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感謝祭1
しおりを挟む感謝祭当日ー。
昨日より陛下と彼女との関係性に亀裂が入り、昨晩は皇室内の左隅にある自分のベットで彼女は眠りについた。
陛下は、何か言いたげに彼女の方に何度か視線を向けるが、彼女の何事もなかったかのようなクールな様子に、言葉をつぐみ、寝床についた。
夕方頃ー。
感謝祭が始まる前に、陛下の使用人が皇室にいる彼女の元へと声をかけに行くが、彼女は感謝祭への参加を拒否した。
その旨を聞いた陛下は、直ぐさま皇室へと向かい、勢いよく皇室の扉を開ける。
「おい。感謝祭に参加しないとは、どういう了見だ?」
彼女は自分のベットに横たわりながら、陛下の喧騒に目を向ける。
「私は参加しないわ。人が集まる場所は、めんどくさいもの。別に奴隷が1人いなくたって支障はないでしょう?」
陛下の剣幕を他所に、彼女はシラっと言葉を返す。
「お前に拒否権なんかない。俺の奴隷である内は、奴隷の義務を少しでも果たせ。」
そう強い言葉を残し、陛下はクルッと反転し皇室を後にする。
マントを風で靡かせながら立ち去る姿は、声の後追いをかけれない様子であった。
彼女は仕方なさそうに身体を起こし、魔法を使い、青色の煌びやかなドレスを着用し、メイクアップと髪の毛のセットアップを行ってから、宮殿内にある巨大なパーティー会場へと足を運んだ。
会場には、他国の上級兵士たちや、自国の兵士たちが円形のテーブルを囲むようにして座っていた。
感謝祭が始まる前だけあって、会場はガヤガヤしている。
国王たちの王座は前にあるステージ上に、平行に9脚並べられているが、まだ誰も座っておらず、空席であった。
巨大な会場内に入ると、奴隷たちが座っているであろうテーブルを見渡す。
会場内に女性は奴隷たちのみであるため、直ぐに彼女はその場を見つけた。
奴隷たちがいるテーブルは、何故だかステージすぐそばの左側。
国王たちがよく見える場所取りであった。
奴隷の階級が1番下なのに対し、会場の最前の位置に奴隷たちの場を設けてあることを不思議に思いながらも、彼女は兵士たちが座るテーブルの間を堂々と歩き抜けていく。
彼女の華麗で凛々しく美しい姿に、会場にいる兵士たちの視線が釘付けとなる。
それと同時に、自国の兵士からは「奴隷のくせにおれらよりも後から到着しやがって」と聞こえるように、ヤジを投げる者もいた。
彼女が奴隷たちの座るテーブルにたどり着く頃に、会場内の照明が落ちて、ステージにスポットライトがあたり、国王たちの登場と共に、入場曲であるトランペットの音が鳴り響いた。
視線は一気にステージに集まり、会場からは拍手喝采により国王たちを向かい入れる。
彼女は薄暗い中も、手探りで空いている椅子に手をかけて座ろうとするも、他9人の奴隷たちの刺すような鋭い視線を感じ奴隷たちに目をやる。
ステージでは、ウィリアム国の国王以外の国王たちが真ん中の王座を残して、順々と王座へと座っていく。
奴隷たちの座るテーブルでは、ステージではなく、彼女に視線が集まり険悪モードに包まれる。
奴隷たちの年齢層はまちまちで、みな暗め色のセミフォーマルなドレスを着ていた。
奴隷たちは綺麗な顔立ちの人が多いが、彼女の容姿端麗な姿の前では、みなの存在が霞むかのようであった。
彼女は、奴隷たちからの視線をスルーし、ステージに目を向ける。
トランペットの音が大きくなるやいなや、瞬間移動によりステージ中央の王座の前にパディオス陛下は現れて、会場の拍手はより一層大きくなる。
入場曲が鳴り止むと会場全体が明るくなり、会場は静けさに包まれる。
陛下はゆっくりと王座に座ると、1番最初に彼女の方へと視線を送る。
バッチリと目が合う彼女に対し、他の奴隷たちは、陛下が自分たちを見たと小さな声で騒ぎ立てる。
陛下が王座に座ると、他国の国王8名が王座から立ち上がり、一人一人が陛下に向かい感謝の言葉を述べてゆく。
陛下は、片手で頬杖をつきながらも、相槌をうちながら、つまらなそうに黙って聞いている。
しばらくして、お礼の品の贈呈式に移り、これまた国王一人一人が長い説明を付け加えながらも、領土であったり、ワープ空間であったり、豪華船であったりを魔法でイメージ映像を会場の上空へと出しながら、陛下へと熱心に説明をしていった。
そして、贈呈式が終わったところで、陛下より感謝の言葉を述べ、奴隷より催し物がある旨を皆に伝えた。
ガヤガヤと会場が賑わう中で、奴隷席では張り詰めた空気が流れていた。
「わっ、私達は、9人で楽器演奏と舞踊を併せて披露するから、その後あなたは1人で発表しなさいよね。」
1番歳上であろう奴隷が、彼女に向けてそう言い放ち、奴隷9人が立ち上がると、彼女を見下すかの様にクスクスと笑みを浮かべる。
「どうせ、あなたには魔法があるんでしょ。魔法以外の何も才能がないくせに。」
そう耳元で言い残すと、他の奴隷たちは、ステージの前の空いた空間にて移動する。
奴隷1人が、国王たちにこの場を設けてくれたことへの感謝の言葉をマイクを使って告げたのち、「私たち9人での催し物の後は、席に残っている奴隷1人より、アカペラでの歌披露がございますので」と言葉を残して、意地悪そうな表情をしながらニヤリと笑う。
それに対して、奴隷席に1人残されている彼女も、平然としながらニッコリと微笑み返した。
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