣を出してきてくれた。


「キレイ……」

「そうでしょ?アジサイのお花の柄なの」


大きく描かれたアジサイが、見ているだけで涼しくて大人っぽくて可愛い。

こんな浴衣、いつか着てみたいって実は前から思ってた。


「……でも、わたし浴衣なんて自分じゃ着れないよ」


どうやって着るのかもよくわかんないし、前に着たのも確か幼稚園の頃だし……。

そんなわたしの不安も、お母さんはきょとんとした後に笑い飛ばしてくれた。


「ふふっ、そんなのお母さんが着せてあげるから大丈夫よ。そうね、髪の毛も可愛くしてあげる」

「お母さん、そんなことできるの?」

「人並みにはね。……こっちに越してきてから、千春が明るくなったの、お父さんもお母さんも気付いてた。きっと素敵なお友だちができたんだろうって話してたの」

「お母さん……」

「お祭りも、その子と行くんでしょう?」

「……うん」

「今度、その子のこと紹介してね。ごちそう作っちゃうから」

「もうっ、張り切りすぎだよっ」

「そんなことないわよ。千春と仲良くしてくれてありがとうって言いたいの」

「……ありがとお母さん」

「うん。じゃあ当日はお母さんに任せて!とびっきり可愛くしてあげるから!」


わたし以上にお母さんの方が張り切っていて楽しそうだ。

でも、浴衣着るの楽しみだなあ。

早く当日になってほしくて、そわそわが止まらなかった。
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