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翌朝。夏休み初日。
わたしは川上くんに言った通り、朝十時に近所の図書館にいた。
中は冷房が効いていてとても涼しく、集中して勉強できそうだとホッとする。
夏休みだからか、図書館の中は混んでいて窓際の勉強スペースにはすでに多くの人がいた。
空いている席を探していると、端の方でわたしに手を振る人がいてそちらに視線を向ける。
「あ……」
一際目立つ金髪がちらり。
にっこりと笑った川上くんがそこにいた。
「おはよ」
「おはようございます。川上くん、早いですね」
「だろ?さすがにまた初日から白咲さんのこと待たせたくなかったから、珍しく昨日早寝したんだ。ここ座って」
「ありがとうございます……。絶対今日も遅れてくると思ってました」
「失礼な、俺だってやる時はやるんだよ」
小声でそんなことを言い合い、川上くんの隣に腰掛ける。
どうやら川上くんはその図書館には不釣り合いな金髪のせいで、ここでも他の人から距離をあけられているらしい。
同じように勉強場所を探しにきた人も、川上くんの隣しか空いていないのを見ると他のところへいなくなってしまう。
おかげでわたしはすんなり座れたし、川上くんは今日も全く気にしていなさそうだけど。
「なんか、制服着てないと変な感じするな」
「確かに……川上くんって、もっとギラギラした感じの私服かと思ってました」
「なわけねーだろ。まぁ、服とかよくわかんないし、適当に選んできたけど……。白咲さんこそ、もっとシンプルな服着てるイメージだったから意外かも」
「わたしも適当だけど……暑いから今はこんなのばっかりです」
「そっか」
川上くんはサラッとした白シャツにデニムを合わせていた。鞄にはキャップが乗っているから、多分それも被ってきたんだと思う。
シンプルながらかっこよくて、ドキドキしてしまう。
わたしなんてただタンスにあったTシャツとショーパンを合わせてきただけで、適当な格好だ。
すでに宿題を広げていた川上くんは、英語をやっていたようだ。
「白咲さんが来るまでに単語終わらせちゃおうと思ったんだけど、間に合わなかったわ」
見せてもらったプリントには、びっしりと単語が書かれていて驚いた。
「すごい、もうこんなに進んでる」
「書いただけでちゃんと頭に入ってるのかは自分でもよくわかんないけどな」
「川上くん頭良いから大丈夫ですよ」
わたしも負けてられない。
そう思って同じように宿題を広げる。
たまに川上くんがわからないところを聞いてくるくらいで、基本的には喋ることもなく静かに集中して取り組むことができた。
「白咲さん、ごめんここ教えて」
「ん?あぁ、これは……」
どうしても静かにしないといけないから、顔を近付ける。
ふとした時にその近さに驚いて
「っ!?……ごめんなさい、近すぎましたねっ……」
「いや、俺もごめん……」
と、恥ずかしくなって顔をそらしたりもする。
だけどしばらくするとそんな近さにも慣れてきて、
「白咲さん、ここは?」
「これは現在進行形だからまずはこっちの動詞にingを付けないといけなくて……」
「あ、そっか。それでbe動詞を主語に合わせるのか。なるほど。ありがとう」
緊張もせずに勉強が進む。
二時間も経つ頃にはかなり進んでいた。
わたしは川上くんに言った通り、朝十時に近所の図書館にいた。
中は冷房が効いていてとても涼しく、集中して勉強できそうだとホッとする。
夏休みだからか、図書館の中は混んでいて窓際の勉強スペースにはすでに多くの人がいた。
空いている席を探していると、端の方でわたしに手を振る人がいてそちらに視線を向ける。
「あ……」
一際目立つ金髪がちらり。
にっこりと笑った川上くんがそこにいた。
「おはよ」
「おはようございます。川上くん、早いですね」
「だろ?さすがにまた初日から白咲さんのこと待たせたくなかったから、珍しく昨日早寝したんだ。ここ座って」
「ありがとうございます……。絶対今日も遅れてくると思ってました」
「失礼な、俺だってやる時はやるんだよ」
小声でそんなことを言い合い、川上くんの隣に腰掛ける。
どうやら川上くんはその図書館には不釣り合いな金髪のせいで、ここでも他の人から距離をあけられているらしい。
同じように勉強場所を探しにきた人も、川上くんの隣しか空いていないのを見ると他のところへいなくなってしまう。
おかげでわたしはすんなり座れたし、川上くんは今日も全く気にしていなさそうだけど。
「なんか、制服着てないと変な感じするな」
「確かに……川上くんって、もっとギラギラした感じの私服かと思ってました」
「なわけねーだろ。まぁ、服とかよくわかんないし、適当に選んできたけど……。白咲さんこそ、もっとシンプルな服着てるイメージだったから意外かも」
「わたしも適当だけど……暑いから今はこんなのばっかりです」
「そっか」
川上くんはサラッとした白シャツにデニムを合わせていた。鞄にはキャップが乗っているから、多分それも被ってきたんだと思う。
シンプルながらかっこよくて、ドキドキしてしまう。
わたしなんてただタンスにあったTシャツとショーパンを合わせてきただけで、適当な格好だ。
すでに宿題を広げていた川上くんは、英語をやっていたようだ。
「白咲さんが来るまでに単語終わらせちゃおうと思ったんだけど、間に合わなかったわ」
見せてもらったプリントには、びっしりと単語が書かれていて驚いた。
「すごい、もうこんなに進んでる」
「書いただけでちゃんと頭に入ってるのかは自分でもよくわかんないけどな」
「川上くん頭良いから大丈夫ですよ」
わたしも負けてられない。
そう思って同じように宿題を広げる。
たまに川上くんがわからないところを聞いてくるくらいで、基本的には喋ることもなく静かに集中して取り組むことができた。
「白咲さん、ごめんここ教えて」
「ん?あぁ、これは……」
どうしても静かにしないといけないから、顔を近付ける。
ふとした時にその近さに驚いて
「っ!?……ごめんなさい、近すぎましたねっ……」
「いや、俺もごめん……」
と、恥ずかしくなって顔をそらしたりもする。
だけどしばらくするとそんな近さにも慣れてきて、
「白咲さん、ここは?」
「これは現在進行形だからまずはこっちの動詞にingを付けないといけなくて……」
「あ、そっか。それでbe動詞を主語に合わせるのか。なるほど。ありがとう」
緊張もせずに勉強が進む。
二時間も経つ頃にはかなり進んでいた。
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